ラビィが誘拐された日 4
「 ここら辺のはず」
「お前きたこともないのによく堂々と、先頭をきれるな。」
ジークから何やらそんな事を突っ込まれるもマルっと無視してさっさと歩く。
表通りから、一度1つ裏道をはいると、そこは別空間だ。
表の爽やかな通りに反して裏は、少し排他的で薄汚い感じがするが少しハードボイルドな感じがして、好奇心が刺激されるのは、仕方ない。
しかし、裏道を奥に進むほど、怪しくなっていく。
きっと、どんな国でも一緒なのかもしれない。
そんな裏通りを躊躇せず先に進む和樹はやっぱり、案の定。
「なあ、そこのにいちゃん。こんなところに何の用だい?」
と定番の絡まれるたのだった。
しかし、こんな危ないシュチュエーションだが、ここには、頼もしい助っ人。
自称B級冒険者のジークさんがいる。
「助さん。ジークさん。やって仕舞いなさい。」
「助さんって誰だよ」
っと突っ込みが入ったが、異世界人にしか通じないネタを言いながら、訳が分からずもやっつけてくれるジークは、案外ノリのいい人である。
「もう、許してくれ」
倒れていた男の襟を掴んでちょいと、顔を持ち上げると、男は慌てだす。
「いや、そんな怖がらなくても印籠とか出しませんよ」
「いや、印籠ってなんだよ」
またもやジークさんからツッコミが入るがマルっと無視をして。ここは、ハードボイルドっぽく。
「ちょっと、この地区の偉い人のところに行きたいんだけど、連れて行ってくれるかなぁ?」
っと聞いてみたが、腹黒系に何故かなってしまったのは、和樹だからだろうか?しかし
「その必要はないよ」
っと和樹の言葉を遮るように発せられた言葉に振り向きその主を探すと、その人物は、杖をついた老婆だった。
和樹はゆっくりと、老婆を眺めると、推測する。
きっと、彼女がこの地区を纏めてる一人だと、だから和樹は、魔道書で習得した王族の気品を意識し、挨拶をして敬意をあらわすことを一番最善だと思い行動に移す。
まだ商人風の格好をした自分は少し小綺麗でしかし下町にいても違和感はない格好だ。
だから、そんな雰囲気を取り払うように少しの仕草も優雅に普通の服でさえまるで絹のように普通の装飾も華美に見えるよう。できるだけ優雅に丁寧に腰をおる。
「お初にお目にかかります。今は、商人をやっています和樹と言います。代表の方でよろしいでしょうか?」
そういうと、優しく微笑む。周りでは息を飲む声が聞こえる。
「ふふふ。こんなババアにそんなに丁寧に挨拶してくれたのは、あんただけだよ。面白いね。ついてきな。」
どうやら、正解だったようでにやっと老婆は、笑うと和樹を連れてある家に案内してくれた。
「今は、忙しくてね。まあ、座りな」
案内された部屋は、布で仕切られあまり周りが見えない。
和樹が椅子に座るのを見届けると、老婆を守る様に数名が和樹の後ろに立つ。
「すまんね。こっちは、貴族様には逆らえないけど、保険だ。許しておくれ」
貴族?っと思いつつ「大丈夫です」っと返しておく。
「で?なんか用件があるんだろう?うちのを捕まえて」
そういうと背もたれにどっかりと腰を預けた老婆は、探るような目でこちらを貫く。
「申し訳ありません。こちらも急いでいましたので、少し手荒な態度を取らせていただきました。」
「ああ、構やしないよ。金を儲ければなんだってやる連中だからね。捕まるのも自業自得ってやつでね。ただ、あまり無法過ぎるのも考えもんだから、私がある程度纏めてるだけだ。この国を追い出されたら困るものばかりだからね。で。話があるんだろう?」
謝った事でさっきまでの刺すような視線を飛散させると、話の先を促す。
「はい。今日大事な本を盗られてしまいまして、ただの本なら良かったんですが」
「あの喋る妖精みたいなのが付いている魔道書かい?」
「ご存知なんですね。」
「ああ、たまに裏の鍛冶屋にあんたじゃない剣士が連れてきてるやつだろう。隠すにしてもあれでは目立ち過ぎるローブで顔を隠してるが逆に目立つしな。注意しときな。」
「ははは。あいついつの間に・・・・。」
ちょっと、顔が引き攣りそうになったのは、仕方ない。抜け出してる浩輔が通う鍛冶屋も気になるが、先は、
「ご存知なら話は早いんですが、その本が盗まれまして、取り戻したいんです。」
視線をぐっと上げしっかりと見つめると次を紡ぐ。
「・・・見張っているんですよね?」
誰をと言わない和樹に不敵な顔で見つめる老婆は、
「いくら出す?」
「僕のポケットマネー程度でよければ」
そういって和樹は、ここに来るまでに取ってきたお金を取り出すが、老婆は、袋を開けるとまた厳しい目で睨む。
「情報だけなら、多過ぎるよ。それとも別に何かさせようというやつかい?」
「いえ、これは、情報とこれからのもしかしたらの時の顔繋ぎだとおもって貰えれば」
「へぇ、いうねぇ。上客になるってことかい?」
「もし、よろしければ」
「貴族なのにあんた変わってるね」
「貴族じゃないですよ。唯の小僧です。」
肩を竦めてニコッとわらって言うが、老婆には、冗談に思われたようだが、そこは面倒くさいので否定しない。それに最初に商人って言ったしな。そんな事を考えていると
「あんた気に入ったよ。いいだろう見張ってる仲間を一人呼び戻す。待ってな」
