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ほぼ全知の勇者のギルド運営  作者: 紫木翼
3章

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引き渡し完了

「……まったく、ここまで時間がかかるとは思いませんでしたね」


 竜への苦情申し入れから六日後の夕方、天使の幹部の一人、ノルニックはレウグ聖峰にある城の自室で一人ため息をついていた。


 ノルニックは別の幹部、ネルモンと共に一時間程前までカリオルクァ神聖国の幹部たちと会っており、その際の議題は天使のカリオルクァ神聖国外での活動が増えている事についてだった。


 天使たちはカリオルクァ神聖国の国民と百年以上に渡り共存してきたが国の幹部ですら天使には滅多に会えず、カリオルクァ神聖国ではギルドの活動こそ活発だったが天使たちは魔獣狩りにすら参加せずに国民たちと一定の距離を保っていた。


 しかしリファロが持ち込んだ情報により天使たちはカリオルクァ神聖国以外の国に介入する必要に迫られ、長引けば一ヶ月以上冒険者の代役として働く必要があった。


 このため何の断りも無く自分たちが他国で働けばカリオルクァ神聖国の国民が不満を持つだろうと考え、天使たちは竜との会談の翌日にはカリオルクァ神聖国への説明の場を設けた。


 周辺の国々のギルド支部の不正が原因で天使たちが国外で働くと聞きカリオルクァ神聖国の幹部たちは驚いていたが、この活動は長くても二ヶ月程で終わると知り一応は納得していた。


 しかし天使たちが一連の騒ぎの発端となった人物、リファロのもとに天使一人を長期間派遣すると聞かされた瞬間、カリオルクァ神聖国の幹部たちは再び驚き、恐怖すら露わにしながら天使たちに質問をしてきた。


 これまで天使に敬意を払ってきた自分たちを差し置いて一個人のもとに天使を派遣するのか。

 天使が他国に興味を持った結果、自分たちの優先順位が下がる、あるいは見捨てられる可能性があるのではないか。


 カリオルクァ神聖国の幹部たちはこの様な不安を持ち、カリオルクァ神聖国側が自分たちの決定に異論を唱えるという初めての事態に驚きながらも天使たちは根気強く話し合いを続けた。


 自分たちの関係は変わらない事を何度も伝えながら天使側はリファロの強さと今後予想される影響、そしてリファロが自分たちの会話の内容を把握している可能性をカリオルクァ神聖国側に伝え、会談の途中からカリオルクァ神聖国側はリファロに会えないかと言い始めた。


 このカリオルクァ神聖国側の要求に対して天使側は自分たちとリファロはギルド関連以外の要求をできる関係ではなく、『回答者』を持つリファロの方から接触してこない以上、リファロはカリオルクァ神聖国に関わるつもりは無いのではと伝えた。


 実際最近のリファロはアルベール魔王国関連の仕事で忙しくなる一方で、国王、ブラザークや兵士たちのアッキム王国への帰国後は更に忙しくなるだろうと天使たちにこぼしていたので天使側はこうしたリファロ側の事情をカリオルクァ神聖国側に正直に伝えた。


 この結果カリオルクァ神聖国側は渋々といった様子ではあったがリファロとの接触を諦め、ノルニックたち幹部が極力避けたかったスイリーシュの会談への参加は避ける事ができた。


 しかし今回の会談が今後の自分たちの関係に悪影響をもたらす事は確実だと天使たちとカリオルクァ神聖国両方が考え、自分たちがカリオルクァ神聖国側に見捨てられる可能性を恐れている事は何とか隠せたはずだと考えながらノルニックは机の上の資料を見た。


 一日で終わる予定だったカリオルクァ神聖国側との会談が長引いた結果、クララス王国内で行うはずだったリファロとレオエフェールの顔合わせがまだ済んでおらず、二人の顔合わせは六日後にゼーナマイン皇国で行われる予定だった。


 このためゼーナマイン皇国を担当しているノルニックは会談が終わった今も気を抜く事ができず、リファロ訪問時にゼーナマイン皇国で問題が起きない事を祈りながら仕事を再開した。


 マナリュースとルドディスとベインジアを探索した二日後の午前中、リファロはマナリュースと魔族数人と共にアッキム王国の首都、ダーウォールを訪れていた。


 ダーウォールにある王城の敷地内にはアルベール魔王国から連れ去られた魔族三百人程が集められており、これまでに数回行われていた魔族の引き渡しは今日で最後だった。


 既に何度も行われている魔族の引き渡し自体は今日も問題無く終わるだろうと考えながらリファロはマナリュースたちと共に転移装置でダーウォールに転移し、まだ数が少ないのが残念だが転移装置は本当に便利だなと考えていたリファロの視界に魔族やアッキム王国の大臣たちが入った。


