↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/45

コウノトリの話 2

「彼のいる、その『マガツ区』という街は、実在するのかい?」ぼくはコウノトリのママの話を遮り、訊ねた。

「ええ、するわ」ママは頷いて、顔をぶるっと震わせた。「ただし、私のいた世界での話だけれどね」

「君のいた世界?」

「こことは異なる次元にある世界よ」

「ふうん」ぼくは適当に相槌を打つ。

 何やら、ややこしい話になってきた。

 聞くと、ぼくの暮らしているこの世界とは別に、似たような世界がどこかに存在していて、ママはそこからやって来たというのだ。

「君のいたその世界は、どこにあるの?」

「わからないわ」ママは嘴を左右に振る。「『壁』を越えて来たんだけどね、詳細な位置までは、なんとも。一つ言えることは、この場所とは陸続きじゃないってことよ」と、ママは寝室の床を嘴で指した。

「そうなんだ」

「ええ、だから移動も大変なの。ま、普通、世界と世界の間にはそういった壁があって、簡単に行き来はできないんだけど」

「君はできた」

「そうよ」

「どうやったの」

「飛んだの」

「その翼でかい?」

「ええ、そうよ」ママは片方の翼を広げてみせる。寝室いっぱいに、神々しい白が満ちた。床にはママの翼をなぞるように、扇形に影が落ちる。

「そうか。壁があるって言ったけど、君は飛べるから超えられたのか」

「いえ、そういうわけじゃないの。壁は実体を持たないもの。高さとか広さとかいうものはないわ。けれど、私はただ飛んでるだけで、壁を越えられた。変な話よね」

「そうだね」

「私にも詳しくはわからないのよ」

「実体を持たない壁というのは、目には見えないということかい?」ぼくは訊ねる。

「見えないわ」

「それじゃあ、壁を越えたかどうか、わからないじゃないか」

「壁を越えた瞬間に、あ、今、壁を越えたなって感じるのよ。不思議なことにね。なぜかしら」ママは嘴を自分の足元に向け、何かを突くような仕草をした。

「さあね」

「どういうわけか、コウノトリと鉱物とドラゴンだけが、唯一、世界の壁を超えることができるの。いったいどんな原理かはわからないけど、昔から決まっている掟や約束事みたいなものね」

「そんな掟があるのか」

「とにかく、私は壁を越えてやってきた。そして、元いた世界には、『マガツ区』という街が確かにあって、私が今、お話しした少年のおとぎ話も、実在するものなのよ」

 ぼくは大きく欠伸をする。ママは窓際を少し後ずさる。月が暗雲に隠れたのか、差し込む月明かりが薄れ、室内の闇が増す。夜の淡い闇色だ。それでも、夜はまだ始まったばかりで、ママのおとぎ話はさらに続くようだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。