いい返事が貰えた。
「ありがとうございます。」
そういうと、チラリと後ろをみて、微笑むと老婆はどこかに消えていった。
「まさか、ばあさんに気に入られるとは・・・。」
そう後ろに立っていた静かにジークが、呟いたのを和樹は気づかなかった。
部屋をでると、電気もない廊下が続いている。今は、後ろに立っていた男にそのまま別の場所に案内されている。やっぱり、中にも人は居るもんで、何人かこちらを見つめるやつが居たが絡まれってこともなく。
別の部屋に着くと、「ココで待っていてくれ」っとお茶を出された。
入ってきた男は、中にいた和樹達をみて一瞬何故か戸惑った顔をしながら、和樹に報告をする。
少し話を聞いた和樹は呆れた。
「じゃあ、要点をまとめると、一旦自力で逃げたのに少年の持っていたお菓子に釣られて付いて行って、また誘拐されたっということですか?」
「まあ、そういうとだな」
ため息というか、深く深くラビィをど突きたい衝動に駆られる和樹だが、また攫われたと言うのだから、いまは、それどころじゃない。
それに
「その少年は?」
「我々が連れて帰ってきた。まだ意識は戻っていないというか、そのほんの精霊とやらが回復を最後にかけたらしくてな。深い傷は治ったんだが、回復魔法を使える奴が居なくてな。このままだと、いつ意識が戻るかわからないぞ。それでも会うか?」
「はい」
和樹は、ヒールをかける。
回復魔法は、この世界にも出来るものとできないものがいるが、幸いな事に和樹は異世界人の恩恵か、使えない属性が無かった。
少年の火傷はみるみる跡形もなくなくなっていく。
男から話を聞くと、少年はラビィを守ってくれたらしい。
初めてあったラビィを守ってくれた少年を、死なせるなんて出来るはずがない。
それに、ラビィが自分が逃げるより彼を助ける事を選んだのだ。これで助けないなんて和樹には無理だった。
「おい。とりあえずもう大丈夫だから、ちょっと、休憩しろ」
ジークが止めるが
「あとちょっとだし、男の子でも顔に火傷は可哀想ですし、早くしないと跡が残ります。」
「わかってるが、お前が倒れるぞ」
そういわれても、和樹に辞める気はない。
傷が全部消えて、少年の呼吸が落ち着くまで和樹は何回も回復魔法をかけ続けた。
しかし、限界が近かったのか少年が落ちつくと和樹もジークに任せて倒れるように横になった。
《魔力を使いすぎたかもしれないラビィが待ってるのに》
他にも考えることが山積みで不安に思いながら、しかし、魔力不足に抵抗出来ず和樹は目を閉じた。
「ここは?」
クオンは、目覚めると知らない部屋にいた。
隣には知らない男が、自分を看病していたのだろうか。見つめていた男はすぐにクオンが起きたことに気がつき安心させるために微笑む。
「俺は、ジークフリートと言う。冒険者だ。お前自分がなんでここにいるかわかるか?」
その言葉を受けて自分が何故ここにいるかを考える。
クオンは、朝から母に今日は帰れないからと、お金とお菓子を作ってもらいその後遊びに外へ出た。途中でお弁当を食べて帰りに母に作ってもらったお菓子を食べながら帰っていたら、そうラビィにあったのだ。明るく面白い天使様。
そして、ラビィを家にさそってラビィを家に送っていく途中で・・・・。
「ラビィ!!ラビィは?おじさんがラビィをどこかにやったの?」
慌てるクオンに
「落ちつけ、攫ったのは俺じゃない。ラビィっていうのが確か和樹がいってた魔道書の精霊だよな?さらった奴は見てないのか?」
「和樹?そういえばラビィが、和樹って人のところに帰りたいって、おじさんしってるの?」
「おじさんって・・・。まあ、和樹なら、そこのソファで寝てるよ。まったく、大物だよ。こんな敵だらけの中寝れるんだから」
っと別に言わなくていい愚痴までこぼしつつ近くにあったソファを指差す。
そこには、ちょっと顔の青白い黒髪の少年が寝ていた。
言われてそろりと近づき覗き込む。
「あのお兄ちゃん?」
クオンは、ラビィから聞いた。寂しがりやでラビィが居ないとダメな和樹のイメージと結びつかなくて困惑していたが、その顔を見てジークは、和樹を心配していると勘違いして、現状を話し出す。
「ああ、お前は、倒れてからここに運ばれてたんだが、火傷が思ったより酷くな、和樹が、火傷治すために倒れるまで魔法を使いまくって助けたんだ。だからな、急いでるだろうが。もうちょっと寝かせてやれ。あれでも昼前からラビィって子探すためにすっげえ無理してるはずだからな」
最初に初めて会った時のあの慌てようからして、まだ子供の雰囲気があったのに、今日1日で、大人と対等に渡り歩く度胸をみせた。今日一日中どんだけこいつは頑張ったのか。それは、今日初めて会った自分にはわからないかもしれないが、どんな風に育ったらこんな大人のような子供が出来上がるのかが、ジークにはわからない。
だだ、ジークが思ったことは、今日一日一緒にいて、退屈なんてしなかったことだ。
規則正しい寝息をたてながら、蒼白かった顔が少し元に戻ってきたような気がする。つい、子供を褒めるように頭を撫でてやると、瞼が揺れた。もう起きるだろう。
ジークは、その目が開くのを待った。
次は、6/27です。