 彼らの存在自体は問題無く今回も買い戻された後は虐待などは受けていない様子の魔族たちの転移をマナリュースたちに任せた後、リファロは魔族の売買を担当している大臣、ディンガイに話しかけた。


「おはようございます。思ったより早く終わりましたね」


 リファロがアッキム王国側に提示した魔族買い戻しの期日は戦争終了後の二ヶ月後だったがまだ戦争終了から二週間程しか経っておらず、間に合わなかった時が面倒だったのでかなり期日に余裕を持たせたとはいえアッキム王国の動きはリファロの予想以上に早かった。


 魔族を買い取った貴族の中には私兵を使い魔族の返却を拒む者までいた事をリファロは『回答者』で把握しており、こうした事情を踏まえてのリファロの発言にディンガイは頭を低くしながら返事を返した。


「リファロ様の名前を出したらみんな素直に魔族を返しましたので。……死体も含めて我が国にいる魔族はこれで全てのはずですがよろしかったでしょうか?」


 リファロは魔族を既に殺してしまった者の名前が記載された一覧表を死体の隠し場所まで記載された状態でディンガイたちに渡したので、ディンガイの言う通り、死者も含めてアッキム王国に誘拐された魔族の救出は今日で終わりだった。


 しかし死者まで含めた魔族の円滑な救出は『回答者』を前提に行われたので、リファロがまだアッキム王国内に魔族がいるはずだと言い出したら例えこれが言いがかりでもディンガイたちは反論できなかった。


 しかしもちろんリファロにこの様な言いがかりをつけるつもりは無く、ディンガイたちの心配をよそに今後について話そうとしていたリファロにある部外者が話しかけてきた。


「おい、私を無視とはいい度胸だな」


 ディンガイと話していたリファロに話しかけてきたのはエプランテでリファロはこの場にエプランテがいる事を転移前から知っていた。


 エプランテは十日程前からアッキム王国に滞在しており、リファロは天使と竜の会談の翌日にエプランテに会っていた。


 今回天使たちはリファロ立ち合いの下、人間に危害を加えたホーエイト山脈の竜にだけ苦情を申し入れたが、リンダホン山脈の竜にも今回の決定を伝えておかなくては後々問題になる可能性があるとリファロは考えた。


 このため天使たちに断ってからリファロはリンダホン山脈の竜にも今回の決定を伝え、ホーエイト山脈の竜が人間のために働かされる予定という事実にもリンダホン山脈の竜たちは驚いたが、今回の決定の中で彼らが一番驚いたのは一族の竜が人間を殺した場合、同じ一族の竜までリファロに殺されるという事だった。


 ホーエイト山脈の竜は全員が人間に興味など無かったので普段ならこの決定は問題無かったが今はエプランテが山を離れており、無礼な振る舞いをしてきた人間なら自分も殺すと考えていた竜たちは自分たちの命運がエプランテに握られている事実に恐怖した。


 しかし今回の決定を聞く前の竜の殺人の罪を他の竜たちにまで負わせるつもりはリファロには無く、今からホーエイト山脈の竜たちにエプランテを追えというのも無茶な話だったのでリファロは今回の決定は自分がエプランテに伝えると彼らに伝えた。


 この直後リファロはエプランテのもとに転移して今回の決定を伝えたのだが、いきなり現れて他の一族とはいえ竜を侮辱しているとしか思えない発言をしたリファロにエプランテは怒りを露わにした。


 しかしリファロの竜を危険視しているという発言にエプランテは恐怖を感じると共に多少満足し、その後ホーエイト山脈まで転移させるというリファロの提案を断りアッキム王国に滞在していた。


 リファロと対峙するなり問答無用で転移された事から反省したのかエプランテはアッキム王国滞在中人間に危害を加えず、多少人間を威嚇する程度なら許容範囲だろうとリファロはエプランテの動向を見逃していた。


「無視って言われても僕たち今日はアッキムの人たちに用があって来たわけですから。……何か用があるなら後で聞きますから少し待っていて下さい」


 エプランテの意図が分からずリファロはわずかに困惑したが敵意は持っていない様子だったのでとりあえず放置し、とりあえずリファロと言葉を交わして満足したのかエプランテも大人しく引き下がった。


「すみません。とりあえずさらわれた魔族の件はこれで終わりですね。後は今後の事について話したら失礼します」


 リファロの今後の事という発言にディンガイは表情を硬くしたが無理難題を言うつもりが無かったリファロはディンガイの反応を気に留めず、自分の頼みを受けたディンガイが他の大臣たちを集めた後、ディンガイたちに要望を伝えた。


