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【完結】巻き添えで異世界召喚された私を助けた商人が、なぜか世界を敵に回している ~どうやら私は、世界より愛されているらしい~  作者: 近藤 博愛


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17話 髪飾り

 昨日の夜、ルクさんは「少し調べたいことがありますので」と出掛けて行った。

 私はエクリプス様とスティルテくんに護衛されつつ魔法の入門書を読んでいる。

 この世界の魔法はそれぞれ属性があり、基本的に適性のある属性の魔法を使うのが一般的だ。ゲームの知識だが、冒険者の中にいる魔法使いを見ていてもそこは同じだと思う。


(ルクさんは例外……?)


 ヒトミちゃんとアイちゃんが複数属性の魔法を使えるのは別におかしくない。ゲームでもそうだった。

 でも、ルクさんはどうだ。

 少なくとも、初めて会った時の目くらまし――要は幻影の魔法は闇属性の魔法で、サラマンダーを倒した時は水属性の氷魔法。

 極めつけは


(転移魔法……)


 この本によれば、転移魔法は高位の魔術師が複数人で使うものらしい。そして属性は光だ。


「エクリプス様、お尋ねしても良いですか?」

「魔法のことなら我よりもスティに尋ねよ。ダークエルフは魔法に詳しい」

「スティルテくん」

「呼び捨てにしてください。それか陛下と同じく『スティ』と」

「無理です」


 軽くじゃれ合ってからスティルテくんに尋ねる。


「複数属性の魔法が使えるのは特別な存在だけですか?」

「私の記憶が正しければ勇者や聖女、あるいは異世界からの召喚者などは複数属性の魔法を操る方が多いですね」

「例えばなんですけど、闇属性と光属性の両方を使えるなんていうのは?」

「記憶にありません。8千年前に現れた勇者はほとんどの属性を使いこなす魔法剣士でしたが、闇属性だけは適性がなかったようです」


 つまり、ルクさんはやはり特別なのだろう。もしかすると実は開発側で本当にルクさんが攻略対象だった設定があるのかもしれない。

 ルクさんは最近、私にものすごく甘い。優しいのはいつものことだが、どこかに出かければ必ずお土産を買ってきてくれる。この前もらったネックレスはトップに金色の石がついている、とてもきれいなものだ。

 そして極めつけは夜。あの夜以降、私はルクさんと一緒に寝ている。というのも、ルクさんが私を抱き枕にしていると言った方が正しいかもしれない。恥ずかしいけれど、嫌ではない自分もいて、もしかしたらルクさんは私が好きなのだろうかと考えてしまうほどだ。

 不意にスティルテくんが顔を背ける。その耳が赤い。もしや私、ものすごく恥ずかしい顔をしていたのではないだろうか。


「スティルテくん」

「……はい」

「私、変な顔してました?」

「いえ……むしろ、愛らしいと言いますか」


 推しから突然「かわいい」と言われた。一気に顔が赤くなる。


「スティルテさん、レンゲから離れてください」


 冷えた声が割って入ってきた。ルクさんは私とスティルテくんの間に入ると私の肩を抱き寄せた。

 ひえ、と思う。ルクさんは控えめに言っても顔面が強い。本当にかっこいい。そんな彼が私と推しが近いことで嫉妬しているように見えてしまった。

 顔が熱い。まさか、ルクさんに限ってそんなことないだろ、と冷静に自分を落ち着かせる。


「レンゲ、お願いがあります」


 ルクさんが私の肩を抱いたまま言う。


「なんですか?」


 その距離感にも慣れ始めている自分がいた。


「髪を切ってください」

「え? 本気だったんですか?」

「ええ。前髪だけでも整えて頂けると助かります」

「まあ、いいですけど」


 準備を整えてルクさんのところへ戻る。櫛とハサミを手に、ルクさんの前に立った。


「じゃあ、はじめますね」

「ええ、お願いします」


 櫛でルクさんの髪を梳かす。さらさらとした髪だが、やはり男性の髪だけあって少しだけ太い。

 指で毛先をすくって少しずつハサミを入れていく。視界の邪魔にならないようにちょうどいい長さまで整えた。

 切り終えてからルクさんの髪が金色になっていることに気付いて「え?」と声が出てしまった。


「ああ、すっきりしました。ありがとうございます」

「あの、ルクさん……髪の色……」

「もうアイテム屋の人間であると偽る必要がなくなったということなのでしょうね」


 私よりもルクさん本人の方が落ち着いていた。


「準備ができました」

「なんのですか?」

「あなたと生きていくための、ですよ」


 思考が止まる。

 ルクさんは金色の石がついたピアスと髪飾りを差し出した。


「この世界では、婚約を申し込むときに耳飾りと髪飾りを贈る風習があります。魔力の宿る髪を守り、これからを生きる人生を象徴するもの。耳飾りは2つで1つ。対になる装飾品なのでふたりが並んで生きていくことの象徴になるものです」


 実は、大学デビューでピアスを開けていた。ルクさんはそれに気付いていたようだ。

 脳みそが現実逃避をしている。けれど、ルクさんは穏やかな微笑みで続けた。


「レンゲ、ワタシと一緒に生きてください」


 それは明確なプロポーズだった。

 すぐに答えられない。嬉しくて、でも、まだ結婚までは考えられない。


「すぐに身に付けなくとも構いませんよ。身に付けて下さったら、その時は好意的な返事として受け取りますね」


 そう言ってルクさんは私の手にピアスと髪飾りの箱を渡した。

 私は翌日、髪飾りだけを使うことにした。


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