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戦国太平記 〜大きな楠の木の下で〜  作者: 流星群
上洛編

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45/52

第45話 観音寺騒動Ⅴ

※PCが急に故障した為、投稿頻度に影響が出るかも知れません。スマホでの執筆の為、打ち込み速度も遅く、話が少し短くなっています。

以上、ご了承ください。

◎近江国・観音正寺~観音寺城 楠木正顕

 1559年 8月中旬


 次の日の朝、出来上がった本陣の天幕の外から観音寺城の本丸方面を眺めていると、賢秀が姿を見せた。


「若殿、ここは観音正寺…一応寺ではありますが、観音寺城の城郭の一部でもあります。いつ敵が現れるか分かりません、天幕の中にお下がりください。」


 一応賢秀ら宿老衆にも俺の戦闘力については実演を交えて説明をしているのだが、それとこれとは話が別のようだな。同様のことをよく満和にも言われている為、大人しく天幕の中に入る事とした。


 中には元六角家の六宿老が揃い踏みで俺の事を待っていた。この後すぐに観音寺城に対して攻勢を掛けるのだが、その作戦についての確認だ。


「それでは予定通り、本体以外には本丸前まで攻め込んでもらいたい。我ら本体も義治を挑発しながら城門前まで進軍する。その上で城内にいる無関係な女子供を場外に出すように呼び掛ける。」


「しかしそれでは、避難する女子供に紛れて義治が逃げ出さないとも限りませぬ。」


 平井定武が懸念を表明する。


「それは大丈夫だ。俺に秘策があるので任せて貰いたい。それよりも現時点でも参道や獣道などの道も押さえているのだな?」


「はい、本体以外の兵で山の麓を大きく囲んでおりますので、人っ子一人逃げられません。」


「では、各人持ち場に戻って半刻後を目処に戦闘を開始してくれ。」


 作戦はこうだ。麓へ至る4ヶ所の山道を全て封鎖し、徐々にその網を狭めて行き圧迫していく。月夜見からの報告の通りであれば本丸手前位までは放棄している可能性が高いが、慎重を期してこの作戦となった。


 賢秀は俺の補佐として本軍に残り、平井、後藤、三雲は別働隊をを率いて作戦を実行していく。


 そして半刻後、予定通り4部隊同時に進軍を開始した。この観音寺城は城郭の規模が大きく、多くの曲輪、出曲輪(出城)で構成されている。故に通常であれば相当の被害を覚悟で攻城するか、時間をかけて兵糧攻めにするかとなる。


 しかし、今の義治の戦力では全ての曲輪、出曲輪に兵を配置して守るには兵数、指揮官共に不足している為、ほとんどの曲輪、出曲輪を放棄している。その証左に一度も敵兵と遭遇していない。かと言って油断していい筈もなく、石橋を叩いて渡るが如く慎重に事を進めた。


 そうして夕刻に差し掛かった頃、すべての部隊が本丸前の城門に到着した。


 到着した時間帯が夕刻という事もあって、一旦少し下がった場所にある平井丸と呼ばれる出曲輪で夜を明かす事とした。


 そうして一部の部隊を見張と包囲の為に残して撤収しようとした矢先、城門横のやぐらから威風堂々を装って義治が登場した。


「おぉ、そこに見えるは朝敵の血筋たる楠木ではないか?!将軍家よりお越しの細川殿の仲裁を恥ずかしげも無く断るとは…見下げ果てた行為よのぉ…」


 義治は下卑た笑みを浮かべながら、見当違いも甚だしいことを言い放つ。


「おぉ、そこに見えるは先の戦の折、俺の威圧に恐怖して小便と糞を漏らして震えておった六角…六角何某殿ではないか?余りの情けなさに顔は覚えておるが、名が出てこぬわ…本当に申し訳ない。」


