人の生き様は・・・第4話
一階に降りていく間にも食堂側から聞こえる賑わいに耳を傾けながら自身に用意されている席に向かい、羽織って居るローブを外し、席に掛け着席する。
周囲は複数人での会食であったり、ガタイのいい男の骨付き肉を頬張る風景の中、ひびきの所に運ばれてきた食事は手のひらサイズのパン2切れと300cc位のミルクのみ。
運ばれてきた食事を前に眼前に両手を合わせて「いただきます」を唱えパンを口に運ぶ。
食事を運んできた見た目10代後半であり、主人と女将の娘であろう子が、首を傾げひびきにたずねる。「お兄さんがここで食事を取る時に毎回している『祈り!?』みたいなのって、何か意味があるの?」自身のほっぺに指を当て心底不思議がっている様子であるが、対するひびきは構わず黙々と食事をしている。
まるで何も聞こえてないと言わんばかりに、一人の食事を粛々と進めている。
それからも何かしら話し掛けているような身ぶり手ぶりとあったものの、女将に呼ばれカウンター方面へと離れていった。
カウンターでは、4人組みの冒険者グループが食事をとっており、その向かいには主人がその対応にせまられている。
前衛である戦士風な男に中後衛であろう弓士な女、
見るからに年老いた男は魔法使いであろう宝石が埋め込まれた杖を抱えており、両手をくみあわせたままで神官帽をかぶった僧侶風の娘とちょっと前衛職が足らない感じの4人組。
戦士風な男が主人に頭を下げて何やら頼み事をしているようだ。
「ガゼインさん、頼むよ!ギルドの連中は当てにならねえんだよ!俺たちの実力じゃ、奥の秘宝部屋のボスは倒せねえし、ほかの連中に先を越されるわけにいかねえんだ!チームのランクUPにも関わっているし、これを逃したくねえんだよ!頼む!力を貸してくれ!!」主人の名前はガゼインと言うらしい。
確かにこの冒険者グループの4人に比べてガゼインの方が体格的にも雰囲気等もランクが上に見える。
手に持った食事の皿を拭きながら冒険者グループに向き直り「前にも言っただろうが。俺は引退してるんだって。今の俺はこの宿屋の主人で女房子供を養いながら暮らしてるんだ。今更命がけの事なんかしてらんねえっての。他当たれ!」
戦士風の男はうなだれるが、弓士の女がテーブルに乗り出して「ガゼインさんの今はわかっているつもりです。でもアタシたちも心当たりは全て当たったんだ。あのボス部屋のゴーレムを倒すのに前衛が足りないし、ウチの魔法使いの魔法を決めるのに抑え込む為の時間が足りないの!今回だけだから、力を、アタシ達を助けて下さい!」
弓士はそのまま頭をテーブルにぶつけ、頼み込んでいる。
老魔法使い、神官僧侶も両手を合わせお願いと言わんばかりに頭を下げている。
「無理なもんは無理だ!今の4人に見合った冒険をするこったな。俺には俺の生活があり、ここが俺の戦場だ。他人を頼ってランクUPして、それが実力か?冒険者舐めんのも大概にしろ!」
ガゼインの至極真っ当な発言に返す言葉もなく項垂れる4人組の冒険者。
周りで食事をしていて、身に覚えのある他の冒険者や、客もガゼインの言葉に思い当たるのか、一気に項垂れて食の手が止まっている。
そんな中「ごちそうさまでした。」隅で食事していた方向からそのような声が聞こえ、皆がそちらへと目を向ける。
椅子に掛けていたローブを羽織り、カウンターに近づく男、ひびきがカウンターの奥の誰かに声をかけるような仕草で「女将さん、また夜に帰るから、食事は部屋の中に置いといて下さい。」
その声が聞こえ女将が奥から顔を出す。
「気をつけて行っといで。」
その後約10分経過する位の頃、出掛ける用意の出来たひびきが階段から降りてきた。
先程の4人はまだカウンター前で椅子に腰掛けてるものの項垂れており、他の客は活気もなくボソボソと食事をしている。空いてるテーブルを拭いているガゼインがひびきに気づき目を見開いていた。「あんた、異剣士か!?」
異剣士とは、両刃の長剣ではなくて、片刃の曲剣つまり、刀を扱う戦士職を指す。
ひびきのローブの左側の腰付近に長さの違う刀が2本添えられており、その鞘の色が黒鞘に金と銀の縁取り枠が添えられている一級品の輝きがにじみ出ていた。
異剣士と言う単語に食堂の全員がひびきを見る。
4人組の弓士がガゼインに振り返り、「ガゼインさん、異剣士ってあの幻の?」他の3人も興味津々とばかりにガゼインに目を向ける。
「幻ではねえけど、中々いない職ではあるな。昔冒険者してた時にパーティメンバーの一人が異剣士だったから、知ってるだけで、正確には『サムライ』ていうらしい。サムライを極めた者はミスリルすら紙切れのように切断してしまうとかなんとかで、前のパーティメンバーもミスリルではないが、岩とか鋼くらいなら切り捨ててたな。」食堂の客全員が好奇な眼差しでガゼインの話に聞き入っている。
その後に話題に上がった装備を着けているひびきに目を向け始めている。
その視線に気づき、周りを見渡した後ガゼインに「宿帳にも書いてるが、俺は術師だ。腰の獲物だけで勝手に判断されても困る。」
その言葉に「いや、刀なんて異剣士以外使わんだろーが!何でお前がそれ差してるんだよ!それどう見ても一流品だろが!術師が刀差してどんな言い分があるんか、言ってみろ!」食堂の他の客もそーだ!そーだ!と頷いており、4人の冒険者もひびきを見て次の言葉を待っている。
だが、そんな期待も次に発せられたひびきの言葉は、その場にいる全員を落胆、または失望させるものであった。
「なんか知らんけど、術師が刀差してなんか悪いんか?格好ええからと、便利やから差してるだけやし、誰ぞに迷惑かけとんの?」




