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戦国太平記 〜大きな楠の木の下で〜  作者: 流星群
上洛編

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第46話 観音寺騒動Ⅵ

 ※PCが急に故障した為、投稿頻度に影響が出るかも知れません。スマホでの執筆の為、打ち込み速度も遅く、話が少し短くなっています。

 以上、ご了承ください。

◎近江国・観音寺城 細川藤孝

 1559年 8月中旬


 私の言葉は六角様…いや、六角義治には届かない。この男は六角家当主としてだけではなく、武士として…そして人として許容することは出来ない。


 先の楠木様との会談の折にお聞きした話を、私は大袈裟に仰られたのだろうと思っておったが、一言一句間違いなく、過大に仰られた事ではなかったのだ。


「よし、そろそろ頃合いだな…おい!あの木戸何某とやらを呼んで参れ!」


 義治が部下に木戸と言う者を呼んで来るように命じている。


「御屋形様、木戸様は御屋形様の命で朝方に偵察に出られておりますが…」


「なに?!そんな事は命じておらんぞ?!では、城外へ逃れる手筈はどうなっておるのだ?!」


(なるほど…通りでこの期に及んで義治が余裕の態度を崩していなかった訳だ…。が、木戸何某とやらは逃げ去り、予定が崩れたようだな…では私も…)


 そろそろ潮時だと感じた私は密かに城外へ退去する支度を始める。今であれば城外へ壺を運び出した者らが戻って来ていない為、城門は人が通れる程度が開いたままだ。


 顔を青くし、慌てている義治を尻目に城門の隙間から城外へ脱出すると同時に、楠木様の軍勢の方から大きなどよめきと共に強大な大気のうねりを感じる。


「っく!!(なんだ?!この圧迫感は…それに楠木勢の楠木様のいらっしゃった辺りから空気が重くなっていく…これは不味い!)」


 更には地面が僅かに振動を始めた。


「ん?結界魔法も目覚めたか…丁度いい…皆の者!!」


 楠木様の声に反応して声の方向を注視すると、信じられない事に軍勢の中から一人の人間が空中へとゆっくり昇って行く。


「そこな子供たちを連れて10間ほど下がれ!」


 楠木の諸将は迷う事無く楠木様の指示に従い10間ほど後方に下がる。斯く言う私も楠木勢に紛れて同様に下がる。


 その間にも楠木様は上空へと昇り続け、5間程度上空で動きを止められた。そうしてその場所で拳を握り込み胸の前まで持って来ると握り込んだ拳の中が輝きだす。


「【慈愛じあいおり】…」


 そうして掌を広げ腕を前に突き出すと、上空から落ちて来た巨大な杭が本丸の周りをぐるりと取り囲むように地面に突き刺さり、その間を隙間なく電撃が取り囲んだ。



◎近江国・観音寺城 六角義治

 1559年 8月中旬


「んなっ?!あっ、あれは一体どういう事だ?!何故なにゆえ人が空を飛べるのだ?!そっ、それに、空から落ちて地面に突き刺さっているあれは…杭…なのか?そして雷が城を取り囲んでおる…なに…が起こっておる?!」


 目の前であり得ない事が起こっている。朝敵楠木の当主が空に浮かび、更には空から巨大な杭を落とし、雷で城を取り囲んでおる。


「我は…いったい…何を相手に戦…をして…おるのだ?まさ…か…本当に彼奴あやつは…んくっ…神仏の…いっ、いやそんな事はあり得んぞ!あってたまるか!!」


 幾ら否定し、強がってみても目の前で起きている事は事実であり、彼奴が神仏であろうが、現身うつしみであろうが、それを起こせる力を持っている事に変わりは無かった。


 次々と目の前で起こる理解不能な出来事に頭は考える事を拒否し、我を含め多くの者は呆然と立ち尽くす。


「さて、城を取り囲んでいるその檻は【慈愛の檻】と言う。一定以上の悪事を働いた者が触れれば雷撃に焼かれ消し炭になる。これから半刻の時間をやる。自らの生き様に恥じ入る事の無い者は、その雷撃に飛び込み自らの生き様を示すが良かろう。そして無傷で出て来た者には一切の手出しはしないと約束しよう。」


 奴の言葉に希望を見出す者が僅かにいるが、飛び込むほどの勇気のある者はいない。


「…更に…」


 奴が人差し指を前に立てると指先に光の玉が浮かび上がり、玉の周りを雷がほとばしり辺りの地面を焼き、木々をなぎ倒し雷鳴が辺りに響き渡る。


 敵も味方も目の前で起きる奇跡を目の当たりにし、身動き出来ずにいる。そうして奴が立てた指を頭上に掲げると、「轟雷ごうらい。」と呟く。


 すると指先にほとばっていた雷は天に向かって走り、空には巨大な何かの模様が浮かび上がった。


「半刻後、この山の一帯は無数の雷撃…落雷によって草木一本残らぬ地となろう。死にたく無くば【慈愛の檻】を脱して、山の麓まで走れ。まぁ、出る事が叶えばな…そして最後に義治(ゴミ屑)、貴様はこの世に髪の毛一本残さぬよう、念入りに掃除してやる。」


 奴の抑揚のない淡々とした喋りに、これまでに感じた事のない恐怖が背筋を突き抜けた。その瞬間俺は恥も外聞もなく、両手をつき頭を地べたに擦り付け、許しを乞うていた。


「た…助けてくれ…もう二度と…このような真似はしない…出家して二度と目の前に現れん故、どうか助けてくれ…頼む。」


「全軍、急ぎ麓を目指し撤収せよ。賢秀、指揮は任せた。」


「はっ、はい、畏まりました。」


 奴は俺の言葉を聞こうともせず、全軍の撤収を命じ、楠木勢は粛々と実行していく。


「聞こえているのだろう?!何故答えない?!」


「はぁ…馬鹿かお前は?なぜ俺がゴミ屑の命を助けないといけないのだ?それに貴様の物言いは人に物を頼む態度か?大体、宗智の勝ち取った和議の約定を、嬉々として破ったのは貴様だろうが。」


「そ、それは…」


 全て事実のため、反論の余地は無い。俺は何とか助かりたい一心で、あれやこれやと理屈をこねるが、最終的には、「貴様が何をどう言い訳しようと、俺は貴様を許す気はない。轟雷が降るその時まで自らの行いを顧みて、後悔して死ぬがいい。」と言葉を残し、空を飛んでその場を立ち去って行った。





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