 本当に申し訳なさそうに頭を下げた。一瞬の空白の後、両軍から失笑が漏れる。義治は顔を赤く染めて怒り浸透のようだが、自分から喧嘩をふっかけておいてこの程度とは情けない。


「ところでお主のような小心者がこのような所に顔を見せるとは、どういった了見だ?」


「っく?!…まあよい…昨今のお前の評判を聞いてな…何やらお伊勢様の神子やら、現人神やら、はたまた豊穣の女神などとも呼ばれておるらしいのぉ。確かにお主のように女々しい見た目では女神と呼ばれるに相応しいやもしれんの。」


 コイツのような奴がわざわざ危険を侵してまでこのような前線にまで出張って来るとは何かあるに違いない。


「クックック…慈悲深い神子様がこの状況でどのような行動を取られるのか…気になるのぉ。」


 そう言って義治が右手を上げると僅かに城門が開き、数人の幼い子供たちが中から出て来た。


 このような戦場の、しかもも前線に年端も行かない子供が現れた事に怪訝な表情を浮かべていると、義治が得意げに喋りはじめる。


「その童共わっぱどもの両親は我の監視下にあっての、其方に一太刀でも浴びせる事が出来れば親を解放してやると言い含めておるのよ…ククク、どうだ、面白かろう?」


 余りの下種な考えを得意げに話す義治を見るにつけ、怒りを通り越して殺意が芽生える。


「六角様っ!!これは如何なる仕儀でありましょうや?!両親を人質に取り、その上で幼い童を下種な取引で焚き付け、楠木様に斬りかからせようとは…六角家当主の振る舞いでは御座いませぬぞ!!」


「黙れ!!其方が予定通り、楠木との和睦を取り纏めておれば、ここまでせずとも良かったのだ!!さあ童共、さっさと斬りかかるのだ!!」


 義治の命令に子供たちは逆らう事が出来ず、小刀を手に俺を目掛けて駆けて来る。賢秀が俺を守ろうと割って入ってくるが、手で制して両手を広げる。


「おいガキ共!こっちだ!」


 通常であれば俺に傷一つ付けられる訳は無いのだが、限界までオーラと魔力を抑えた為に今の防御力はギリギリ子供達でも傷つける事が出来る位にはなっているだろう。


「っ!」


「若殿っ?!」


「来るな!」


 派手に傷つき血が出ているが、薄皮が傷ついた程度で多少の痛みはあるが、特に問題は無い。


「あははははっ!流石の神子様も童共相手では本気になれんようだな?まったく、お優しい事だなぁ?!下賤の者どもの為に身を晒すとは、理解に苦しむわ!」


 血だらけになった俺の姿に心の底から愉悦を感じたのか、大口を開けて笑い出した。


「おい、六角何某!約束通りガキ共の両親を開放しろ!!細川殿っ、連れだして頂けますか?!」


「分かり申した。六角様!」


 俺たち二人の遣り取りの何が壺に嵌ったのか、腹を抱えて笑い始めた。


「何が可笑しいのですか?!約束通り、童たちの両親たちを開放してください!」


「クックックック…いやぁ…お前たちの余りの滑稽さに、心の底から笑わせて貰ったわ。はぁぁぁ…しかしまぁ、そろそろこの催し物にも飽きて来たのぉ…おい!」


 義治が再度右手を上げると城門が少し開き、中から三つの大きな壺が運び出された。


「くっ…貴様っ…まさか…」


「くはははは…その()()()だ…あははは!!」


 運び出した者共によって壺が割られると、中からブツ切りにされた人が出て来た。


「か…かあちゃ…ん?」「父ちゃん!」「おっか…」「…」「おとお…ちゃ」


「な…何と言う事を?!それでも貴方はっ!!」


 細川殿が怒りの声を上げるが、その声も届かぬ程に俺の怒りは限界を超える。義治に対しての怒り、そして何より先の戦で義治を見逃した己の甘さに対しての怒りであった。






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