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境界の娘 ~人ならざるものと生きていくのも楽じゃないけど、それなりに楽しくやっています~  作者: 狐のボタン


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いいわけ



「おい! 瑠璃いるか!! 子狐丸!! 返事くらいしやがれ!!」

早朝から大きな声に起こされ、気だるい身体をなんとか起こす。

久しぶりに全力の子狐丸を受け止めたから、妖力とか以前に体力が…。


「こっちか!!」

ピシャっと襖が開けられて、入ってきたのは……。


「雪乃…さん…?」

「………瑠璃。そこに正座しろ」

「え…」

「いいから正座しろ」

ものすごい怒気に逆らえず、慌てて正座…。


「何してんだ?テメェは…。乳繰り合うために逃げたのか!!」

「違います…」

「何が違う? この状況で言い訳出来るのならしてみやがれ!」

この状況…。


現状私は服も着てないまま正座してて、隣にも同じような姿で未だスヤスヤと眠る子狐丸。

うん、完全に事後です…。なんの言い訳もできません。


「やっとカタがついたから報告してやろうと思って来てみりゃ、何だこれは? オレたちがヤッパ片手に駆けずり回ってる間お前は何してた?」

えっと…

妖怪の人たちと信頼関係はある程度築けてると思うし、対等に接してもらえるくらいにもなった。そう子狐丸も認めてくれたよね。妖力を扱う訓練もほぼ毎日してきた…。

でも今それを言ってもなんの説得力もない状態なわけで…。



「もういい。 お前みたいなバカな娘はいらん。どこへなりといっちまえ!!」

雪乃さんはそう吐き捨てると部屋を出ていってしまった。追いかけたいのに…。なんて言って止めたらいいの…?

しかも私みたいな娘はいらないって…そん…な…。


どうしていいかわからず、泣くことしかできなくて。

私もできることはしてきたつもりだったのに。こんなところを見られたら…。

言い訳なんてできないし、何を言ってもあの冷たい目をした雪乃さんには響かないだろうってのもわかってしまったから…。

色恋にうつつを抜かしてた?そう言われたら否定もできない…。雪乃さんが怒るのも無理はないよね。実際にこんな現場を見せてしまったのだから。


「ん…瑠璃? どうしたの!? なんで泣いてるの!」

「子狐丸ぅ…どうしよう…雪乃さんにいらないって捨てられたぁ…うぅっ……」

「え、なに?どういうこと!? 雪乃…?」



泣いたせいで過呼吸みたいになっていたけど、抱きしめててくれた子狐丸のおかげで少し落ち着いた…。

「タイミング、悪かったね…。 本当は今日くらいに瑠璃を連れて一度戻るつもりはしてたんだ」

「子狐丸はあちらのこと把握してたの?」

「大まかにだけどね…。藤崎につけてきた仲間から報告もらってたから」

「私にも教えてよ…」

「僕の独断で話せるような内容じゃなかったからね…ごめん…」

私が悪いね…。全部子狐丸に丸投げしてたんだから。知る努力を怠ったのは間違いない。


「瑠璃はお風呂に行っておいで。ここは片付けとくから」

「うん…」

寝室の後片付けを任せてお風呂でシャワーを浴びてても、雪乃さんの呆れた顔と最後に向けられた氷のように冷たい目が忘れられなくて…。

「ごめん…なさい…」

きっとオーナーにも呆れられるだろう。もうどんな顔をして現世に戻ったら…。

戻っても私の居場所はもう…ない。


髪を乾かし、身だしなみを整えてお風呂を出たら、リビングから話し声が聞こえる。

この声…奈子さん?

