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女神たちは今日もエリクサーをあおる。  作者: 猫大。
第3章

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第18話

春先でも道端にまだ雪が残っていた。

昼前、警備の詰め所へ向かう。

昨夜は夜番だったせいで、まだ瞼が重い。

朗らかな日差しが目に刺さった。

少し忌々しい。

いつも通りの夜番開けだった。

今日明日は休みだから何をしようかと考える。

あの子をデートに誘うのもありだなと、ニヤけながらドアノブを握った。  

詰め所の扉を開けたと同時に、喧しい警報音が建物中に響き渡った。

 

知らせの水晶が鳴っている。

初めて聞いた。

大規模な魔物の襲撃の前に知らせると説明で聞いたが、こんなに喧しいものだとは。


詰め所の皆は呆然と水晶を見ていた。

気付けば、俺はホルスの元に駆け出してた。

やばい。やばい。やばい。

まずは隊長だ。

ホルスに指示を仰がねば。

今は村長の家にいたはずだ。


乱暴に村長宅の扉を開けた。


「隊長!」

 

室内にいたホルスと村長が、揃ってこっちを振り向く。

二人とも湯呑みを手にしたまま、驚いた表情を浮かべていた。


「どうしたよ、アラン。魔物でも出たか」


俺は息を整えようとして、上手くいかない。


「……水晶が」


喉が張り付き、言葉が続かない。

見かねた村長の奥さんが差し出した茶を受け取り、一気に流し込んだ。


「水晶が、鳴っている」


知らせを聞いたホルスの顔色が変わった。


「なんだと」

 

次の瞬間には、村長の家を飛び出していた。

俺も慌てて後に続く。


「総員招集だ。

 警備のやつら全員と男衆を詰め所に集めろ。

 滞在している冒険者たちも呼べ。

 村中に知らせろ。

 アラン、急げ!」


俺は命令通り村中を駆け回った。

家々を回りながら叫んだ。

「総員招集だ!詰め所へ急げ!」

最初は何人かが怪訝そうな顔をした。

だが、知らせの水晶が鳴ったことを伝えると、その顔色が変わる。


鍬を放り出して駆け寄る男。

洗濯物を抱えたまま立ち尽くす女。

そんな母の足元にしがみつく子供。

村の空気が、目に見えて変わっていた。


村の宿を訪ねると幸運にも冒険者パーティが3組滞在しており、快く承諾してくれた。

頼もしい戦力だ。

それでも、知らせの水晶が鳴るほどの事態に足りるかはわからない。


詰め所の水晶の警報は止んでいた。

ホルスが説明する。

「知らせの水晶が作動した。

 警報は止めたが、誤報ではない。

 大規模な魔物の襲撃が迫っている」


 詰め所がざわついた。


「マジなのか?」「どこから来るんだ?」「大規模って何匹来るんだよ」


「静かにしろ」

 ホルスの低い声が響いた。

 

「不安なのはわかる。

 俺もそうだ。

 だが、今できる事をしよう。

 非戦闘員を中央倉庫に集めろ。

 シュンヤ、頼みがある。

 お前は早馬に乗ってリフターズに知らせてくれ」


そう言われたシュンヤは、村長の手紙を持ち馬房へと駆けて行った。

非戦闘員たちは隣の中央倉庫へ移動を始めていた。

もともと、避難所としての機能もある。


子供を抱く母親。

杖をつく老人。

不安そうな顔で空を見上げる者もいる。

だが、誰も騒ぎ立てることはなかった。

この村の人間は、皆ホルスを信頼していた。

中央倉庫に向かう波に、あの娘の姿を見つけた。

不安そうだった。

目が合う。

無理やり笑って手を振ると、彼女もぎこちなく笑って返してくれた。


「敵がいつ、どこから来るかわからん。

 見張をより密にする。

 リフターズからの援軍が来るまで凌ぐんだ」

 ホルスが残った者たちにそう言う。


冒険者たちの中から一人の男が笑った。


「おいおい、俺たち“狼の牙”がここにいるんだぜ。

 別に魔物全部倒しちまってもいいんだろ?」


隣のドワーフの男が鼻を鳴らした。

「大きく出たな。

 狼の。

 我ら“大槌”がいるのも忘れてもらっては困るわい」


 冒険者たちの輪の後ろから、魔道帽を被った少女が手を挙げる。

「あ、僕ら“魔笛”もいるよ」

 

「頼もしい限りだ。

 だが、油断だけはするな。

 知らせの水晶が鳴ったんだ」


村の男衆からも声が上がった。

「大丈夫だよ、ホルスさん。

 これだけいれば、なんとかなるべ」


本当にそうだとしたら、どれほど良かったことか。


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