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境界の娘 ~人ならざるものと生きていくのも楽じゃないけど、それなりに楽しくやっています~  作者: 狐のボタン


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子狐丸Side



瑠璃が奈子ばかりかまっててつまらない…。

何度も一緒にいたいって言ってるのに、今日はとうとう大切な話の最中なのに出掛けていった。

もう僕はいらないの…?

瑠璃の妖力も日に日に減っていってるから心配なのに。

ご飯も作っておいてくれるけど、一緒に食べなきゃ美味しくないよ…。


瑠璃は奈子の家に行くと数時間帰らなかったりするから、その間じっとしてても気が滅入るし、なにか仕事がないかと街へ出てみた。

見慣れた風景だけど、気分によってこんなに色あせて見えるんだな…。



…? 緊急? 

仕方ない…。あいつが緊急なんて言い出すくらいだ、よっぽどだろう。

いつでも出来る仕事は後回しだ。


急いで山に向かい、姿を探すも見当たらない。こっちにはきてないのか?やむを得ず境界を抜ける。

目の前には見知った相手。いつもなら報告する時は妖魔界の方へ来てたのにどうしたんだ?

「兄ちゃん、大変だよ!」

「大変だけじゃわかんない。ゆっくり話して」

僕の部下…というか妹分みたいな?元は小柄で、名前はまだない。

名付けられるとしたら瑠璃くらいだけど、絶対に誤解するから会わせたくないんだよね。

浮気! とか言われたら本気でへこみそう…。


「えっと、凪が瑠璃さんの親になるって言い出して、雪乃と大喧嘩してます」

「何でそんなめんどくさいことになってるの。凪は東風家の当主だし、瑠璃の後見人でいいでしょ。今は九城家の当主代行なんだし」

「だからですよ。 後見人なら親でもあるとか言い出して…ほら、保護者として学校と話つけたりもしたから」

「ああ、ブチギレてたやつね…」

瑠璃には黙っておいたけど、例の百鬼夜行の後に起こった事件を何処からか聞きつけた凪が、ブチギレて学校関係者を九城家へと呼び出した。

おそらく、瑠璃に手を出した奴は退学…。下手したら凪の手下の誰かに消されてても不思議じゃない。

そんな話、瑠璃に言えるわけがなくて黙ってた。

後でバレたら…なんとかごまかそう。瑠璃ってその辺は素直だから。


「雪乃はなんて言ってるの?」

「オレが瑠璃の母親だ! って…」

「いつも通りそのまんまじゃん」

「どうしたらいいかわからなくて、兄ちゃんに相談!」

「それは僕じゃなくて瑠璃が決めることだし、今はほっとけばいいよ。他には?」

「なんにも! 現在九城を取り仕切ってる事実上のトップがそんな喧嘩するくらいには色々と片付いてます」

「わかった。ありがと」

「兄ちゃん、久しぶりにあたしもゆっくり向こうに行きたいです…」

こっちのカタもついてるのなら、いいか…。


「じゃあ行こうか」

「やった!」

なんでこいつはいつも当たり前に腕を組んでくるんだろう。

元が鞘に収まってる小柄だから仕方ないか…。

こんなところ瑠璃に見られたら絶対に誤解される。それに腕を組むなら瑠璃がいい…。でも瑠璃ってこういう事を自分から絶対にしてくれないんだよね。手をつないできたりもしない。

嫌われてるからではないと思う…。最近はかまってくれなかったりもするけど、仕方ないのもわかってる。

でも…


「兄ちゃん? どうしたのです?」

「なんでもない。 どこに行きたい?」

「街! 久しぶりにあたしも仲間をいっぱい見たいです!」

街か…。


境界を抜けて戻ると、朝になってた。

しまったなぁ…現世で話してたせいで時間が過ぎてる。瑠璃がこっちにいると妖魔界のが時間の流れが早くなるんだった…。

今帰って、こいつのことを説明して……。無理だ。こいつを連れて朝帰りなんてしたら、瑠璃のことだから確実に誤解する。特に今は…。


とりあえずこいつが満足するまで街を回って、現世に帰してから家に戻ろう。

もしかしたら瑠璃もまた奈子のところに行ってたりするかもだし。

…僕をほっとく瑠璃も悪い。少しくらい心配かけたって…。心配してくれるよね?



