表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
44/84

第四十四話 「八百八狸 対 千尾狐 参」

 八百八狸(やおやだぬき)千尾狐(せんびぎつね)の両軍が激しく入り乱れる戦場の中、八百八狸軍の幹部で竹伐(たけき)り兄弟の長兄、竹蔵(たけぞう)と、千尾狐軍の幹部である梶ノ葉(かじのは)が激しく睨み合っている。

 「ギャハハハ! やはり楽しいなぁ、戦は!」

 梶ノ葉が笑いながら、羽織(はお)っていた着物の上半身を脱ぎ出す。すると中からは、毛に(おお)われながらも、鍛え抜かれた肉体が(あら)わになる。

 「相変わらず頭が()いてるようで安心したぜ、露出狂(ろしゅつきょう)!」

 こちらもニヤニヤと笑う竹蔵が、両の刀を構える。

 「悪いが俺は、百年前とは桁違(けたちが)いに強ぇぞ!」

 梶ノ葉がそう言うと、腰を低く落として右の拳を振りかぶる。

 「あん時ゃ、お互いガキだった。だから決着は付かなかったが、今は違う。俺も段違いに強ぇぜ」

 竹蔵がそう言うと、両の刀を持ち梶ノ葉に目掛(めが)けて駆ける。梶ノ葉は構えたままニヤリと笑う。

 「“狐空拳(こくうけん)”!!」

 ブオン!! 梶ノ葉が拳を振ると、その衝撃波が竹蔵に向かう。すると、竹蔵が右手に握った刀を振り、衝撃波を相殺(そうさい)する。

 「おぉ、やるじゃねぇか! だがこれならどうだぁ!?」

 そう言うと梶ノ葉が、左右の拳を連打する。拳を振った数だけ衝撃波が発生し、竹蔵を襲う。しかし竹蔵は(ひる)まず、両の刀を振り衝撃波を次々に斬っていく。

 「ギャハハハ! 捌き切れるかぁ!?」

 梶ノ葉は何度も拳を連打する。

 「チッ! キリがねぇな」

 すると、竹蔵が両の刀を頭上に振り上げる。

 「“竹馬(たけうま)”!!」

 ブオォォン!! 竹蔵が両の刀を勢い良く振り下ろすと、二対の大きな斬撃が発生し、地面を(えぐ)りながら梶ノ葉に向かう。梶ノ葉が目を見開く。

 「ギャハハハァ!! おもしれぇ!!」

 すると、梶ノ葉が両の拳を勢い良く振りかぶる。竹蔵の二対の斬撃は、勢い良く梶ノ葉に向かって来る。

 「“狐空甲拳(こくうこうけん)”!!」

 梶ノ葉が向かって来る斬撃に拳を振る。すると、梶ノ葉の両拳に衝撃波が(まと)われる。ガガガァッ!!! 梶ノ葉が衝撃波を(まと)った両拳で斬撃を止める。

 「ギャハハハ! まともに喰らえば真っ二つだなぁ!」

 梶ノ葉が笑うと、竹蔵の斬撃が消える。

 「馬鹿力め。・・・ははは。くそ、面白くなって来ちまったぜ」

 竹蔵がニヤリと笑う。



 一方、八百八狸軍として戦うウンケイと、子狐のコン(きち)が身構える前に不気味に(たたず)むのは、千尾狐軍の幹部コックリである。

 「・・・不気味な野郎だぜ。こいつは幹部だよなぁ?」

 「・・・はいアニキ。この人は幹部のコックリだ」

 ウンケイが薙刀(なぎなた)を構える。そのウンケイの後ろに、コン吉が冷や汗をダラダラと流して身を隠す。

 「・・・君ハ裏切リ者ダネ。裏切リ者ハ許サナイヨ」

 コックリがコン吉をジッと見つめている。するとコックリが(おもむろ)にコン吉を指差す。コン吉が目を見開く。刹那(せつな)、ガキィィン!! コン吉の背後で鋭い金属音が鳴り響く。コン吉が恐る恐る振り向くと、そこには誰もおらず、ウンケイの薙刀があるだけ。コン吉が目を丸くしている。