「アルベールの魔族のみなさんと話し合ったんですけど賠償金はいりません。今回戦争に負けてこれからみなさんも大変でしょうし」


 このリファロの発言にこの場にいた大臣全員がわずかに表情を変えたが、皮肉を言ったつもりだったリファロはディンガイたちの反応を気にせずに話を続けた。


「基本的に僕もアルベールのみなさんも今後この国に関わるつもりはありません。クリヒビスの融和派の人たちとだけは仲良くできればと思ってますけど」


 これから経済難や権力争いに対処する必要がある大臣たちにとってアルベール魔王国との国境沿いにある街に住む魔族好きの狂人たちの事などどうでもよく、クリヒビスには精々緩衝地帯として働いてもらおうと大臣たちは考えていた。


「まだ二ヶ月以上かかりますけどブラザークさんたちが帰って来たら今回の負けの責任を誰かが取る事になりますよね」


 このリファロの発言に元凶が何を他人事の様にと大臣たちが憤る中、リファロは話を続けた。


「もちろん帰って来たブラザークさんとか将軍の人たちにどう責任を取ってもらうかはみなさんで決めてもらって構いません。でも、兵士のみなさんだけに責任を取らせるつもりなら僕も黙ってません」


 リファロがブラザークの名前を気安く連呼していた事にディンガイたちは怒りを募らせていたがリファロの矛先が自分たちにも向きそうな事を感じ取り真顔になり、保身の事のみを考え始めていたディンガイたちにリファロは要望を伝えた。


「ブラザークさんと戦争を始めた時に大臣だった人たちは兵士の内一番重い罰を受けた人と同じ罰を受けて下さい」


 このリファロの発言に大臣たちは互いに視線を交わし、自分の怒りを買う事を恐れて発言できない様子の大臣たちにリファロは話しかけた。


「そんなに難しい事言ってませんよね?将軍のみなさんを死刑にするならみなさんも死刑になって、全財産没収や国外追放するならみなさんも同じ目に遭って下さいって言ってるだけです。まさかと思いますけど自分たちには何の責任も無いとか言いませんよね?」


 今回の敗北でアッキム王国が受けた損害を考えると兵士の誰にも罰を与えない事はあり得ず、将軍たちは死刑もあり得ると大臣たちは考えていた。


 そして国内の情勢が混乱して今後内乱が起きる可能性すら高い今、軍人の力を削ぐ事は必須事項だと考えていた大臣たちはリファロの要望に言葉を失ったが、ここで引いては自分たちや家族の命が危ないと考えた大臣の一人が意を決して口を開いた。


「お待ち下さい!我々も何らかの責めは当然負いますが兵士たちと我々への罰が同じというのは……」

「待ちませんよ」


 大臣の発言を切り捨てるように即座に放たれたリファロの発言に周囲は静まり返り、エプランテ一人が楽しそうな表情を浮かべる中、リファロは話を続けた。


「話が長くなりそうなのではっきり言いますね?あなたたちとの戦争に勝って、竜より強い僕が無茶を言ってるんです。あなたたちの都合なんて考える気はありません」


「……もし私たちの国で内乱が起きた場合、あなたは介入してくるのですか?」


「はい。他の国でもやる事があるので何かが起きてすぐに介入ってわけにはいかないかも知れませんけど、これから先戦争とか内乱を起こした人はできるだけすぐに捕まえて遠くの海にでも転移させます」


 国を挙げても勝てない事が既に実証されている怪物のあまりに乱暴な命令に大臣たちはついに全員が言葉を失い、おそらく無理だろうと思いながらもリファロは大臣たちに平和的にアッキム王国の混乱を抑えるように頼んでからエプランテのもとに向かった。


「何の用ですか?『転移』無しで戦って欲しいって言うなら駄目ですよ?面倒ですし」


 強化されたものも含めて『転移』を使わずにエプランテに勝つためにはリファロは『創造者』を使う必要があったが、ここ数日様々な活動に忙しかったリファロは『創造者』を後五回しか使えなかった。


 強化された『転移』を使えば一瞬で終わるエプランテとの戦闘に一日に一回分しか魔力が回復しない『創造者』はもちろん腕輪も使う気はリファロには無かった。


 このためリファロはあからさまに面倒そうな表情を浮かべたのだが、エプランテは戦闘を望まずにリファロに予想外の提案をしてきた。


「お前といると色々楽しめそうだ。お前がアルベールとかいう国で始めるギルドに参加してやる。感謝しろ」


 このエプランテの提案にリファロは絶句してしまったがすぐに我に返り、自分の提案が断られる可能性など全く考えていない様子のエプランテに改めて視線を向けた。


 純粋に強さを考えたら竜のエプランテのギルド参加はありがたく、具体的に何を考えているかまでは分からなかったがエプランテが自分に敵意を持っていない事もリファロは『回答者』で把握していた。


 このためとりあえず落ち着ける場所で話の続きをしようと考えてリファロはエプランテをニードベルの屋敷に案内する事にし、屋敷で働いている使用人たちはいきなり竜を連れてこられて驚くだろうなと考えながらエプランテと共に転移装置へと向かった。

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