妹に街を引っ張り回されて、現世の物が売られてるのを見て笑ったりと、よくわからないことをしてる。何が面白いのかわかんないけど、妹のツボにはまったみたい。

見た目に反して言動はいつまでも子供っぽい。外見だけなら瑠璃より大人なのに。

だからこそ瑠璃に会わせにくくて、紹介しそびれてる。


「どこに行ってたの! 心配したじゃない!」

大きな声で何事かとおもった…。一瞬、瑠璃に僕が叱られたのかと。

瑠璃が時々買い物をする店の店主、ろくろ首の姉さんが子供を叱ってるだけか…。

「お姉ちゃんが…瑠璃お姉ちゃんが」

瑠璃!?その名前を出されたら黙ってられない!


「瑠璃がどうしたの?」

「子狐丸のお兄ちゃん…。あのね…」

…………

……

幼い子供の話は要領を得ない。えっと、つまり…瑠璃は開いた境界に入った?


「兄ちゃん、これはマズイかもです」

「境界を瑠璃が越えたら何が起こるかわからないからって止めたはずなのに」

「それもですけど、あの子の話から察するに境界の先は多分迷い家…」

迷い家…?それってまさか!

でも子供は出てきてるから、もしかしたら瑠璃も…!


急いで家に帰り、家中を探したけどやっぱり瑠璃はいない。 

じゃあ本当に境界の先へ行って迷い家に捕まった…?

迷い家と言えば、入り込んだものと交わり、力を補充する。代わりに現世での富や名声を授けてくれる、人によっては有り難いものだけど、瑠璃が他の妖怪と交わる…。そんなの…!!


「兄ちゃん、これ…」

妹が持ってきたのは、僕が瑠璃にあげた指輪のケース。いつもはケースも大切にしまってたはず。それをなんで?こいつが意味もなく持ってくるとは思えない。

「どこにあった?」

「タンスの上に。 これ…兄ちゃんに言っていいかわかんないんですけど…」

「読み取ったのか!?」

こいつの能力の一つで、物や場所に残された想いっていうのを読み取れる。だからこそ現世に残して色々と調べさせてたんだけど…。


「瑠璃さん、兄ちゃんに裏切られたってすごく落ち込んでて。でも原因は自分にあるからと後悔して、すごく自分を責めてます」

「なんでそうなるの!?」

「ほら…」

ケースを開けると中には指輪が…。渡してから一度も外したことがなかった指輪…。

それを置いていった…。これが意味するのは一つ。

僕が昨夜戻らなかったからだ…。絶対誤解してる。

下手したらコイツといるところを見られた可能性も…。

タイミングの悪い瑠璃ならあり得る。

瑠璃が妖力を使いこなす様になってから、僕から瑠璃が察知しにくくなったからな。瑠璃からは見つけてもらえるのに…。すごく不便。


「他になにか読み取れた?」

「それだけ…」

「瑠璃の気配は?」

「これだけ強い想いのこもった指輪からも辿れないので、この世界には居ないと思います。念の為現世も確認しに行きますか?」

「いや、瑠璃一人では現世への境界は開けない」

「でも瑠璃さんなら…」

「強く願えば可能だろうけど、瑠璃にそこまでの妖力はもう残ってなかった」

「ということは……」

じゃあやっぱり迷い家に取り込まれた…。


「迷い家に行くことは可能?」

「無理。招かれてなきゃ不可能だって兄ちゃんも知ってるはずです」

わかってるけど! それでも確認したかった。


瑠璃…。

僕に裏切られたと思ってる瑠璃が迷い家に…。

もし帰ってきてくれたとしても、それは……迷い家と交わった証。


それでも!! 帰ってきてよ瑠璃…。お願いだから。無事でいてくれればそれでいいから…。お願い…。










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