人の生き様は・・・第11話
悲痛な表情でひびきに詰め寄るまどか。ひびきには慰める言葉は見当たらなかった。
「前にも言ったが、これが人類とか言う種族や。まあこの世界では『人族』なんて言ってるけど、俺からしたら同じや。この世界にはことわざがあまり使われてなかったり、何かしらの擁護する言葉がないけど、俺のいた世界ではかなり人類贔屓なことわざが多々あって、その文言のお陰で平気で狂った事も正当化されることが多く、それが日常な世界やったし、その世界出身の俺としては、情けない限りや。でも、前の世界でもこの世界でも人間がすることの根本は何も変わってない、魂の部分で一緒や。今回は、俺が『空間再生』か、『時空跳躍』で魂の再生試みるから、まどかは好きなようにしたらええ。」
ひびきに絡めていた腕を離し、ひびきに向き直る。
「アタシがアイツらに手を下したら、魂源まで殺してしまうけど、いいの?」
ひびきは腕を組んで、
「ああ、俺は気にせえへんから。あ、そういえば、今日は『生ゴミの日』やなくて『燃えるゴミの日』やったわ。灰も残らんように燃やしてくれたら問題ないやろ。」
ひびきは笑顔でそう告げた。
「じゃあひびき、お願いね!」
ひびきに丁寧なお辞儀をして一人、廃墟に向かって歩きだすまどかであった。
ひびきは五人組みからやく20m位の位置まで近づき、両手を廃墟に向けて瞳に力を込め始めた。
ひびきは普段は人目のある所では黒眼であり、普通のの人間の男性に見えるが、魔力を込める…というか、ひびきの『普通』は深紅の赤眼であり、今まさに赤眼で廃墟を見据えていた。
荒くれの五人のうち、小枝で歯をつついていた男が、廃墟入口に向かってくるまどかに気づき、口笛を吹いた。
「ひゅー、えらいべっぴんさんが来るじゃねえか!道にでも迷ったのかなあ」
実に下卑た声で周りの四人に聞こえるように語っている。下卑た声に誘われるように他の四人も声のする方を向き、歩いてくるまどかを凝視している。
扉を通過し、下卑た声の主の前まで来て自分の鼻をつまむまどか、
「空気が腐るからもう、喋らないでくれないかしら?」
そう言うと目の前で片手を振り『臭い臭い』と手振り身振りするまどか。その仕草を見た目の前の男は、まどかにつかみかかろうと、何か言葉を発しよとしたが、声が出る前に炎に包まれていた。
「ぎゃあああ!!」
一瞬の断末魔の後には人であったモノは既になく、ひびきの言った通りの消し炭になっていた。
その様を見ていた残り四人の荒くれは、一斉にまどかに飛び掛かろうとしたが、この四人も先程の男同様炎に包まれ、断末魔さえ発する事なく一瞬で消し炭になってしまった。
「学習すら出来ないなんて、愚かにも程があるわ。ま、私の本当の正体を知ったら、最初から歯向かっては来ないだろうけど、私の正体を知らないだけマシだと思ってもらわないとね。」
片手に光る二つのウィスプを持って入口に現れたひびき、
「なんとか魂は確保出来たぞ。後は受肉させないとなんだけど、構築出来そうか?」
まどかが男共のいた場所に散乱している物質を掻き集め、更に分類してから、残った物質に炎を灯した。その炎の中から、生前の姿そのままの二羽のウサギが構築され、やがて地面にそっと置かれた。
「コイツ達の行動を読み取った際のビジョンが役にたったわ。本来なら、私がこう言う事しないからなんだけど、今回は私も少し気持ちが入ってるみたいだからね、その部分だけ良かったと思う事にする。後はひびき次第だけど、魂の方はどうだった?」
少し難し表情になるひびき、
「この子等を構成してたであろう『魂魄』は集める事は出来たと思うが、思ったよりこの子らの精神的な傷が酷いみたいや。まあ、三日の内に同じ目に二回も合うって中々無いからな。もしかしたら人の姿に怯える可能性もあるが、どうする?」
「そうなったら、さびしいけど、仕方ない事と割り切るよ。とにかくあのような死に方はもうさせたくないの。」
まどかの話を聞き鼻でため息するひびき、
「お前なあ、俺よりドライ過ぎひんか?お前が名前まで付けて親になってるのに、生き返らせたら終わりって、それは無いんじゃねえの?俺はあくまで『人』を見て怯えると言っただけで、お前は違うやろが!親らしい事ちゃんとしたれ!受け入れてケアしろや。」
ひびきの方へ向き直るまどかの目には涙が溜まっていた。
「また『何か』に気づかせてくれたね、ひびき。有難う、私頑張ってみるよ。」
その時初めてひびきの瞳が深紅になっているのを確認したまどか、
「ひ、ひびき!そこまでしてくれたの!?」
それに対してひびきは
「気にすんな。お前が俺の為にあるように、俺もお前達の為にあるんやから、当然や。それよりも、魂込めるから、周り見といてくれよな。」
二つの魂魄というモノを地面に横たわっているウサギのもとへ行き、その一つ一つをそれぞれのウサギの上に添える。その魂魄とよばれるモノはゆっくりとそれぞれのウサギの中に入っていき、全てがウサギに入った後、ウサギに呼吸音が確認されはじめた。その様子を見守るひびきとまどか。
「どうやら上手くいったようだな。ちゃんと『子供達』を迎えてやれよ。」
ひびきに促されしゃがんだまま両手を拡げるまどか、
「ごめんね、子供達。」
二羽のウサギはなんの迷いも無くまどかの元に駆け寄っていった。
「人間は嫌いになったかも知れへんけど、お前は違うし、その子等にも根本の部分で分かってるから、お前の元に行くんだよ。親として自信をもて。」
まどかの両眼には涙が溢れ、二羽のウサギを抱きしめて顔を擦りつけていた。
「うん!これから親としてちゃんと大事にする。ありがとね、ひびき!」
まどかの頬を伝う涙を二羽のウサギがペロペロ舐めながら、まどかの頬に頭を擦りつけていた。傍目から見ると、立派な親子の形がここにあった。




