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戦国太平記 〜大きな楠の木の下で〜  作者: 流星群
上洛編

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43/52

第43話 観音寺騒動Ⅲ

※PCが急に故障した為、投稿頻度に影響が出るかも知れません。スマホでの執筆の為、打ち込み速度も遅く、話が少し短くなっています。

以上、ご了承ください。

◎近江国・小谷城 浅井賢政

 1559年 8月上旬


「若殿っ!くっ楠木が六角領へ侵攻いたしましたぞ!」


「そうか…よし!この機に乗じて我らも六角へ攻め込むぞ!」


 喜右衛門(遠藤直経)の報告に俺の心は湧き立つ。


「若殿、お待ちください。それはなりません!いま攻め込めば、楠木と事を構えることになりかねません!」


「何故だ?!楠木は関係なかろう?!」


 喜右衛門の予想外の言葉に理由を問う。


「六角の蒲生を筆頭に六宿老全員が楠木に降り、観音寺城周辺の数城以外の六角領が全て楠木に臣従したのです。」


「っ?!バカな…あり得んぞ?!なぜその様な事に…。」


「詳しい経緯は分かりかねますが、現当主の六角義治が父である承禎公と弟の義定、蒲生…快幹軒宗智を殺害し観音寺城を掌握した由…そしてこれに反発した六宿老が六角家から離反し、殆どの家臣もそれに追従した様です。」


「…そうか…口惜しいが、楠木と事を構えることは出来ぬ…こうなれば、何としても楠木と盟を結ぶ他あるまい。今の状況であれば、評定で反対した者らも反対する事もあるまい…。」


「確かに反対はせぬでしょうが、正直に申せば遅きに失した感が否めませんな…現時点で対等な同盟関係を結ぶことは叶わぬでしょう。」


 その様なことは俺も承知しているが、このまま放置すれば確実に浅井は滅びる。朝倉家が本腰を上げてくれればもしやとも思わないでも無いが、一向一揆の事もあって頼りにはならないだろう。


「喜右衛門の言は尤もなれど朝倉が頼りにならない以上、最悪…従属してでも家名を残す必要がある。」


「それは…ご隠居様にご納得頂けましょうや?」


「納得頂かねば、それこそ浅井は終いよ…。父上の説得は俺がする…喜右衛門は楠木への使者を頼めるか?」


「畏まりました。準備をした後、早急に出立致します。」


 喜右衛門が下がり俺は一人考える。


(従属の条件…聞くところによると所領半国の献上…だったか?厳しい条件ではあるが、滅びるよりは良い…。)


 六角から独立し、これからという時にこの様な厳しい状況に追い込まれてしまった。正直に言えば自分よりも年下の男に膝を屈するような真似はしたくは無いが、浅井のことを考えれば、これ以上の妙案は浮かんで来ない。


(はぁ…内にも外にも頭の痛いことだ…それにしても当主とは名ばかりだな。ひとつの事においても自分の思い通りにならず、一々父上にお伺いを立てねばならぬとは…然りとて、父上の説得に向かわぬ訳にも行くまいな…。)


 自分自身の情けない状況に愚痴ばかりが浮かんでくるが、投げ出す訳にもいかず、重い足取りで父上の部屋に向かうのだった。



◎近江国・観音寺城 六角義治

 1559年 8月上旬


 宗智の讒言ざんげんに惑わされた父上をしいたてまつり、傅役の立場を利用して父上を惑わせた宗智と、我の立場を奪わんと狙っておった邪魔な弟を殺した。


 そうしてやっとしんに六角家を建て直し、お爺様(六角定頼)の頃のような権威と敬意を集める六角家を取り戻す予定であった。しかし現状は思った通りには推移していなかった。


「何故だ?!なぜ理解出来ぬのだ?!我の進む道の先に六角家の栄光が…お爺様を超える程の権威を得る道が我には見えておると言うに、どうして我に逆らおうとするのだ?!なぜ従わぬ!!」


 自らの行いの正当性を態々(わざわざ)直筆にてしたため、その文を主要な家臣に送り、観音寺城へ参集するよう命じた。にも拘らず、蒲生などの宿老衆を筆頭に殆どの家臣が日和見を決め込み、あろう事か最終的には楠木へと降ってしまった。


 思い起こす度に怒りが湧いてきて周りの物に当たり散らし、刀を振り回しておると、辺りは惨憺さんたんたる状態になっていた。


「ハァ…ハァ…ハァ…。元はと言えば楠木のような朝敵の血筋の者が我に逆らい、我のことをおとしめたことが原因ではないか…浅井にしても楠木にしても下賎な血筋の者どもは地に頭を擦り付け、我に従って居れば良いのだ!」


 徐々に落ち着きを取り戻していた気持ちが再度怒りに支配され始めた時、廊下を足早に音を立てて歩き一人の男が入ってきた。男は我の檄文に答え味方として城に入ってきた者で、名は…覚えておらん。下賎の者の名など一々記憶してはおらんわ。


「御館様…種村殿、建部殿共に籠城の支度を完了し敵を迎え撃つ準備が整ったとの事です。また、お二人の籠もられる城に向けて楠木の軍勢が迫っておるとの報告が上がってきております。」


「そうか!それは重畳だな…両名には可能な限り時間を稼ぎ、その上で城を()()()()と伝えよ。よいな?()()()()…だ。」


(このままでは六角も我自身の身も危うい。少しでも時間を稼いで…そうか?!こういった時こそ将軍家の力を利用すべきではないのか?将軍家に仲裁に入って貰い、立て直しの時間を計れば…。)


「誰かある!」


 我の呼びかけに恐る恐る小姓が顔を覗かせる。


祐筆ゆうひつを呼べ!将軍家へ書簡を送る。」


「畏まりました、直ちに呼んで参ります。」


 小姓は我の命に素早く反応し祐筆を呼びに向かう。そうしてしばらくすると祐筆を連れて戻ってくる。


「将軍家に書簡を送る。内容は現在侵攻してきておる楠木との和睦の仲裁依頼だ。早急に書き上げ持ってくるのだ。また、花押を記載したらすぐに走ってもらう故、使者の手配もせよ。」


 我は自身の妙案を形にすべく次々に指示を出す。そうして全ての指示を出し終えると準備させた茶を啜り、自ら立てた妙案に満足してほくそ笑んでいた。





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