第8話 ファルマス兄妹
「俺の名前はローグ・ファルマスだ!さっきは悪かったな!」
「悪かったなって軽い言葉で済むことじゃないんだよ! 私はメイ・ファルマスです。さっきはお兄ちゃんがごめんなさい」
「あはは……俺はソウシ・フジミネ。さっきのはここの食事代で大丈夫だよ」
メイを助けた結果、兄のローグに勘違いで襲われるという事態があったもののローグおすすめのお店で昼食を奢るということで収めることに。
「それにしてもソウシ強いな。冒険者か?」
「ああ、最近冒険者になったからまだアイアン級だけどな」
「ソウシの強さでアイアン級って。それはランク詐欺だろ」
「ブロンズ級のお兄ちゃんよりも圧倒的に強かったから実力的にはソウシさんはシルバー級とかゴールド級とかなのかな?」
「……あんまり圧倒的を強調しないでほしいかな……」
いまだ兄に対して辛辣なメイ。
「ソウシさんはどこから来たの?私たちはこの街の近くの村が出身なんだけど?」
「俺は……」
どのように返答するかを悩む蒼士。少し悩んで答える。
「日本っていう遠い遠い国から来たんだ」
「二ホン?知ってるお兄ちゃん?」
「いいや、俺も知らないな。でもどうしてそんな遠いところから?」
「目的は観光かな。この世界を観て回ること」
蒼士には異世界を観光したいという気持ちはあるため間違ってはいない。
「観光か……俺は興味がないな。 この街から離れるつもりがないから」
「それもいいな。地元専門の冒険者ってのもかっこいいじゃないか」
「俺としてはそんなことよりもソウシは力に興味がある」
「ちから?」
「ああ、あれだけの身のこなしをしていて回復魔法を持ってるだろう?俺がつけた傷がもうなくなってる」
蒼士はローグからつけられた傷を回復のスキルで治療している。それを回復魔法で治したと思ったらしい。
「剣を持ってるところからみても気力を持っているのはやり合って感じた。にもかかわらず回復魔法を持ってるってのは……聞いたことがない」
ローグがじっと蒼士を見つめる。それは問いただすような雰囲気で。
「ちょっとお兄ちゃん!ソウシさんに失礼だよ!」
「大丈夫だよメイちゃん。逆にローグに聞きたい。その口ぶりからすると魔力と気力は一緒には扱えないのか?」
「少なくとも俺は聞いたことがないし、魔力と気力が両立しないのは常識になってる」
「じゃあ魔法の属性も教えてほしい」
「魔法の属性?」
「ああ、どうやら俺の常識とは違うようだからな」
蒼士は日本を遠い遠い国と説明したことで常識を知らなくてもおかしくないというほうに話を持って行った。
「魔法の属性は火水風土氷雷が自然魔法でそれ以外が特殊魔法って呼ばれてる。回復魔法もそのひとつだ」
「なるほど……色々教えてくれてありがとう」
こうして蒼士は不審に思われるも"自身の国とは遠いがために常識が違うのだろう"と説明し納得してもらった。それ以降はメイからの日本がどんな国なのかと質問攻め。
「すごい……空飛ぶ乗り物があるなんて……二ホンか~。ちょっと行ってみたいかも。ね?お兄ちゃん?」
「ん?ああそうだな。さすがに気になるな」
「あはは……いつか行けたらいいな……」
行けるわけがないと内心では思いながらも話を合わせる蒼士。最後には明日ともに依頼を受けることで話がまとまり解散となった。
「ふう……なんだかんだあったがいい方向に向かったかもな……」
そうしていつも通りに大勢との雑魚寝の部屋へと帰ってくる。
「……いい加減本腰を入れて稼ぐか……」
観光はいったん終わりとして蒼士は個室を目指してしばらくは依頼三昧で過ごすことに決定した。
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