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境界の娘 ~人ならざるものと生きていくのも楽じゃないけど、それなりに楽しくやっています~  作者: 狐のボタン


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自宅



九城のお屋敷から出る時にもずらっと並ぶ人に見送られ、門の所までは凪さんも来てくれた。

次にここへ来るのは宗家継承の時でいいらしいから、一月くらい先。

もう早く帰りたい…。

しかも雪乃さんには凪さんから用事があるとか言われて一緒に帰れないし…。


「瑠璃、大丈夫?」

「そう見えるなら子狐丸は私を何もわかってないよ」

「見えないから聞いてる」

「わかってるなら聞かないで…」

九城家にいる間、子狐丸はほとんど話もしてくれなかったね…。


「では瑠璃様、いずれまた…」

「はい。お邪魔しました」

「ここは瑠璃様のご自宅ですのに…」

こんな所を自宅とか、いきなり言われても…。


門の前で待っていた車は、確かに行きよりは多少マシだった。…マシか?もうわかんなくなってきた…。

真っ黒なのはいいとして、なんでこんなでっかいのよ! 綾華さんも私と感覚が違いすぎてダメだ…。タイヤが私の背丈くらいありますが!?

デコボコ道を物ともせずに走りそうなでっかい車に乗り込み、向かったのは住み慣れた街。ただ、帰るのはボロアパートではないのよね…。


背の高い車ってこんなに景色が違うんだ。他の車が下に見えるくらい。これ、もし私が急いで! とか言おうものなら他の車を踏み潰していきそう…。流石にないか。

…でも怖いから絶対に言わない。




また数時間走り、大きな車は地下の駐車場へ入って止まった。

「到着いたしました。瑠璃様、ここからは娘に案内させます」

「は、はいっ…」

車のドアを開けてくれたのはアヤメさん。

「おかえりなさいませお嬢様」

「ただいまです…」

手を貸してもらい、車から降りるとそこは大きな駐車場。でも見える範囲に車は二台しか止まっていない。

まだ昼間だし、こんなものなのかな?


見送ってくれた綾華さんは、私がエレベーターに乗ってドアが閉まるまで車の側で頭を下げたままだった…。

「お部屋のご用意は一通り済ませてありますが、ご入用のものが他に御座いましたらすぐご用意致します」

「ありがとうございます」

それより今はゆっくりしたい…。


案内されてエレベーターに乗ってから随分長いなーと思ったら、表示が30階まである…。しかもこのエレベーターは30階への直通で、他には止まりもしない。私の行き先は最上階ですか…。


チーンと音がなり、開いたエレベーター。

エントランスは思っていたより狭く、扉は一つしかない。まさかこれって…。


「おかえりなさいませお嬢様」

アヤメさんは改めてそう言うと扉を開けてくれた。


恐る恐る中に入ると、目の前は展望室ですか?っていうくらいに窓が大きく、街を見下ろせる。

巨大なリビングには大きなソファにふかふかのラグ…。

併設された広いキッチンには業務用かと言いたくなるような大きな冷蔵庫にピカピカのシステムキッチン。

ここだけでも広さで言うなら学校の体育館?そんなレベル。


「室内のご案内を致しましょうか?」

「お願いします…」



アヤメさんに案内されて、かなりの時間をかけて一通り見て回った結果、予想通りこの階のワンフロア全部が一つの家だった…。

寝室がいくつもあるし、どの部屋も広くて巨大なベットもあった。さらに書斎や客間などと部屋数が多い。

なにより、お風呂だけでボロアパートより遥かに広いのはもう…。

何人も一緒に入れるような広いお風呂は大きな窓から外を一望できる。

外からは中が見えない仕様の窓だから安心していいと言われても…。

トイレもいくつかあり、一つ一つが広くて落ち着かない。

ここに住むの?私が? 


…ボロアパートに帰りたい。


リビングの大きな窓から外を眺めても、このビルより大きなものはない。

この街は首都ではないとはいえ主要都市の一つではあるからビルが無いわけではない。その中でも一番高いビルですか…。

アヤメさんの話だと、このビル自体が九城の所有らしく、下層は店舗やオフィスが入っていて、その収益がかなりあるんだとか。

そういった資金の運用をしているのが綾華さんや、凪さんだったりという九城の幹部だと。

ある意味、私は九城という籠に囚われてるんだなと、眼下に広がる街を見下ろしながら寂しくなった…。

私はあっち側で暮らしていたかったな…と。 わがままなのはわかっているし、無理を言うつもりはないけど、慣れる事ができるのか不安しかない。


「瑠璃、落ち着いた?」

「ううん。妖魔界が恋しくて辛い…」

「そう言ってくれるとあっちのみんなは喜ぶだろうね」

 

現実逃避して落ち込んでても仕方ない。慣れるようにしなきゃ…。

「子狐丸、夜ご飯に食べたいものある?」

「和食がいいかな。前回は一緒に食べられなかったし」

「わかったよ」

あの時は私が勝手に暴走して落ち込んでたものね…。


まずは食材の確認でもしようかとキッチンへ。 

冷蔵庫に食材は豊富にあるし、大丈夫そうね。使ってダメってこともないでしょう。

少し戸惑ったのは最新の家電が並んでたせい。でも基本は同じ。だと思う…。


野菜の下処理をしていたら慌てたアヤメさんが…

「瑠璃お嬢様!? そのような事は私が!」

「せめて料理はやらせてもらえる? 子狐丸には手作りしてあげたいし、何もしないのは落ち着かないの」

「ご配慮が足りず申し訳ありません! では私は料理以外の事をさせていただきます」

「うん、お願いします」

この広さだ、私一人で掃除は不可能だもの。そちらはお願いするしかない。

……会話の途中、丸い平べったい物が部屋を横切っていったんだけど何!? まさかあれが有名なお掃除ロボット?

後で見てみよ!



夕食をアヤメさんの分も用意したのだけど、感動して泣かれてしまったりと騒がしかった。

でも子狐丸が美味しそうに食べてくれたから満足です。


食後休憩の後には、タイミングをはかったかのようにお風呂がしっかりと用意されていた。

あまりの広さに落ち着かなかったけど、夜景はすごくきれいだった…。

子狐丸と入ったら楽しいのかな…とか一瞬考えてしまい、恥ずかしくなって湯船に沈む。

何を考えてるの私は。はしたない! それに誘うような事をしても今は…。


その後、私の寝室だと言われた部屋にいき、備え付けられてたドレッサーで髪の手入れをしていたら、子狐丸とアヤメさんの言い合う様な声がリビングから。

何事かと思い、そっと扉を開けてリビングを覗く…

「なんで一緒の部屋がダメなんだよ!」

「お嬢様はまだ嫁入り前の大切な御身です。例え子狐丸様といえ、同衾はお控えください」

「瑠璃は僕の嫁なのに…」

「今はまだ違います! 昨夜は一部屋しかないので黙っておりましたが、こちらには子狐丸様のお部屋もご用意させていただいております。そちらをご利用ください」

「でも…!!」

「ダメです! これは凪様とうちの母、綾華からもキツく言われておりますからご理解くださいませ」

あー…。これは私が口を挟むとろくな事にならないなぁ…。

そっと扉を閉めて、ベッドへ潜り込む。

うわぁ…ふっかふか…なにこれぇ…。


覚えてたのはそこまで。次に目が覚めたときには朝になってた。

前の晩は寝てなかったしね、仕方ない。

…このベッド凄すぎる…。ここに来て一番感動したかも。







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