第3話 中級:オーク
ゴブリンを討伐し剣と獲得したSPで暗殺者をアンロックした蒼士。お陰で気配を消しながら歩けるために多少の音を発しても魔物から気づかれにくくなった。
「とりあえず安全性は増したけど今日を生き抜くためには食料と水が必要だな」
そう考えて蒼士はゴブリンが食べていた果実を思い出した。
「……ゴブリンでも生き物ならあの果実には毒なんてないだろ……」
幸いとしてその果実は比較的どこにでも存在する果実だった。形や色はリンゴのような見た目ながら味はリンゴとブドウを合わせたような味。そんなリンゴブドウを食しながら蒼士は川を探す。
「どこかしらに川はあると思うんだけど」
蒼士は漠然と強そうな気配のするルートを避けながら終始気配を消して森を歩く。時にはゴブリンの近くを通り過ぎたり、弓矢を持つ犬の魔物=コボルトに感づかれそうになったりなどしながらもなんとか川の付近までやってくることができた。
「川の音が近い……なんとかここまでやってきたか。やっぱり暗殺者をアンロックしただけだとそこまで強くないんだな」
暗殺者はいわばスキルツリーの根幹であり始点のようなもの。まだ0→1になっただけの状態であり弱いのは当然と改めて理解した蒼士。
「やっぱり素通りしてきたゴブリンは討伐したほうがよかったな」
ここまで来る道中に通り過ぎたゴブリンは暗殺しようとすればできた。しかし覚悟は決めているもののいまだ異世界に慣れようとしている段階の蒼士は"襲われていないのに殺す"という行為に踏ん切りがつかなかった。
「でもゴブリンぐらいなら比較的簡単に討伐できるってことがわかったしチャンスはまだあるか」
そうしてゴブリンを殺してから歩くこと数十分。蒼士の目の前に川が見えた。
「やっ!?」
喉がカラカラだったため川を発見し喜び叫びそうになった蒼士だったが即座に感じ取った気配にて身をかがめ気配を消しゆっくりと木々の間から川を観察する。するとそこには水を飲んでいるウルフが2匹いた。
「あれは……いやチャンスと見るべきか……」
蒼士は一度犬の魔物=コボルトに感づかれそうになった経験からウルフにも感づかれる恐れを抱いたが先ほどの好機を素通りしたことが頭をよぎり挑戦することにした。
蒼士はゆっくりと木々の間から出るとなるべく音を鳴らさないように慎重に歩く。幸い2匹のウルフは川の水を飲むことに夢中でいまだ蒼士の存在には気づいていない。
「……」
ゴクリ
ウルフまで気力を使えば一気に飛び掛かれる地点まで間近。
「(まずは1匹を確実に。そこだけを考えよう)」
戦闘の素人を自覚している蒼士は2匹同時に戦い無傷で終えようなどとは考えていない。しかし死ななければ多少の傷なら問題ないとも思っている。
「(怪我をしても治療師をアンロックすれば何とかなるかもしれない)」
意を決して足に気力を重点的に集め一気に加速。
ダッ!
「はあ!」
ザン!
「キャイン!?」
「ワオン!?」
目論見通り一体の背中を大きく切り裂くことに成功した蒼士。しかしもう一体いることは把握している蒼士はそのまま身体の流れを止めることなく剣を横に振るった力を利用して回転しながらもう一体のウルフも切りつける。
「バウ!」
ザクッ!
