【もう出ねぇ! 五・七・五の! 在庫がねぇ!】第15話 学祭バトルレボリューション その15
「そうだな。そこのお前」
星野が観客席から無作為に男性を指名。モテなさそうなファッションとオーラが漂っているが、所謂……
①ダサい
②顔に難アリ
③体型に難アリ
④性格はオドオド(実は純粋)
みたいな『電車男』的なモテなさそうな男ではなく、見た目に難はある上に確固たる曲がった意地と非モテの怨念で理論武装し、常にスカウターをつけて周囲の人間の人間力を測り、常に「俺の方が賢いな」と自信を持つタイプだ。そしてこういうタイプの言う「賢さ」とはいかに理屈をこねたか、にあるため、基本的に論破することに快感を見出す。意外とケンカっ早く、勝てると思った相手には自慢の論破を食らわすが、勝てない相手には「あしらう」という形で勝負を避けるが、その判断が「賢い自分」になるため実質無敗である。成金社長にありがちなタイプである。
「ちょっとこっち上がれ」
「おい何をする気だ」
「え? 余興だよ余興。陣内とかリーベルトみたいなバカと違ってこっちは頭を使ってるからさ、多少休みが必要なんだよ。ほら、筋肉も使わないと筋肉痛は起きないっしょ? 脳使わない人にはわかんない感覚だと思うけどさぁ。お前名前は?」
「まずお前は俺をお前呼ばわりはやめろ」
「じゃあお前は村人Aでいいや」
星野大暴れ。そして村人Aもステージまで上がってきちゃってるので、星野とやりあっても勝てる気はしてるのだろう。
「村人Aはここまで誰推し?」
「あぁ? 花屋敷だよ」
「つうかお前一人でこんなの観てんの? モテなさそー」
こんなんもう半分辻斬りだろ。かくいう星野も、村人Aと同じく「賢い自分」に酔い、自分の拠り所にしている同じタイプの人間だ。星野、モテなさそー。
「うるせぇな。てめぇこそ刺身のツマにもならねぇプラスチックの菊だろうが」
「刺身の皿ってのはもう完成されたフォーメーションなんだよ。刺身、ツマ、プラスチックの菊。へい村人A! 花屋敷のどういうところ応援してんの?」
「あぁ? なんでてめぇにそんなことを言わ……」
「花屋敷! まずはお前から血祭にあげてやる!」
「なんだコイツ!」
イライラする村人Aのボルテージに比例して星野がイキイキしていく。
「なんで自分がモテないか考えたことある?」
「そりゃ俺がブサイクでだせぇからだろ。いいんだよもう」
「そういうなって」
星野が村人Aの肩に手を回してニヤニヤ。仮にも女子からのボディタッチで少しロマンス風味。
「一緒に考えよ? モテる人生。見てみなってぇこのステージ。モテモテ女子が4人に、既婚者2人。モテ男もいる。相談のるよぉ。みんないい印象が欲しいしめっちゃいいアドバイスするよ。ねぇ円谷くん」
「うん? いいよ」
円谷くん、と聞いた途端に村人Aからロマンス風味が消える。やっぱり自分にロマンスはない! と悟ったのだ。
「アイツに指図は受けない。しゃしゃり出んな、顔面がいいだけのハリボテ風船クズ野郎」
アッハッハッハと星野が悪の爆笑。少しいい気になる村人A。おいマジか……。星野がはニートラップだと!? 非モテの闇は深いようで浅い。きっと村人Aはモテなかったあまりに「女子は女子」とでも思っているのだろう。自分をなんとなく気に行ってるような気がする星野がいるのなら、同じように自分を気に入るもう少しマシな女子がいる、自分にも可能性は0ではないとでも思っているのだろうが、女子にも悪人はいる。男子がピンキリなように女子もピンキリだ。異性交遊に既に満腹な男子が「女子なら誰でも」というと聖人君子になるが、モテない男の「女子なら誰でも」は間違いなくクズ! しかし村人Aは「女子なら誰でも」にすら至っていない。「え、女子が俺に興味を……?」の段階だ。
「ツラの生まれがいいなんてくじ引きだろうがそんなもん! くじ引きなんだよくじ引き! それにくじ引きの当たりを引いた男に群がる女なんて賢くない。宝くじが当たったとたんに増える親せきみたいなもんだろ? でもイケメンは生まれてからずっとチヤホヤされてるからそのありがたみすら自分でわかってない」
「うん、頑張ってる頑張ってる。村人A頑張ってるよ。イケメンは所詮満腹ボクサー! わたしにも雨宮やリーベルトの気持ちなんてわかんない。向こうもこっちの気持ちなんて一生わからない。だから頭使って生きてくんだよ。それにイケメンやモテるヤツのアドバイスなんて所詮、そいつらが最初から立ってたスタート地点にすら至ってない人間には何の足しにもならない。よかったよかった。え、円谷くんがアドバイスしてくれるんですか? ありがたみ~とか言っちゃうようなバカッタレに応援されてたら花屋敷がかわいそうだ」
ここまでは星野の見事な村人A転がし。村人Aは転がされていることに気付いているのか? だが重要なのは村人Aのロマンスじゃない。転がした村人Aで星野が何をするかだ。星野の好み、傾向としては、雨宮の援護・強化じゃなく、他チームの妨害・弱化。宣言通り花屋敷を血祭りにあげるのか?
