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【もう出ねぇ! 五・七・五の! 在庫がねぇ!】第16話 学祭バトルレボリューション その16

 星野がニヤニヤとダリのアメをねぶっている。もう桜井、雨宮さんと作戦会議もしない。星野独壇場!


「じゃ、第7ラウンドは“細かすぎて伝わらないモノマネ”で」


 第7ラウンド “細かすぎて伝わらないモノマネ”


「演技順は、花屋敷チーム、雨宮チーム、水原チーム、リーベルトチームで。セコンドがやってもいい」


 演技順一番手の花屋敷チームはもう地獄。模範演技も何もなく芸をしろとはキツい。花屋敷、黒子、二軍のイケメン、メガバシャーモで円陣を組み、作戦会議。


「えー、東映撮影所の近くのお寺のお祭りで行われたヒーローショーで、唐突に飛び出したネットスラングで気まずくなってしまった一幕。ハーイみんな握手は列に並んでねー。今日は暑いですからー、水分補給はしっかりしてくださぁーい」


 メガバシャーモがヒーロー、花屋敷が司会のお姉さん、二軍のイケメンが列に並ぶ子供、黒子が後ろの方で立っているだけのポジショニング。


「まだ時間あります、あ、“大きいお友達”もどうぞまだ時間ありますよー」


 一瞬ビクッとしちゃう大きいお友達こと黒子の気まずさ。


「……」


「……」


「……」


「……」


 演技終了。本当に細かすぎてクスリともしない。まだ良心の残っている雨宮さんと水原さん、円谷栄治が半テンポ遅れて拍手。


「……」


「……」


「……」


「……」


「自動で床が抜けるとかそういうことはないから演技終わったらどいてくれる? なんでもやってもらえると思うなよ。甘えるな。甘いのはダリのアメだけだよフフフ~ン」


 星野がスベリ地獄を見せられた花屋敷チームを追い払う悪辣! これは血祭りだ。拷問(ゴウモン)だ。一発一発は致命傷ではないが、学祭が終わるまでこの集中攻撃が続くならそれはもう拷問(ゴウモン)だ。


「じゃあビシッと模範演技をお願いしますよ、桜井!」


「……ッ」


 桜井がフリーキックを外したサッカーボール選手のように天を仰いだ。桜井の気持ちは痛いほどわかる。滑りたくない滑りたくない滑りたくない滑りたくない! その一心だろう。細かいけど多少伝わるモノマネ、桜井にそのレパートリーはあるだろうか!


「……えー、高速道路から降りてぇ」


 桜井にしては歯切れが悪い。


「速度感覚が狂ってる陣内さん」


 桜井がキョンシーのように両腕をピンと伸ばしてエアハンドルを握る。あの肘を曲げない独特のハンドルの握り方は間違いない、“陣内持ち”と呼ばれるハイジさんのクセのあるハンドリングである。ここで『演劇サークル』からフフッと吐息程度に漏れる。頼もしい援護で桜井が右手の人差し指を伸ばしてペシペシとエアハンドルを叩く。そして首を傾げて。


「あ、やっべ! ちょいごめんギッてなる」


 で、肘を曲げてつんのめる桜井。『演劇サークル』爆笑。ここが潮時、とわかりやすく、花屋敷チームよりケガしていない。


「あるある!」


「高速降りたばっかりだからゆっくり走ってるつもりでも60ぐらい出てんだよなぁ!」


「あぁ、そういえば陣内さんって長時間運転してると急ブレーキかけるなぁって思ってましたが、アレそういうことでしたか!」


「そういうことだよ。マジで大変なんだよぉ速度感覚の調整~」


 完全な身内ネタ。身内しか盛り上がっていないため花屋敷チームだけ盛り上がれないが、これは桜井を責められない。花屋敷チームのあれだけの滑りっぷりを見せられたのだ。無難に行くのも仕方ない。全て星野が悪いのだ……。そして桜井の示した身内ネタという模範演技、そして実際は“細かすぎるけど伝わるモノマネ”である、という事実! というかさっきの“大変身”で花屋敷チームは良崎の細かいモノマネをやっているのでここでやれるレパートリーもない。というか良崎のマネを残していればまだこんな大ケガはなかった。


「千穂、お前なんかやりたいのある?」


「ん? わたし決めていいの?」


「いいよ。だってお前、キャンパスライフを楽しみに来てるんだろ? お前今のところ全然楽しくないだろ。少し遊べよ」


「なんでもいいの? じゃあアレ。3球続けて内角高めの球からの古田の乱闘」


 (シブ)すぎる。


「さすがに無理だな。水原、俺たちで考えよう」


「チッ、なんなんだよ」


 村上さん舌打ち。


「お前、まだ若いんだしどっかの大学受験すれば?」


 ハイジさんと水原さんの作戦会議中に英雄先生からご提案。


「鹿井は偏差値よかったろ。それに勉強も教えてるって聞いてるぞ」


「勉強は教わってる。響子ちゃんは確かに頭いい。北海道でもトップクラスの高校通ってたらしい。でももうわたしも勉強はブランク2年あるんだよ」


「ブランク2年か。予備校通えば来年には大学生になれると思うぜ」


「この大学は入れる?」


「この大学は入れなくはないだろうが21歳で一年生になるほどこの大学はいい大学じゃない。しかし、ああそういや、来年入学を目指して入れるような大学で21歳新一年生になるほどの大学ってそうそうねぇや。21歳新一年生でも浮かない大学となると、来年入学は無理なレベルばっかりだな。すまなかった」


「なんなんだよ!」


 これは村上さんが可哀想。ハイジさんの心に慈悲が芽生えた。


「千穂、古田の乱闘以外でなんかあるか?」


「要はアレだろ? 床が抜けないから、スベった時に自然にハケられる演技がいいんだろ? ならいいのがある。デッドボールを食らってピッチャー石川にダッシュで殴りかかるかと思いきや一塁ベースにダッシュした元ソフトバンクのバティスタ」


 渋ぃ! そして村上千穂、さてはヤクルトファンか?


