第78話 一色の侵攻と将軍の暗躍
※ 現在執筆の時間を余り取れない為、投稿を優先して話が短くなっております。また、誤字脱字の確認も不十分です。以上、ご了承ください。
◎近江国・近江八幡城 楠木正顕
1562年 4月上旬
月夜見より齎された報せでは、今川上洛戦の折に一色より奪い取った不破関(砦として魔改造済み)に向かって一色勢およそ八千が向かって来ているとの事だった。
「率いているのは斎藤飛騨守とか言う龍興の寵臣らしいですが、詳しい情報は掴めておりません。また、数日前には竹中・安藤ご一行が不破関を抜け、近江に入られたようです。」
「なに?!早急に竹中・安藤ご一行を保護し、こちらにお連れせよ。それから不破関を護っておるのはおるのは誰だ?」
「大谷吉房殿ですな。」
「では吉房には防衛に徹して決して打って出るなと伝えよ。また、新九郎(浅井賢政)には悪いが、急ぎ小谷へ戻り、援軍を連れて向かうように伝えてくれ。」
「畏まりました。」
俺の指示を受けて月夜見の者が去る。それから暫くの後に自領よりの伝令が届き始めたのか、一色領に接している盛邦義兄上や十兵衛が俺の元を訪れ、お暇の挨拶をすると急ぎ領地に戻って行った。
またそれから半刻の時が過ぎ、竹中・安藤一行が城門前に到着した旨の報せが届いた為、謁見の間に通すように指示した後に満和(恩智満和)を連れて謁見の間に向かった。
謁見の間に入ると既にそれぞれの代表である竹中重治、安藤守就両名と思われる人物が頭を下げて待っていた。
「遠路遥々ご苦労でしたね、面を上げて下さい。」
俺の言葉で二人は顔を上げて目線をこちらに向けて来る。竹中殿と思われる若い優男の方は表情を変えないが、安藤殿と思われる年輩の男は驚きの表情で固まっていた。安藤殿のような反応は初めて会う御仁は殆どそうなので、特にどうこう言う事は無いが、竹中殿の方は流石と言う外ない。
「以前お声掛け頂いた時には、曖昧な返答をしてしまいまして、申し訳ありませんでした。お初に御意を得ます。竹中半兵衛重治と申します。この度は早々に受け入れて頂き、感謝申し上げます。」
「安藤伊賀守守就と申す。娘婿である半兵衛の誘いにより共に罷り越した。宜しくお願い致す。」
「それで、お二人が一族総出でいらしたのは、一色の侵攻と関連があるのかな?」
「はい、実は…」
竹中殿のこれまでの経緯と一色家を出奔して来た事、将軍家の密命の事など知っている限りの情報を提供してくれた。
「事情は良く分かった。特に、将軍家が裏で暗躍している件は、特に重要な情報であった。幻斎おるか?」
「はい、こちらに。」
俺の背後に幻斎が現れる。それを見た竹中・安藤両氏は体をびくりとさせる。
「例の件と同様にこちらの件も併せて流せ。特に皇家を蔑ろにする行為を断罪するようにな。それから、春にこの件を説明し、帝への文を認めて貰ってくれ。此度の件を曖昧な儘にしては、帝の威光に傷がつく故、一色家と足利将軍家に対して可能であれば朝敵指定をして頂きたいとな。」
「御意。」
俺の指示を受け幻斎は静かにその場を去って行く。幻斎から二人へ視線を移すと流石の竹中殿も驚きの表情を浮かべていた。
「此度の件、甘い裁定を下せば朝廷の威光に傷が付くからな、将軍家相手でも厳しい態度で臨まねばならん。それはさて置き…お二人は楠木へ仕官して頂くと言う事で宜しいのかな?」
「はっ、はい。その通りです。」「うむ。」
二人とも同意の意を示す。
「それは良かった。では二人には此度の褒美と、出奔の際に手放した所領の代わりとして、半兵衛にはこの城の南に位置する長光寺城と周囲一万石を与える。更に軍略方として俺を補佐して貰いたい。」
「承りました。」
「守就には美濃にほど近い久徳城と周囲一万石を与える。其方には西美濃三人衆の寝返りを担当して貰いたい。寝返り先は楠木でも織田でもどちらでも構わない。ただし、楠木へ寝返る場合は、最終的には所領を放棄し楠木の領地へ移動して貰う事になる。当然替わりの領地の準備はする。」
「粉骨砕身、働きまする!」
これで両名の取り分は旧領の時よりも増えた筈だ。おっと、そうだった。
「最後に半兵衛。其方は体を鍛え、週に一度でも肉を食べよ。」
「えっ?如何なる理由に御座いましょうか?」
「お伊勢様からのお告げだ。このままでは其方は病気にて早逝する。」
「んな?!そのような事が?!」
「うむ、このままでは間違いなくそうなる。最悪、俺の持つ薬液にて何とかなるが、この世で手に入る薬では無いからな、可能であれば自衛して貰いたい。」
肉食と聞いて半兵衛が少し青い顔をしているが、守就が胸を叩いて約束する。
「この儂が娘に話して生活の管理をさせまする。ご安心くだされ。」
守就の言葉に逃げ道の無くなった半兵衛は、肩を落として項垂れる。
「半兵衛、其方には長生きして貰わねばならん。故に奥方の言う事はちゃんと聞くように。それから領地へは疲れを癒してからで良いからな。満和、後の手配と二人への説明を頼むぞ。」
「承りました。」
後の事諸々を満和に任せ、俺は奥御殿へと下がり、市と春の様子を見に行くことにした。
◎近江国・近江八幡城 竹中重治
1562年 4月上旬
恩智殿の説明を聞き終え、最後に楠木家の分国法【楠木太平法度之次第】の写しと忠告の言葉を頂いた。
恩智殿曰く「殿がお伊勢様の名を持ち出して話された事象は悉く実現しており、そのお言葉には真剣に従う事を勧める。」との事だった。楠木領では殿がお伊勢様の神子であり、神仏の如きお力をお持ちである事は周知の事実であり、現人神として信仰の対象になりつつあるらしい。
ここからは我らにも関係している事だが、基本的に楠木では従属勢力を含め人質は取らず、神仏の力による強制力を持つ誓約書に記名血判し、お伊勢様を見届け人として契約をする。そして破れば即日天罰が下る。制約の主な内容としては分国法の順守と、楠木家を裏切らない事を求められる。当然ながら神仏が見ている為、誤魔化す事も、隠ぺいする事も不可能となっている。
「(とは言え、真面目にお仕えすれば良いだけですので、問題はありませんね。)ふむ…ここが恩智殿に紹介頂いた宿のようですね。」
我らは殿の計らいにより宿の一角を貸し切りとして頂いた事もあり、人目を気にする事なく、疲れを癒す事が出来た。
「…と言う訳で稲、殿のご忠告は間違いない事らしい故、婿殿の食事や日々の運動などの管理は頼んだぞ。儂は久徳城と周辺一万石を頂いた故、皆でそちらに移動せねばならん。お前が儂の代わりに厳しく管理してくれ。」
「畏まりました、父上。半兵衛様を早死にさせる訳には行きませぬ故、心を鬼にしてでも言い付けは守ります!」
そこまで気合を入れずとも良いのですが、稲も心配しての事なので、否とは言えませんし、お手柔らかにお願いしますよ。




