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ほぼ全知の勇者のギルド運営  作者: 紫木翼
2章

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報告

「お久し振りです。昨日クララス王国という国に行っていたので少しですけどお妃様たちにお土産を持ってきました」

「ああ、これはどうも」


 自分たちとの話し合いのためだけにリキュアナに来たと思っていたリファロがミルヒガナへの土産を持参した事にルドディスは驚いたが、すぐに近くにいた魔族たちに土産の入った木箱を運ぶように指示を出した。


 そして自然に使用人に指示を出していたルドディスに感心していたリファロにディルシュナが話しかけ、ディルシュナと少し話した後、マナリュースとラミア二人と別れたリファロはルドディスに案内されて先日会議が行われた部屋へと向かった。


「天使との交渉はどうなりましたか?」


 アルベール魔王国側が用意した資料が会議の参加者たちに配られた後、今回の本題に入る前にルドディスはリファロに天使との交渉の結果を尋ね、特に隠す事も無かったのでリファロはルドディスの質問に素直に答えた。


「一回戦う事になりましたけどその後は順調に話が進んで、……気を悪くしないで欲しいんですけど天使のみなさんが住んでるカリオルクァ神聖国に魔族を入れないという条件で魔族のみなさんもギルドに参加できるようになりました」


 現時点ではアルベール魔王国内ですら冒険者ギルドの活動が始まっておらず、将来的に魔族が他国で冒険者として活動する事になったとしても魔族に敵意を持っていると噂されている天使の住むカリオルクァ神聖国に行きたがる魔族などいないだろうというのがルドディスを含む室内の魔族の総意だった。


 このためリファロに魔族の一部をカリオルクァ神聖国に移住させたいと言われたら面倒だと考えていたルドディスたちはリファロの報告を聞き気を悪くするどころか喜んだ。


 しかしこうした自分たちの考えをリファロがどう受け取るか分からなかったのでルドディスは言葉を慎重に選びながら口を開いた。


「人間たちの侵略を受けてまだ時間が経っていないので国民の前では言えませんがアッキムという国との交流自体は我が国にとって必要なものでしたし、他の国から物や技術が入ってくる事は我々としても大歓迎です。ですからギルドという組織の活動にも私たちとしてもできるだけの支援はしたいと考えていますが、正直な話、今の私たちは国内の安定とゼーナマインとの国交再開の準備で手一杯なので私たちがカリオルクァという国で活動できない事はあまり気にしないで下さい」


 アルベール魔王国は西にあるゼーナマイン皇国と戦争前は友好的な関係で、アッキム王国との戦争が終わった今、アルベール魔王国の上層部はできるだけ早くゼーナマイン皇国との国交を再開したいと考えていた。


 しかしゼーナマイン皇国がアルベール魔王国の再三の援軍要請を断ったという事実が国交再開を難しくしており、部外者かつ庶民のリファロは国交再開をアルベール魔王国から頼めば済む話だと思ったがアルベール魔王国の対面が考えるとそうもいかないらしかった。


 ゼーナマイン皇国側から謝罪の使者が送られてくるまでは戦争終結を知らせる使者を送る以上の行動をアルベール魔王国は行わないつもりらしく、こうした事情をルドディスから聞かされたリファロは国同士のやり取りは面倒だなと驚くと同時に同情した。


 まだアルベール魔王国の使者がゼーナマイン皇国に着いていない現時点でゼーナマイン皇国側にはアッキム王国の敗北が冒険者ギルド経由で伝わっている事をリファロは知っていたからだ。


 しかしこの事はアルベール魔王国の上層部も把握しているはずなのでリファロは指摘せず、自分が間に入れば両国間の交渉が円滑に進むはずだとも考えたがこれ以上自分に借りを作りたくないというアルベール魔王国の立場も理解していたので何も言わなかった。


「ギルドの事でいくつか頼みがあるんですけどまずはアルベールで起きてる犯罪についてどうなってるか教えてもらっていいですか?」


「はい。リファロ殿からもらった情報でリキュアナとその周辺で起こった事件の犯人は全て捕まり、リファロ殿が『回答者』で私たちに協力している事実を魔導通信機のある場所には全て伝えたので事件の発生件数自体は半分以下になりました」


「それはよかったですけど文句言う人はいませんでしたか?僕が言うのも何ですけど根拠が『回答者』だけじゃいくらでも言い訳できますし」


「……もちろん犯行を認めない犯人はそれなりにいましたが、それは『回答者』関係無く避けられない事なので」


 元々軍事担当のルドディスは増加した犯罪への対応に関しては臨時で手伝っている立場で、部下に指示こそ出していたが犯人逮捕の現場には数件程度しか立ち会っていなかった。


 しかし街の中やその周辺を見回っている魔族たちからは『回答者』の情報を根拠に逮捕された犯人たちから不満の声があがっているとの報告もあり、リファロが本当に『回答者』を使いこうした現状を把握していないのか不安に思いながらもルドディスは話を続けた。


「さすがに証拠集めにまでリファロ殿のお力を借りるわけにはいかないので、犯人を捕まえた後の事は私たちに任せて下さい」


「そう言ってもらえるならお任せしますけど一応カリオルクァに行って使えるようになった魔法を教えておきます」


 こう言うとリファロは天秤魔法の存在をルドディスたちに伝え、天秤魔法なら視覚的に分かりやすいので犯人も観念するのではという自分の考えも合わせて伝えた。


「結局僕無しじゃ使えませんし何度も使って証明するまで信憑性は『回答者』と大差無いですから実際に使うかはみなさんに決めてもらうしかないですけど、一応こういう選択肢もあるって事だけは伝えておきます」