「これなら一塁ベースにダッシュするっていう体でスベっても逃げられる」


「バティスタ役のヤツだけな。いいだろう。それで行こう」




【帰ってきたうぉくのふぉそみつ】

【帰ってきたうぉくのふぉそみつ】




「事実上の一騎打ちですなぁ」


 小林氏がヒゲをさする。水原さんチームもスベった。雨宮チームとの一騎打ちである。ここで負けるとまた星野がラウンドをとる。そして次も、星野はもう花屋敷が使ってしまったネタ・ワザこそ生きるゲームを選んで血祭りだろう。


「しかしネタのチョイスはシビアだ。内輪ネタはスベりにくいが、花屋敷さんの疎外に加担する形になる。しかし本気でネタをやるとスベりがち……。どっちをやるにしても星野さんのプレッシャーがある。さらに! もう星野さんによる血祭り目当ての客も増えてくる時間帯だ。コイツぁもう棄権という選択肢すら浮かび上がりますよ」


 スベりor仲間外れの加担。


「なんか、小道具はないですか」


「はいただいま」


 小林氏が小道具用の鞄を持ってきてしばし作戦会議。


「ダメですね。ウルトラマンタロウのお面しかありません」


 ※ウルトラマンタロウ 53m 5万5000t 必殺技:ストリウム光線、ウルトラダイナマイト


「ウルトラマンタロウのお面……」


「手に取るんですか? 取ったらもうそれでどうにかするしかありませんよ」


 良崎、覚悟を決めてウルトラマンタロウのお面を被り、後頭部に勢いよくゴムパッチーン。


「……」


「一応、ウルトラマンタロウの掛け声はトァーッ! ですが」


「花屋敷……」


 リーベルトラマンタロウが目の部分を息で曇らせ視界不良のまま花屋敷を呼ぶ。


「お前を助けてあげましょう。ウルトラマンタロウのゆかりのヒーローモノマネなんてどうですか?」


「では、バーンマイトで!」


「バーンマイト?」


「魅せます」


 花屋敷が一個前で使った輪っかをバーンとかざし、カードをリード!


「タロウさん!」


「ウルトラマンタロウ!」


 花屋敷→黒子。


「メビウスさん!」


「ウルトラマンメビウス!」


「熱い奴、頼みます!」


 グッと輪っかを天にかざし……


「フュージョンアップ! ウルトラマンオーブ! バーンマイト」


(クレナイ)に、燃えるぜッ!」


 ※ウルトラマンオーブ バーンマイト 50m 5万t 必殺技:ストビュームバースト


 やっべぇまた伝わってねぇ……。花屋敷チーム、本格的な血祭りが始まってる。チャンスでさえ噛み合わない。持ってるカードとカードの切り方が志に繋がらない上に志がマイナーすぎる。


「お前、本気で伝わらないモノマネなんか真剣にされてもうまいかどうかもわかんないってわかりなさいよ」


 的確なダメ出し。


「えー、じゃあこのウルトラマンタロウのお面と髪の毛を合わせて、解説でのボキャブラリーが貧相な獣神サンダーライガー。おぉぉぉぃすげぇぇぇよぉぉお! 人間じゃねぇよおぉい! チャンスチャンス棚橋チャァーンスッ! すっげぇぇぇぇ!!!」


 長髪+ウルトラマンタロウ→獣神サンダーライガー。マスカラスマンにしか伝わってないが趣旨がわかる分笑えるモノマネ。良崎にしては手堅くキッチリ、という感じだ。


「プロレスで絞るか」


「そうですね。チームコンセプトとしてプロレスネタで行きましょう」


 こっちはこっちで良崎とマスカラスマンがついに噛み合う。星野が花屋敷潰しに徹していてくれれば多少はやりやすいか。だけどちょっと待て。今誰がどのぐらい得点取ってるんだ? ちょっとエクセルで計算しないとハッキリとは言えない。おいマジかー。俺エクセルでポケモン図鑑管理してたよ。そうそう。アローラ図鑑で入手してないポケモンの番号にポケモンの名前入れといて、入手したらエクセルのリストから名前を消す。全部消えたらアローラ図鑑完成ってぇ寸法だ!


良崎-17pt

水原-17pt

花屋敷-13pt

雨宮-12pt


 なんだ、まだ星野たちは最下位か……。各ラウンド1位5pt、2位3pt、3位1pt、4位0ptなので、次に星野が首位でも良崎か水原さんが2位につけば抜かれることはない。というか星野は勝ちたければ、血祭りに上げると宣言していた花屋敷こそ勝たせねばならない。これがわからないほど星野もバカではあるまい。


「“細かすぎて伝わらないモノマネ”の結果は」


1位 雨宮チーム

2位 リーベルトチーム

3位 花屋敷チーム

4位 水原チーム


 花屋敷、実質2本やったからな。その分同情も集まりやすい。


したのねもかわかぬうちに。

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