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境界の娘 ~人ならざるものと生きていくのも楽じゃないけど、それなりに楽しくやっています~  作者: 狐のボタン


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すれ違い



奈子さんに子供が生まれてからニ週間程がたち、私は毎日の様にお手伝いに行ってる。

雪乃さんも現世でまだやらなければいけない事があるからと、数日で現世へ帰ってしまったから、手が足りないのよね。

何も私が可愛い赤ちゃんを見たいっていうワガママな理由ではなく…。勿論それもないとは言わないけど、子育てが本当に大変なのは傍から見てるだけでもわかるから…。

睡眠時間も削られ、自由な時間なんてほぼ無い。そんな状況の奈子さんを手伝いたいくて。

私にできるのはちょっとした手助けと食事の用意くらいだったとしても。

 


でも、その結果、子狐丸が拗ねてしまった。

聞き分けのない子供みたいに…。なんて怒るつもりはないし、申し訳ない思いもあるけれど、大変な奈子さんを放ってなんておけないの。どうしてわかってくれないの?


子狐丸がこの調子では、私が子供を産むなんて夢のまた夢だなぁ…なんて寂しく思いながら、子狐丸の説得を試みる。

「瑠璃が全然かまってくれない…。夜でもひどいと出かけちゃうし、相手してくれないし」

「姉の様な人でもあり恩人の奈子さんが大変なのよ? 子狐丸もお世話になったよね?」 

「そうだけど! 毎日毎日行っちゃうから」

「子育てに休みなんてないの。大人だって食事に休みなんてないでしょう」

「一日くらい食べなくても平気だし」

ああ言えばこう言うのね…。


「じゃあ子狐丸の希望を聞かせて?」

「毎日瑠璃と一緒にいたい」

「いるじゃない」 

「いないよ!」

「そう? 長く境界が開いてた時はお互いに昼間はほぼ別行動してたし、あの頃に比べたら一緒にいる時間は長いと思うけど」

「時間の問題じゃない! ゆっくりできないから…」

ああ…確かにそれはあるかもしれない。

ここ最近は私の力のお陰か、奈子さんに呼ばれてるってのが感覚でわかっちゃうから、夜中だろうが飛び出していったりしてるし…。


言ってるそばから!

「ごめん、ちょっと行ってくる! もし遅くなるようなら、お昼ごはんは作り置きしたのが冷蔵庫にあるから温めて食べてね」

奈子さんが呼んでる。 緊急っぽい!

「瑠璃!?」

「話はまた戻ったら聞くから、本当にごめんね」



急いで奈子さんのお宅へ行くと、赤ちゃんが熱を出してた。

「どないしよ瑠璃ちゃん…。 ずっと泣き止まへんの…」

「待ってくださいね…」

赤ちゃんに触れて、体調が良くなるようにと願う。

徐々に熱が下がって泣き止み、呼吸も落ち着いた…。


「もう大丈夫だと思います。少し熱があったので、治しておきました」

「ほんまありがとうな…。 もうどうしたらええかわからへんくて…」

奈子さんもお疲れだものね。判断力が下がってても仕方がないです。

こうやって頼ってくれるだけ安心なくらい。

一人だとお医者様を呼ぶのも無理だものね…。直接行くのなんてもっと危ないし。


「少し見てますから寝てください。また寝れてないですよね?」

「助かるわ…ほんま毎度毎度ごめんなぁ」

「かまいませんから。今は気にせず休んでください」

奈子さんはソファーに横になるとすぐに寝てしまった。

目のクマもすごいし、相当お疲れなのは見たらわかる。今はゆっくり休んでください。璃奈ちゃんは見てますから…。


赤ちゃんの名前、少し前に決まったんだよね。

私の瑠璃から璃を、そこに奈子さんの奈を合わせて璃奈ちゃん。なんで私の名前から?と最初はびっくりしたけど、命の恩人だから一字使わせてほしいとお願いされて、嬉しいのもあって快諾した。

だからかな。余計に放っておけない。


熱が下がったからか、スヤスヤと寝てて可愛らしい。こうしてみると奈子さんにそっくり。

絶対に奈子さんに似た可愛い子になるね、間違いない。


源さんも家にいる時は奈子さんのサポートをしてて、ほぼ寝てないような状態で仕事に行ってたりするのに…。

子狐丸は何もわかってくれない…。説明しようにも聞く耳を持ってくれないと言えばいいのか、またその話?みたいに。

ただ、一緒にいたいの一点張り。そんな状況では私も説明するのが困難。

一緒にいたいっていうのは私も同じだし、ゆっくりできてないのも本当だけど…。


現状、禄に相手もしてあげられてないから、私自身の妖力がかなり減ってきてる。

毎日ほんの少しずつ抜けていくのは勿論、さっきみたいに使えば消費する。

はっきりと妖力というものを認識したからこそわかるのだけど…。

今はどうしてもゆっくりそういう事をしている余裕がない。

もし急になにか起きたら?っていうのに備えておかないといけないし。


我慢…させてるんだろうな。前みたいに子狐丸が無茶しないから、私がストップをかければ止めてくれるから。

一度なんて直前でストップ、私が奈子さんの元へ出かけてしまって…。

しばらく口も聞いてくれなかったっけ…。

これじゃあ流石にダメだよね。子狐丸に申し訳ないもの。

奈子さんが起きたら少し相談しよう。子狐丸との時間をもう少しとれるように…。




時々起きる璃奈ちゃんに、現世から持ち込まれた哺乳瓶でミルクをあげたりしてあやしながら、奈子さんには数時間寝てもらえた。

起きた時にはスッキリとしていて、いつもどおり落ち着いた状態の奈子さんに相談。


「それはほんまごめんな! 瑠璃ちゃんに頼りっぱなしなんはうちも悪かってんな…。 子狐丸が拗ねるんもしゃーないよ」

「頼ってもらえるのは嬉しいですし、今日みたいな緊急なら遠慮せずに呼んでくださいね。遠慮されてしまって、大変な事になったりしたら絶対にイヤですから」

「せやな。 そんときは遠慮せんと頼るな。 今日はもうはよ帰ったり。この子も瑠璃ちゃんのおかげで落ち着いとるし。子狐丸を待たせたままなんやろ?」

「ええ。 すみません…」

奈子さんの家を出る時にちょうど源さんとすれ違い、挨拶。奈子さんが一人じゃないなら安心だとホッとして帰宅。



………家に子狐丸がいない。

家を出て数時間。待たせすぎたとか、そんなレベルじゃないものね…。

いくら子狐丸の気配に敏感になったとはいえ、どんな距離でも分かるわけではない。

今、私のわかる範囲にはいない…。少ない妖力を使ってまで探す? それとも直接脚を使って探しに行く? でももし入れ違いになったら…。

私が家に居なかったら余計な誤解を招きかねないよね…。今はあの子、私の話なんて聞いてくれないし。

どうしようか悩んだ結果、家で待つことにした。


夜ご飯を作って待ってても帰ってこない。

真夜中になり…。

外が明るくなり…。

どれだけ待ってても子狐丸が帰ってくる事はなかった…。













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