人の生き様は・・・第11話
先の騒動からほんの数分後、ひびきは草原を歩いていた。そのひびきの隣には先程のギルドではいなかった人物が寄り添っている。
「ひびきって、利にかなっているような発言する割には、直ぐ実力行使みたいな事したり、ほんと神々も呆れる『癇癪』もちよね。疲れないの毎回あんなんで?」
隣の人物は綺麗名甘栗色の髪をストレートにさらし、赤とオレンジと白を取り入れたドレスを身に纏いその佇まいは貴婦人や王族のそれの雰囲気を出している女性であった。袖をひらひらさせながらひびきの横を同じ歩幅で歩いている。容姿も端麗まさしく美男美女のカップルにさえみえる。
「なんかムカつくんだよ。これでも抑えてるつもりなんやけどね。」
両手を頭の後ろに組みながらちょっとは『やりすぎたかも』の表情を出しているひびき。
「ホントかしら?」
ひびきを覗き込むようにして伺う女性。
「でも、最後のあの情報だけはいただけんな。まだしょーもない事考えてからに。」
覗き込む女性を押しのけてまた少しだけ不機嫌な表情になるひびき。
「人間ってどこまでいってもしょーもない利権争いから抜けられないのよね。」
見えない空間に『あっち行け』みたいな仕草で片手を振りながらひびきに言う女性。
またひびきの正面に周りこんで
「で、どーするの?」
ちょっと意地悪な笑みを浮かべて言う女性。
対するひびきは面倒そうな顔で
「…日々の平穏の為や。国の頭すげ替えるか。」
またも物騒な事を仕事の一部のように発するひびき。
「でも、貴方から動かなくてもいいんじゃないかしら?それこそ貴方の『仕事』じゃないんだし。貴方達人間のことわざだっけ?『来るもの拒まず』でいいんじゃない?」
頭を抱えるひびき。
「阿呆か、拒みたいのに、『来るもの拒まず』じゃ意味ないだろが!」
あれっ?といったポーズで指を頬に当て
「人間の言葉わかりませーん」
それを聞いて女性の頭にチョップを見舞うひびき。
「どっかで聞いた事あるよう事いってんじゃねー。それだったら、ゴキブリホイホイじゃないけど、遺跡に呼び寄せて一網打尽でいいんじゃね?」
楽しいそうに話すひびきに対して
「ゴキブリホイホイ??またひびきから知らない単語がでてきたわ。貴方と一緒にいて退屈はしないけど、貴方だけの『知識』の言葉がたまに出るから、『アタシ達』たまに疎外感感じるのよね。」
ちょっと頬を膨らませひびきに向き直る女性。
「あー、ゴキブリホイホイは知らない方が身のためやで。言うた俺も深く考えたら気持ち悪かったわ。どうしても知りたいなら教えるけど、聞かなきゃ良かったって思うで。」
膨らませた頬も元の端整な顔立ちになり
「ふーん。ひびきが『気持ち悪い』て言う程なら聞かないようにするわ。」
片目ウインクで女性に
「悪いな。またその内俺の持ってる記憶覗かせるから機嫌直して。」
ひびきの腕に絡ませてくる女性、
「この世界の事はアタシ達が教えれるし、ひびきの力があったら調べられるけど、ひびきの世界の事はアタシ達には皆目見当もつかないし、ひびきの目的もまだ知らないんだから、見届けるまでずっと一緒に居るから、『飽きさせ』ないでね、ひびき」
組まれた腕を払うでもなく
「はいはい、わかりましたよ麗しの『女王』様」
ひびきの絡まれた腕似力が入る、
「いてててて!」
そのままぐいっと引き寄せられ、
「女王は嫌い!ひびきがアタシの為に付けてくれた名前で呼んで!」
「ああ、悪かった『まどか』」
腕に込められた力が緩みご機嫌な女性まどか、鼻歌交じりにご機嫌となり、ヤレヤレといった表情のそれでも少しは明るい表情のひびきが草原を歩いていた。
…あのひびきにも明るい表情が出来るとは驚きであるが、ひびき自身の壊れた感性のなかにも心から許せている相手に対してはその辺の普通の人間のような表情をする。言い換えればひびきは人間社会に愛想を尽かしている。それもおいおい語っていこう…
さて、ひびきが向う先にはギルドで話が出ていた廃墟が見えている。破壊される前は立派な門があったのだろうが、鉄の網目扉は損壊し所々さびている。
建物も城というものではないが、ちょっとした屋敷に見えなくも無い大柄な建物が門の奥にはあり、門の入口の木の扉は閉まっているが、門と建物の間、俗にう庭付近が何やら騒々しい。
見ると枯れ木を集め焚火した跡があり、周囲には生物の骨やらが散乱していて、4、5名の山賊風でもあり、騎士崩れ、ともかく荒くれがいる。食事をした後なのか、ある者は木の枝で歯の隙間を突き、ある者は片手枕でごろ寝、三人は何かカードをしているのか、近づくこちらには全く気づいていない様子である。まあ、まだ200m位離れてて足音すら聞こえない距離だから仕方ないのだが、ひびきの目が良すぎて現地の状況が見えているのもあり、足をとめる程でもなく廃墟に向かって歩いた。
「一日離れただけでこれか?今日は生ゴミの日だったっけ?」
尚も廃墟に向かって歩いているひびきの腕をまどかが、引っ張った。
「どうした?」
彼女がひびきを力尽くでとめたのはこれが初めてであり、ひびきも少し警戒している。そしてそのまどかの表情は『スン』と冷酷な眼差しで冷めていた…というか、遥か昔に一度だけ見た事のあるまどか本気の怒りの表現であったのを思い出した。
「アレ…」
