第23話 正体
「神とは……こんなに安いものなのですね」
ルクさんは笑ってそう言った。
私はその笑顔に疑心を向ける。
「ルクさん……どうして……」
「どうして、とは?」
「とぼけないでください。ヒトミちゃんのクロノスの涙取ったでしょう?」
「はい」
一切、悪びれる様子のない言葉だった。
「なら、もう1個は……」
「アイさんからいただきました」
あのアイちゃんが素直にクロノスの涙を渡すわけがない。恐らく、何かしらの脅迫をしたのだろう。
「どうして……」
「あなたを愛してしまったからです」
その一言で思わず顔を上げる。あまりにも場違いな言葉だった。
「レンゲはこの世界をゲームだと言っていました。そのあたりについては理解していますし、ワタシも思い当たる節がありました。それならば元凶がいるはずだと思ったのです。このくだらない悲劇を繰り返している黒幕が。まあ、案の定、そこで灰になった神様でしたが」
ルクさんは続けた。
「そしてこの世界には、通常では存在しない異物が紛れ込んでしまった。それがワタシとあなたです。ワタシ、実はゲーム制作時に取り除かれるはずの存在、所謂『裏ボス』というやつだったのです。ですがワタシは逃げました。だって勝手に生み出されて勝手に不要だと言われたんですよ。不快でしかないじゃないですか。だから逃げて隠れて、商人としての存在だけにされた隙を狙って入り込んだんです。そしてそこに、あなたという異物が紛れ込んだ。本来、このゲームのヒロインはアイとヒトミの2人。けれど、あなたもなぜか召喚されてしまった。クロノスが雑な仕事をしたせいでしょうね。だからこの世界は、あなたを危険な目に遭わせ続けた。あなたを排除するために」
確かに最初からずっと私はこの世界に歓迎されていなかった気がする。王様に狙われたりサラマンダーに襲われたりひどい目に遭ってばかりだった。
「……違和感はあったんです。でも、追及する勇気はなかった」
ルクさんにすべてを話したのが間違いだったのだろうか。今となってはもはやわからない。
「……私を助けたのは、打算、ですか?」
「そうですね。利用するつもりでした。最初から」
「ひどい……!」
涙が落ちる。でも、私には泣く権利もないのかもしれない。
「ですが」
ルクさんが俯いた私の顔を優しい手つきで上を向かせた。そうして目が合う。
「本気になってしまったのです」
「え?」
その言葉の真意を理解する前に神の間が揺れ始めた。崩れると思えるくらいの大きな揺れだった。
「つかまって」
ルクさんは私を抱きしめるとそのまま転移魔法で別空間に飛んだ。