「……もしその魔法を使ってもらいたいと思ったらギルドに依頼すればいいのですか?」


 アルベール魔王国で司法を担当しているエルフ、リミュベルはこれまでの捜査や裁判の前提を覆す天秤魔法に強い興味を示したが、軍事と治安維持を司る機関のどちらが窓口になるかすらまだ決まっていないギルドの力を借りる事に不安を覚えていた。


 そしてリミュベルが天秤魔法に興味を持つ事を予想していたリファロは用意していた答えを返した。


「一応一回毎の料金は設定しますけどもし本格的に裁判所で天秤魔法を使うって事になったら一週間に一回まとめて使うって形にしてもらった方がお互い楽だと思います」



「……その天秤魔法はカリオルクァでは裁判に使われているのですか?」

「いえ、カリオルクァでは天使のみなさんはほとんど国民と関わらないで基本的には城にいるので、天秤魔法は何年かに一回、大きな事件が起きた時に国から頼まれて使うぐらいみたいです」


 司法機関の人材が戦争で大量に失われた直後に犯罪が多発している現状、リミュベルは天秤魔法を自分たちの仕事に組み込みたいと強く思った。


 しかし現時点ですらリファロはアッキム王国を撃退した上に治安維持に貢献してアルベール魔王国に強い影響力を持っており、個人差こそあったが誇りとわずかながらの警戒心からアルベール魔王国の幹部のほとんどがリファロに頼り過ぎる事をためらっていた。


 このためリミュベルは他の幹部に視線で制止された事もありこの場での天秤魔法についての質問を止め、その後リファロが他の幹部との質疑応答を行った後、ルドディスがリファロに先程口にした頼みについて尋ねた。


「何か頼みたい事があると言っていましたが何でしょうか?」


 このルドディスの質問を受けてリファロは周辺の国々で起きている冒険者ギルド関連の騒ぎについてルドディスたちに説明を始めた。


「――というわけでもう少ししたらギルドを辞める人たちが増えると思うんです。最終的には戻ってくる人の方が多いと思うんですけどそれまでの間、魔獣を倒す人がいなくなるので僕も魔獣狩りを手伝うつもりです。そこで一人でいいのでオーガの誰かに手伝ってもらいたいんですけど」


「それは構いませんが一人でいいのですか?数日で帰って来られるなら五十人までなら用意できますが……」


 リファロは兵士数百人を軽く全滅させる強さを持ち『転移』で一瞬で遠く離れた場所に行けるが、数ヵ国に渡り魔獣狩りを行うとなると人手不足になる事は当然だとルドディスはもちろん他の幹部たちも考えた。


 しかしリファロの要求がオーガ一人だった事にルドディスは戸惑いを隠せず、他の幹部たちも不思議そうな表情を浮かべる中、リファロは今回の目的を伝えた。


「正直な話、人手不足とかではないんです。ギルドが落ち着くまでは天使のみなさんもそれぞれの国で魔獣狩りをするそうですから。ただどうせなら他の冒険者たちがいない間にオーガの強さを売り込んでおきたいと思って」


 今後予想される騒ぎが落ち着き冒険者が戻った後でオーガが活躍しても仕事を奪われたと人間の冒険者が反感を抱く可能性があったので、多くの冒険者が一時的にギルドを離れる時期はオーガの売り込みに最適だとリファロは考えていた。


「僕も参加しますけどマナリュースさんにも手伝ってもらって、僕が責任持てるのは後一人だけなのでオーガの誰かに手伝ってもらおうと思いました」


 こう言ってリファロが自分の計画を伝えるとルドディスたちは驚きの表情を浮かべ、ディルシュナの事を思い浮かべていた幹部たちを前にリファロは話を続けた。


「もちろん後でディルシュナ様には断っておくつもりです」


 今回も会議の前にリファロはディルシュナにお茶に誘われており、少し迷ったが今回は誘いを受ける事にした。


「魔獣の方は正直な話、僕無しでも勝てると思いますから危険は無いと思います。ただ一つ条件を出すなら他の国で見た事をたくさんの魔族に伝えて欲しいと思っているのでできれば役職とかに就いてない人を選んでもらえると助かります」


「……リファロ殿の考えは分かりましたが私も一度人間の国を見てみたいと思います。国の数だけオーガを用意するという形にしたいと思っていますが、最初の国に行くのは私に任せてもらえないでしょうか?」


「はい。分かりました。頼むのは早くても一週間後ぐらいになると思うのでよろしくお願いします」


 アルベール魔王国の幹部が見聞を広める事に反対するつもりはリファロには無かったが、他の幹部から出たオーガ以外の魔族も魔獣狩りに参加させて欲しいという要望は今回は断った。


 オーガ以外の魔族だと『名持ち』の魔獣と戦った際重傷を負う可能性があったからだが、オーガだけ優遇されていると他の魔族が不満を持つ事を避けるためにリファロは幹部たちにある提案をした。


「明日天使のみなさんが竜に苦情を言いに行って僕もそれに同行するんですけどもしよかったら一緒に行きませんか?数人なら文句は言われないと思いますし、帰りに村を見るぐらいならできると思いますけど」


 このリファロの提案は純粋な善意によるものだった。


 しかし実際に見た事は無いとはいえ最強の種族と名高い竜との揉め事の場に同席したい者など幹部たちの中にはおらず、幹部たちの反応を受けて自分があまり信用されていないのだろうかと微妙にずれた感想を抱きながらリファロはマナリュースたちの待つ部屋へと向かった。

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