急いでリビングに戻ると、奈子さんだけじゃなく雪乃さんも…。


「あのなぁ? 早朝に年頃の娘の寝室にズカズカと踏み込んで怒鳴り散らすアホがおるか!」

「やっと、瑠璃と会えると思ったら嬉しくて…つい…」

「しかも事情も聞いたらへんと一方的に怒鳴り散らす母親がいてるか?」

「親の経験なんてねぇし…」

「親を名乗っといて言い訳すんな!! 瑠璃ちゃんはな、こっちでやれることをずっと頑張ってきたんや! 信じられへんのやったら、街に行って聞いて回ってみ? 世話んなってへんのなんておらへんよ?」

「……すまん…」

えーっと…?どうして雪乃さんが奈子さんに叱られて正座してるのでしょう?


「謝る相手が違うやろ!」

「…瑠璃、悪かった」

「謝らないでください! あれは言い訳出来る状況ではなかったですし…」

「だよな!! あんな乱れた…」

スパーンッ!! と部屋に響く乾いた音。何事かと思ったら奈子さんが雪乃さんの頭を後ろから思いっきり叩いてた。


「雪乃、自分も大概なことしよるよな? だれやっけ…ふかくんゆーたか? あんな話やこんな話、さんざん聞かされたんをここでぶちまけたろか?」

「やめてくれ!! オレにも立場が…」

「今回のは雪乃が悪い! 娘とはいえ、いきなり寝室に朝から入り込むアホがいてるかボケ! うちやったら延々出られやん家に放り込んどるわ! いっそ瑠璃ちゃんの代わりに制裁したろか?」

「それだけはやめてくれ!! オレが帰らなかったらふかくんが…」

雪乃さん、奈子さんに勝てないんだ…。ちょっと意外。例えるならヤンキーなのにクラス委員の女子には勝てない! みたいな。


「瑠璃ちゃん、どないする? 反省させるためにもいっぺんシメとくか?」

「いえ!! やめてください。私のお母さんなんです…血は繋がっていなくても本気で私の事を思って叱ってくれた、大切な人なんです」

「瑠璃…。 悪かった…。さっきのセリフは取り消す! 娘でいてくれ。頼む」

「はいっ! 私もみっともない姿を見せてしまってすみませんでした」

「謝らんでええよ瑠璃ちゃん。このアホのが遥かにやらかしまくってんやから」

「娘の前で言わなくてもいいだろ!」

「うちは瑠璃ちゃんの姉貴分やからな。 アホな母親なんぞ認めへん! 娘の気持ちを汲む事もでけへんといて何が母親や! その氷のように硬て冷たい頭洗って出直してき!」

こんな剣幕で怒る奈子さんは見たことがない…。しかも私のために怒ってくれてるのがうれしくて…。


しばらく奈子さんによる雪乃さんへのお説教は続き、雪乃さんが平服状態になったところで奈子さんも落ち着いた様子。

「ええか? 母親名乗んねやったら娘の話は口を挟まんと最後まで聞いたるんよ?」

「はい…」

「怒鳴るんも手を上げるんもナシや! ええな?」

「はい…」

「よしっ。ほなうちは帰るから、後で寄るんよ?雪乃」

「わかった。身重なのに悪かったな」 

「ほんまやわ。かなわんで…。瑠璃ちゃんも自分に自信持ちよ。ここでしてきた事はうちらがよう知っとるんやから」

「ありがとうございます!」



奈子さんが帰った後、しばらく沈黙が続き…。



「すまなかったな…」

「私もごめんなさい。会いに来てくれて嬉しかったです」

「そうか…。オレも会えて嬉しいぞ」

雪乃さんはどうしようか悩んでる風だったけど抱きしめてくれて。

ホッとしてまた涙が溢れた。

「悪かったな。瑠璃もこっちでできる事をしてたって奈子から聞いた」

「してきた事が正解なのかはわからないですけど…」

「勝手の違う世界なのによくやったよ。しかも妖力も使いこなしてるんだってな?」

「まだ出来ることは限られてますけどね」

「オレからも教えられることはあるから任せておけ」

「はい…」



落ち着いた後、現世の状況を聞かせてもらった。

私にとっては、おもいっきり頭を殴られたくらいの衝撃的なものだったけど…。







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