13話 可憐なレディ
目が覚めると、私はベッドに寝かせられていた。オーブ商会提携宿の硬いベッドではなく、柔らかく寝心地のいいベッドだ。
ベッドの周りには4人ほど人がいた。どれも知らない顔だった。
「あ、の……」
「外傷もありませんし、問題ないでしょう」
「ここ、どこ、ですか……?」
「アミスタード王国の王宮でございます」
すぐに記憶が戻った。アイちゃんと別れて商会に戻ろうとしていたところで意識を失ったのだ。
ということは、助けてくれたのだろうか。
「おお、目が覚めたのか!」
「王子!」
ベッドの周りにいた4人が膝をつく。王子と呼ばれた人は「よい」と言って彼らを立ち上がらせた。
第2王子ではない。アミスタード王国の第2王子は『クロルイ』の攻略対象だが、もっと品があって落ち着いた青年だ。
ではこの『王子』が誰を指すのか。第2王子がいるということは、少なくとも第1王子もいるということだ。
「しかしながら、これほど可憐なレディが商人とはな」
顎をつかまれる。『顎クイだわーい』なんて思う余裕はない。怖くて身動きが取れない。
「気に入った! 奥の間へ通せ!」
「はい」
4人のうちのひとりが私を立ち上がらせる。靴が見当たらない。裸足のまま床の上を歩かされた。
奥の間は天蓋付きの大きなベッドだけがある部屋だった。どこかに繋がっているだろう扉はあるが、それがどこに繋がっているのかはわからない。
けれど何が起きるのかは理解できた。
「い、いや……! いやです!」
じたばたと抵抗してみるがびくともしない。王子の護衛だろうか。鍛えられているようで、どれだけ暴れても腕の一本すら振りほどけない。
ベッドに投げられる。起き上がるよりも先に王子が私の体を押さえつける。私を連れてきた人の手によって扉が閉じられた。
「いや、いやです! やめてください!」
「心配せずとも良くしてやる」
「やだ! いや! 離して!」
どれだけ暴れても少し手足が自由になるだけですぐに抑え込まれてしまう。
私の両手を片手で押さえ込んだ王子が、空いている手で私の太ももを撫でる。
全身に怖気が走る。気持ち悪い。
「やだやだやだ! 助けて! ルクさんルクさんルクさん!!」
パニックになって必死にルクさんを呼ぶ。届くはずがないとはわかっていても叫ばずにはいられなかった。
その時だった。
「困りますね、ワタシの弟子に勝手に触れられては」
バァン、という大きな音と同時に、ルクさんの声が聞こえた。
そこには、扉を蹴り開けたばかりのようなルクさんの姿があった。




