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人の生き様は・・・第5話

食堂内に異様な静けさが舞い降りる。

「迷惑とかじゃなくて、なんて言えばいいのか・・・」ガゼインが言葉に詰まってテーブルを拭く手が空で空回りしている。

「あんたらが、なんか話しとったのは知ってるけど、俺の身なりでなんか身になんの?てか、アンタも俺になんか気を移して変な話題持ち上げて、そいつ等の話聞く気ねえじゃん。俺じゃないよね、話振る相手。もし違うなら、200文面内で説明してくれ。俺の時間奪ってるねんから。」

その場に居合わせた一同ぽかーんとしており、10秒程経った頃「じゃ、そういう事で。」まだぽかーんとしている宿屋内一同を後に宿屋を後にするひびきであった。

ひびきが宿屋を出て更に10秒位経った頃、ガゼイン含めお互いに顔を見合わせ「なんだアイツ、変わってんな。」みんな一斉に頷きちょっとした賑やかさが戻ってきた。

そんな中神官僧侶の女の子が、宿の外に走り出していった。「今の人、仲間になってくれないか聞いてくる!」

「あんな変な奴止めとけ。俺等の沽券にかかわるわ。」リーダー風の戦士が諌めたが、すでに外に行った後だった。

石畳の街道を歩いて街の外に向かって歩いているひびきの後方から走る足音が近づいてくる。

さっきの神官僧侶だ。

「異剣士さーん!」

おそらくひびきを呼んでいるものであると思われるが、当の本人は何もないように淡々と歩いている。息を切らせながら走ってきた神官僧侶はひびきの前に回り込み

「何で呼んでるのに止まってくれないの?!」

尚も歩きながらであるが、回り込んだ神官僧侶に向かって

「俺に言ってんの?」

回り込んだ神官僧侶、名前を『アル』と言う。

「貴方以外に誰がいるのよ?」

それを聞き立ち止まるひびきは怪訝そうな表情をしたかと思えば、今日最大級のため息をし、

「俺の周囲にはたくさん人がいる。名前も呼ばれた訳やないのに、なんで俺が反応せなあかんの?周りよく見てるか?」

それを聞き顔を少し赤らめてから

「異剣士って言ったらどう考えても貴方しかいないでしょ!何言ってんの?」

その言葉に呆れ顔で

「あのさ、そもそも今周りにいる奴らが異剣士と言う単語しっとるか?お前の少ない情報を少ない脳みそで状況判断してみろよ。俺もそうやけど、誰の事言うてるんて言うのが、周囲の正しい反応やで。その証明に誰もお前の呼びかけに反応してないやろが!」

そう言われて、初めて周囲の道行く人々を見渡し、誰もこちらを見ているどころか、普通に行き交いしている。

それでも納得いかないのか、更に顔を真っ赤にし、「それでも私の前に歩いている人に対して声をかけ、異剣士としての格好しているのは貴方だけなのだから、貴方が反応しないのはおかしいと思います!!!」

走ってきた直後に声を荒げて訴えかけているお陰で肩で息しながら頬を膨らませひびきに食って掛かるアル。

それを見て心底軽蔑した眼差しで「お前さあ、それなんかの正しい表現方法か何かか?少しだけ答えをくれてやる。宿屋での会話を思い起こせ。俺が宿屋のオヤジと話した時の事覚えてるか?」そう言われうんと頷くアル。

「その時オヤジは俺に『異剣士か』と聞いてたと思うけど、その時俺はなんと答えてた?」

そこまで言われてハッとなるアル。

急に顔をふせモジモジしだす始末。

「答え合わせ出来たか?誰に何を言われても俺は『術師』だから、異剣士とか言うワードに反応する事もないし、そもそもお前等ですら異剣士と言うワードあまり知らないのに一般市民が知ってるとおもってんのか?自らの無知を恥じろ!」

そう言うと踵を返し、また歩き出すひびき。

2、3歩足を進めた所で立ち止まり、「まあ、ついでだ。さっきオヤジが言ってたな。身の丈に合った冒険しろって。何故鍛えて挑戦しようとしないのか、不思議でならん。身の丈合ってないのに挑戦しようとするのは『勇気』ではなく『無謀』。後、一つしかない命の安売りだ。そんなん関わりたくもない。『命』の使い道、しっかりと見極めないと『無駄』に終るぞ。」