そしてまどかがある一方向を指さした。そこはこの荒くれ共がたむろっていて、食後の後の骨とかの残骸があった。
「アレは恐らく一昨日手当てした一角ウサギの親子…」
ひびきはそれを聞いて全てを察した。
二日前、廃墟で調査中のひびきが建物の外庭で2羽の怪我をしている小動物を見つけた事から始まる。
そのウサギの近くには三匹のゴブリンがおり、恐らく食料調達に来たのであろうことから、すでに腰に一羽のウサギをぶら下げており、残りを仕留めて持ち帰ろうとしているという所で、たまたまひびきが出くわしたという事だった。二匹の怪我をしたウサギは親ウサギが怪我の酷い子供ウサギをくわえ込み、全力でひびきの方へと駆け寄ってきた。この時のひびきは特に何も感じておらず、自分に危害を加えるなら相手しようという位の気持ちであったが、たまたま外に出ていたまどかが、そのウサギの行動を見て、向かって来るゴブリンとひびきの間に入ったのである。そしてゴブリンに向かって腕を振ったのである。『邪魔』と言わんばかりに。直後、三匹のゴブリンはまともな断末魔をあげる暇も無く一瞬で消し炭になってしまった。
「へー、珍しい事もあるんやな。まどかが力を使うなんて。」
まどかは、ひびきの後ろに隠れた二羽のウサギを見て、
「どんな生き物も母親は強い。アンタよく頑張ったわね。」
その場にしゃがみ込み掌を見せて、おいでおいでをした。命の恩人と分かっているのか、子ウサギを咥えたまま、まどかに近づき掌の匂いを嗅いだ後、力尽きて掌に寄り添うようにもたれた。
「もう大丈夫よ、アタシが居るからね。」
まどかの掌から炎が立ち込め、二羽のウサギを包みこんだ。親ウサギはゴブリンと戦って角が欠けていたが、それも修復されていき、傷で血が噴き出していた跡は綺麗にふさがっていき、太ももと顔に傷があった子ウサギも全ての傷がふさがり生気が戻っていた。
「私利私欲で傲慢な生命の奪いあいには興味がないわ。でもね、親が身を持って子を守るという次世代に対する尊い行為は助ける価値がある。私には出来なかったけどね。」
しんみり語るまどかの背中を見て、
「その子等の親になってやれよ。せっかく奇跡の炎で助けたんやし、お前にしかなつかんのとちゃう?」
掌を振るまどか
「最初は、この子達は『ひびき』の性根の部分分かってるんだね、と思ってきた事に少し嬉しかったんだ。でも傷を見てこの子達を見たら、親子って分かって、それからは自分でもよく分からないよ。」
ひびきは立ち上がり、
「だいぶ前に言うたと思うけど、覚えとらんかな?『感情で動く事に躊躇いは要らん!それが心の叫びやから、まずは動いたらいいねん』動かん後悔より動こうって。」
しゃがみ込んだままウサギをなでてまどかは
「私達にそういったのは、ひびき、貴方が初めてで、人間のクセにとか最初思ってたけど、今日初めて分かった気がする。貴方も私達も変わりが無いっていった意味がね。」
まどかが撫でていたウサギが目を覚まし、鼻と頬でまどかの掌にすり寄っている。
「アンタ達危ないから、ウチにおいで!いいでしょひびき」
振り返りひびきは言う。
「俺に決める権限あらへんで。まどかがいいなら、それでいい。俺らは対等やねんから、俺に気兼ねするなんて、らしくないでほんま。」
それを聞いたまどかは両手で二羽のウサギを抱きかかえ、両肩にそれぞれを乗せた。
「まどかが気に入ったんやったら、その内言葉でも教えて行こうか?」
手を握ってくるまどか
「え、本当?いいの?ひびきが教えてくれるの?」
興奮しながら矢継ぎ早に聞かれた。
「さすがに普通のウサギに言葉教えた事ないからわからんけど、従魔契約とは別系統で契約無しで試してみるよ。多分出来ると思うし。ただ、念話位やけどかまへんやろ?」
握った手を上下にブンブンと振るまどか。よほど嬉しかったようだ。
「良かったなあ、アンタ達。ウチらと一緒やったら長生きできるし、楽しいで!ひびき、名前つけて!」
それ対してひびきは首を横に振る。
「俺の小動物に対する記憶読ませるから、まどかが自分で付けて!」
意を決した表情のまどかが頷きひびきの額に額にを合わせる。ひびきの記憶の中にある愛玩動物の容姿や種類を読取りある名前に決めた。
「お母さんのほうは『ララ』子供の方は『ピッピ』にする。ララ、ピッピ、よろしくやで。」
それぞれに名前を呼び鼻筋を撫でていると、二羽のウサギの毛並みが高級な毛並みに変わり、毛色も純白な色へと変化した。そして、一角ウサギの象徴でもある額の角が無くなり、代わりに太陽のような形の紋様になった。
「へぇー。これやったら頭からすり寄って来ても角刺さらんから痛ないなあ。良かったやん名前つけて。テイマーの感覚で言うと、まどか、めっちゃ気に入られてるで!」
嬉しそうな表情のまどかは角が無くなったあたりの額を撫でくりまわし、その日はずっと二羽を抱きしめてその日は寝ていた。
そんな仲の二羽のウサギをまどかが見間違うはずもなく、死骸と骨から匂う生体組織からは、以前まどかが奇跡の炎で癒したマナの残滓が残っていた。
「ねえ、ひびき。人間ってなんであんな愚かなの?私の記憶残視から見たあの子達の最期は、あのクソゴブリンの時と何ら変わりなかったわ。せめて後半日早くここに戻ってきてたら、私の記憶再生で蘇らせる事も出来た。なんで、あの子らは全く同じ結末迎えなきゃならないの?なんで?教えてよ!!」




