人の生き様は万人万色、世の理なんてクソくらえ!
はじめまして
とある宿屋の一室から、この物語は始まる。
料亭兼宿屋としてこの界隈では珍しくもない普通の宿屋「木漏れ日亭」。
木造物件の建屋の中からけたたましい足音が、宿屋2階のとある部屋へと向かっている。
足音の主は宿屋経営のいわゆる「女将さん」。
204という部屋号が書かれ部屋の前で立ち止まりドアノブに手を掛けようしたその手はノブに届く事なく止まる。
ノブの隣には一枚の貼り紙があり、「瞑想中につき、用のある方はノックを3回した後ドアを開ける事。それ以外は・・・健康の保証はしない」
なんとも物騒な貼り紙であるが、この手の貼り紙は日常茶飯時なのか女将はため息をつき、しぶしぶノックを3回しノブに手をかけ戸を開けた。
部屋は質素な造りになっており、部屋は一室で扉手前から壁伝いに鏡台と洗顔用タライ、反対側には物干し台のような衣服掛け、その奥には木製ベッドに小物などを収納出来る鉄製の箱が置いてあり、机もなければ、椅子もない。
部屋に入った女将が見渡すが、貼り紙を貼った張本人であるべき人体が見当たらず、ベッドに膨らみが確認出来るのみ。
とてもじゃないが「瞑想」しているようには見えず、世間一般でいう「寝坊」の形に見えてしまい、深くため息が漏れるのもここ数日のありきたりになりつつあるところである。
ベッドのシーツに手を掛けようと手を伸ばすのだが、ここである異変に気づく事になる。
ベッドの膨らみ方が、人一人分の膨らみではないのだ。
このお客様がこの部屋に泊まって確か今日で四日目、今までは気にしていなかったし、シーツをめくれば、お客様が寝ているだけなのだが、今日のは明らかにシーツの盛り上がりが違うのだ。
二人分以上の厚みがあるのだ。女将は少し考えに頭を巡らせ一つの勝手な仮定に辿りつき、ちょっとのため息と下卑た含み笑いを浮かべ、シーツに手を伸ばす事を止め部屋を後にした。
女将が戸を閉め階段を降りた頃、今しがた訪ねていた部屋のシーツの膨らみがみるみる平たくなっていき、最終的にベッドメイクしたてのようなシーツの張りになった。
よく見るとシーツの上には横長楕円形の影が浮かんでおり、その空間1メートル上に座禅の型をとった若い男がいた。
「中々気づかんもんだねえ。ま、それが普通の人だろうが・・・もうちょっと」
何かを一人で呟くも頭を左右に振り
「ま、これが平和っつうことの証拠なんだろな。」
漆黒の黒髪でポニーテールのように後ろで束ねたその優男風の男は目を開き扉へと目を向けた。
その眼は血のような赤眼であり、黒眼の部分が赤という変わった眼差しを持つ男、名前は・・・次回に続く。