二体目のウルフの討伐のために振るわれた蒼士の剣は後方へと回避したウルフの片前足を傷つけるだけで終わり討伐まではできなかった。
「チッ……そう簡単にはいかないか……」
「ウウ……」
蒼士に対してうねるウルフ。しかしその足では不利と判断したのか蒼士のほうを見ながらゆっくりと下がっていく。
「ふう……まあいいか……」
蒼士は剣を下げて殺すつもりがないことを意思表示。それが伝わったのかウルフは蒼士に背中を見せながら森の中へと逃げていった。
「まだ1日も経ってないからな……異世界に慣れていかないと……」
こうして蒼士は川の水を飲むことに成功し生きていくうえで必要な食料と水を確保した。
/////
--翌日--
川を発見してから蒼士は川を下ることを決意。これで人里に出れるかもしれないという期待を込めて。ちなみに蒼士は魔物の存在もあり一睡もせずに朝を迎えた。そして先日にゴブリンをもう1体討伐したことで蒼士はスキルをアンロック。治療師と魔法使いを獲得した。
「魔力が……発現したのがわかる……」
魔法使いをアンロックしたことで体内に気力だけでなく魔力も発現した蒼士。早速できることを確認していくと判明したのは魔力を球体の塊=魔力玉を放てるのみだった。
「これだけか……まあ第一段階だからこんなものなのかな?」
魔法使いには多少の期待もしていた蒼士はその期待が外れたことで少し残念に感じた。ちなみに治療師をアンロックした際にできたのはかすり傷程度を治すだけの小回復だった。
「でもこれで全部の系統の始まりが解放されたか。次はなにを取ろうかな?」
近接の戦士系を伸ばすか・隠密の暗殺者系を伸ばすか・生存の治療師系を伸ばすか・遠距離の魔法使い系を伸ばすか。今度についてを蒼士が悩んでいると気配を感知しすぐさま気配を消して身を隠す。
ドシッ!ドシッ!ドシッ!
現れたのは先日に蒼士が逃げ出していたオークだった。しかし直前で気配を消したことでオークは蒼士の存在に気が付いていない。
「……やり過ごすか?……」
どうやらオークは索敵面はそこまでではないらしく草むらに隠れているとはいえ真横を通っても蒼士に気が付いていない。このままならば戦闘にならずに無事にやり過ごすことができるだろう。しかしそれでいいのかと自問自答する蒼士。
「(ここは異世界だ……あんな危険な生物がいる……オークなんか目じゃないほどに強力な魔物もいるかもしれない……この世界で生きていくには隠れているだけじゃだめだ!)」
そしてとうとう先日にはできなかった背後からの奇襲を決行した。
ダッ!
気力にて足を重点的に強化してオークの背後から飛び掛かり首の切断を狙う。
ザクッ!
「グギャアアア!?」
しかし蒼士の剣はオークの首の骨に阻まれて途中で止まってしまった。
「しまっ!?」
「グギャア!!」
ブオン!
奇襲は速度が大事と思いすぎたために剣に対しての気力が足りなかった。それゆえに剣が途中で止まってしまった。そして傷つけられた痛みにより蒼士を認識したオークは身体を振り回すことで蒼士を振り落とした。
「剣が!?」
なんとか着地に成功した蒼士だが剣はオークの首の骨に刺さったまま。つまり蒼士はいま手ぶらだった。
「グガアアアア!!」
怒り狂ったオークが蒼士に対して一心不乱に金棒を振り下ろす。
ドンドンドンドン!!
「くっ……!かすりでもすればアウトか!」
剣という武器を手放した蒼士は一瞬、絶体絶命のように焦りを覚えるも必死にできることを考える。そして先ほど身に着けた魔力玉に活路を見出した。
「これでもくらえ!」
ボン!
手のひらから放たれた魔力玉は蒼士の狙い通りにオークの顔に当たった。
「グガッ!?」
魔力玉自体にはそこまでの威力はない。なのでオークは一瞬金棒のラッシュが止まるだけ。しかしその一瞬があれば蒼士には十分だった。
「ラッシュさえ止まれば!」
ダッ!
一瞬のみ止まった隙を見逃さずに気力で接近。一気にオークの首に突き刺さった剣を握りしめ気力を全開にして降り抜いた。
「ハア!」
「ッ!?」
コロコロコロ
〈中級:オークの討伐を確認。SP:100を獲得しました〉
こうして俺は中級のオークを討伐し森の脱出に成功した。
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