そして歩き出すが、その背に向かってアルが叫ぶ。「時間がないの!私達には。早くランクを上げて、収入増やさないと『※※さんのお孫さん』の命が保たないの!ちゃんとした施設で病気を診てもらえないの!私の力では病気を治す事が出来ないの!」

その場に膝から崩れ落ち両手を地面について懇願するような仕草をとるアル。

その様を見て近寄るひびきはアルの肩に手を掛ける。

パッと見上げるアルに

「その話、俺になんか関係あるか?俺の人生に何かしら利益あるか?俺の修行と時間になんの徳がある?教えてくれ!」

それを聞いたアルはこの人生で最大の怒りの表情をし、肩を置かれたひびきの腕を握りしめ立ち上がり、そのまま胸ぐらを掴んだ。

「貴方には『人助け』の精神はないの!!困っている人に差し伸べる手はないの?それでも人間???」

胸ぐらをつかまれたひびきはその手を無造作に払い除ける。そして心底不思議そうに自身の顎に手を掛け首を傾げそのままこう尋ねた。

「いつから人助けは『精神道徳』になったんだ?それは他人に強要する事なんか?自身が危険と解っている事、助力が必要な事も解っていながら、先に自身の『対価』も示さずに、テメエらだけが得をする解決方法なんて、ムシがよすぎやねんけど。例えばその危険な事で俺が今後一切完治不能な何かしらの事に巻き込まれるかもしれない事もあるかもであって、それらのリスクの話もなくて、一方的に自分の『お涙頂戴』な話と感情だけぶつけられて、どうせぇっちゅうねん。」

何か言いたげではあったが、唇を噛み締め俯くしか出来ないアル。

「お前を含めてあの場におったのは4人やな確か。その4人が俺の人生に何かしら利益をもたらせるなら、聞かない話ではないけど、どう考えても無理やしな。ちなみに肉体関係とかには全く興味ないから悪しからず。」

二人で話してる所にチームの三人が駆け寄ってきた。

まずは戦士風の男、唇を噛み締め俯いてるアルを見、すぐさまひびきに駆け寄る。

「オイ!ウチの優等生を泣かせたのはお前か!?」

老魔法使いと弓士の女もアルに駆け寄る。

その様を見てすこぶる面倒くさそうな表情を浮かべまた、ため息を漏らすひびき。

「勝手に喚いてるのはそこのお子ちゃま。俺は俺の倫理に基づいて話をしただけだ。俺は自分の時間で精一杯だから、悪いけどそのお子ちゃまを連れ帰ってくれ!」

心底冷めた口調で男に話し、ローブを翻そうとした時、不意に肩を掴む戦士風の男。

「ウチの優等生が訳もなくこんなになる事は断じて無い!お前が何かしたんだろが!!!」

肩を掴む手に一層力が入っているのか、ローブの肩の部分がシワになっているのが分かる。

が、それと同時にひびきの表情が能面のように表情を無くしたかと思えば、後ろに束ねてた長髪の先端の結びが解け、髪が風も吹いていないのになびきはじめている。

「ええ加減にせえよ!これ以上『儂』の時間を台無しにするんやったら・・・まとめて『死なす』ぞ!」

言葉の終わりと同時に一般人であれば完全に卒倒する魔力の奔流がひびきから流れ出てきた。

しかも唐突に、何の前触れも無く。

しかし、この魔力の奔流を浴びているのはひびきの目前の冒険者四人だけであり、道行く人々には何ら影響を及ぼしてないのか普通に街道を行き交いしている。

老魔法使いだけは、その所業に気づき、杖を両手で支えながら立っているのがやっとの状態で、両膝をガクガクと激しく震わせていた。

そして目穴、鼻穴、耳穴、そして口から血を流し始め、その場で倒れた。

「爺さん!!!」弓士と戦士が老魔法使いに駆け寄り二人掛かりで抱き起こす。

それを見た神官僧侶のアルも震え出し、その場で失禁、頭を抑えしゃがみ込む。

「ちょっと感情を出した鼻くそ程度の魔力で昏倒寸前って・・・お前等戦いには向いてねえんじゃね?宿屋のオヤジとか、俺に頼みに来る前にもうちっと自分の身長見直した方がいいんじゃね?」それだけ言うと、今度こそ踵を返し街の外壁に向かって歩き始め、冒険者の元から去っていった。

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