 「厄介(やっかい)な能力だな。普通なら、何が何だか分からぬまま勝負が着いちまうんだろう」

 ウンケイがコックリを睨む。

 「・・・へ? アニキどうゆう事?」

 コン吉がウンケイの顔を見上げる。

 「今の攻撃は、あいつの(そば)にいる奴の仕業(しわざ)だ」

 ウンケイの言葉に、コン吉はコックリの方を向くが、その傍には誰もいない。

 「・・・? 誰もいないけど・・・?」

 コン吉が目をまん丸くしている。

 「あぁ見えねぇか。・・・多分あれは(れい)だな」

 ウンケイが顔色一つ変えず淡々と話す。コン吉の全身の毛が逆立ち、冷や汗が流れる。

 「・・・霊って、もしかして・・・」

 「ああ、おばけだ」

 コン吉が今にも気を失いそうになっている。

 「君ハ見エルノ?」

 コックリがウンケイを見つめる。

 「あぁ。俺は(もと)坊主(ぼうず)だからな。破戒僧(はかいそう)だが」

 ウンケイがニヤリと笑う。

 「ソウカ。ソレハ厄介ダネ」

 コックリが自分の傍を見る。ウンケイの目からは、コックリの傍に、鋭く長い爪と牙を持ち、目はきつく釣り上がった恐ろしい風態(ふうてい)の狐の幽霊が、こちらを睨んでいるのが見えている。

 「霊と戦うのは初めてだが、どうやら攻撃は当たるみてぇだし、勝機は充分だ」

 ウンケイが薙刀をコックリに向ける。コックリはウンケイをジッと見つめる。



 「・・・ハァハァ、くそったれ!」

 肩で息をしているしゃらくと、その視線の先で千尾狐軍の幹部イナリが、涼しい顔でニヤニヤと笑っている。そのイナリの周囲を、数枚の(ささ)の葉が浮遊(ふゆう)している。

 「さっきの威勢(いせい)はどうした!?」

 「ハァハァ・・・あいつに近づけねェ。どうする・・・」

 しゃらくは、イナリの周囲を浮遊する笹の葉を睨んでいる。

 「来ないならこっちから行くぜ?」

 そう言うとイナリが、左手の人差し指をクイっと動かす。すると、周囲を浮遊していた笹の葉が、一斉にしゃらくに向かって勢い良く飛んで来る。しゃらくはそれを(かわ)す。しかし笹の葉は止まらず、しゃらくを追いかけていく。

 (このままじゃア(らち)が明かねェだろ!)

 すると、しゃらくが(きびす)を返し、追って来る笹の葉の方を向き、顔の前で両手を交差して構える。笹の葉は物凄い勢いでしゃらくに向かって来る。

 「“獣爪十文字(じゅうもんじ)”!!」

 ガキィィィン!! しゃらくが鋭爪を振り、笹の葉を弾く。鋼鉄の刃と化している笹の葉は、そのまま地面に突き刺さる。するとしゃらくが、すかさず地面に刺さった笹の葉を、次々に地面に踏みつける。踏まれた笹の葉は、地面に深く食い込んでいる。

 「・・・何してやがる?」

 イナリが首を(かし)げている。すると、しゃらくがイナリの方を振り返り、勢い良く向かって来る。

 「馬鹿め。何度やっても・・・」

 イナリが笹の葉を動かそうと指を動かすが、地面に深く刺さった笹の葉は抜けずにいる。

 「小癪(こしゃく)な」

 イナリが懐に手を入れる。しゃらくは拳を振りかぶる。

 「“無爪猫拳(くろねこ)”ォ!!」

 「“笹盾(ささだて)”!!」

 イナリがしゃらくの拳に向かって笹の葉を三枚投げると、笹の葉が重なり盾のようになる。しゃらくは構わず拳を振る。ガァァン!!! しゃらくの拳を鋼鉄の笹の盾が受け止める。しかし、しゃらくの勢いは凄まじく、イナリの方も負けじと両手を出して笹の(たて)を操る。互いに押され負けないよう力を込める。

 「うあァァァァ!!!」

 「おぉぉぉぉ!!!」

 すると、バキバキバキィィ!!! 笹の盾が割れ、しゃらくの拳が突き破る。イナリが目を見開く。バキィィ!!! しゃらくの拳がイナリも顔面を殴り飛ばす。イナリは後方へ吹き飛んでいく。

 「どォだこの野郎ォ!!」

 しゃらくが唾を飛ばす。すると、吹き飛んだイナリがむくりと起き上がり、口から垂れる血を手で拭う。

 「・・・畜生。殴られたのは久しぶりだぜ」

 イナリがニヤリと笑う。

 「わはは! じゃア負けんのも久しぶりだなァ!」

 しゃらくがニヤリと笑って構える。



 一方の激しい戦場の中、静かに立っているのは、千尾狐軍の幹部、八尾(はちお)である。無口で静か気な表情ながら、その巨体から(あふ)れる圧迫感は凄まじいが、その後ろにある更に巨大で太い尻尾は、独特の存在感を放っている。

 「・・・」

 その涼しい顔をしている八尾の前には、竹伐り兄弟の次男、竹次(たけじ)が血だらけで倒れている。


 完

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