「でももうちょっと頑張ってみようって思わない?」
「思わない」
「お、きっぱり」
「俺は家柄がいいから就職したらお見合いを親戚に組んでもらう。それで断られても俺のせいじゃないから傷つかない。そもそも俺は女が怖いとかじゃない。ケンドーコバヤシが言ってたように俺は女が好きなんじゃなくて女体が好きなだけだ」
筋金入りのドクズじゃねぇか! 星野、最高の化け物見つけてきやがった! どんな審美眼だ!
「やっぱり傷つきたくないんだね。だけど村人A! ちょっと考えてみよう。わたしやお前はあっちの頭部の顔と呼ばれる表面だけがいい人間と違って中身勝負の賢い人間だ。つまり、こうだ。お前は自分がモテないと思っている。だから告っても断られると思ってる。だが待てよ。それってつまり、お前の考えは正しいってことだよね?」
「はぁ?」
「いや、だから女子に告ったら断られるという“答え”を得ているお前が、告って断られたところで、それはその“答え”を証明しただけ。つまりお前の賢さが正しかった証拠になる。逆に、告ってOKされたらお前の“答え”は間違っていた上に、彼女を代わりに得ることになる。彼女がいたら大変だよぉ~。気を使うし、男が奢って当たり前的なことを考えてる女子も普通にいる。高校生ならまだ割り勘だったり、プレゼントの負担なんかが少なかったりするけどもう大学生。デビューが遅い分、覚えなきゃいけないことも多いのに駆け足で覚えなきゃいけない。それに自分の中の確固たる“答え”はそう簡単に揺るがないけど、“彼女”は相手次第で簡単に消える。それこそ円谷くんみたいのが近くにいればすぐ消える。これは面倒くさい。それこそまさにケンドーコバヤシの金言通り。でもでも~? 意外と女体だけじゃなくて女もいいかもしれない。告って成功すれば女体だけじゃなく女を愛せるチャンス、失敗しても自分の賢さを確信するだけ。つまり、村人Aはノーダメージだ! つまりそれも一つの真理。世の中のギャンブルはみんな勝つ方に賭ける仕組みになってる。でも自分の勝敗ぐらい、負けに賭けたっていいじゃないか。自分で自分の負けに賭けて、八百長で負けても誰も文句は言わないよ」
「!?」
「考えていただきたぁい~」
「……無理だな。無理だ。俺が恋をするなんて、それは、テレビで新垣結衣を見たヤツがマジで新垣結衣に恋をするようなものだ。相手は傾国揃いの芸能界でも特に美女、そんなのにマジで恋をするのはあまりにも現実離れしすぎている。つまり、恋心なんてものは自分の立場が分かってれば燃えもしないものなんだよ。本気で新垣結衣に恋するような奴は狂人だろ。お前だって菅田将暉にマジで恋して結婚したいって思ってる女子、冗談じゃなくてマジで言ってる女子見たらコイツ頭イカれてやがるって思うだろ?」
「わたしは佐藤健派」
「お前の好みは聞いてねぇんだよ! 物の喩えだろ!?」
村人A、見事に誘導されてキレイなツッコミ。調子に乗らされている。星野の口車と調子に乗っている!
「芸能人ならそりゃ新垣結衣や佐藤健に恋しても頭大丈夫だろうよ。だけど一般人が言ってたら狂人だろ。俺からしたら周囲の女子はみんな芸能人レベルなの! 恋しただけで俺は狂人なの!」
「なんて硬い意志だ! まるで硬い石の代名詞ダイヤモンドのような硬さ! だが自分でももうわかってるんだろ? 断られても、“自分は恋をしてはいけなかった”、その答え、その意志だけは揺るがず村人Aに必ず残る。だから玉砕にはならない。ダイヤモンドは砕けない! さぁ村人A! 好きな女に告るがいい! そしてその女体を得るがいい!」
「……花屋敷さん」
村人A、星野のダルい絡みから逃れたかったのか、それとも本気で背中を押されたのか、花屋敷の顔を一瞬見つめるが、すぐに気持ちで負けて控えめにうつむく。
「もし、よかったら俺と付き合ってくれませんか……」
「……ごめんなさい」
……。
「……ッ!!!!! ……」
村人A、怒りと悲しみと後悔の念が入り混じった凄まじい呪詛の表情を星野に向ける。
「残! 念! これ参加賞のチュッパチャプスな。お前、まだ参加賞すらもらったことないだろ? ダリが包み紙のデザインしてるからこのアメ高いんだよ~」
「星野、てめぇ……」
「自分の負けに賭けて八百長で自分を負かしたってことで留飲を下げてくださいなぁ。お前の自己評価は正しいよ」
血祭りに上げられたのは村人Aだった……。なんだこの公開処刑。花屋敷は何にも悪くない。むしろ村人Aは稀に見る事故物件だったので告られて受け入れる方がおかしかった。つまり! 星野は絶対に断らなきゃいけないような事故物件を見つけ出し、唆す過程で花屋敷に村人Aがいかに事故物件かわからせたうえで告らせ処刑! 一応、花屋敷本人も、ガードが硬いから、応援していてもチャンスはないと悟らされたので、前フリも効いて「芸能人気取りか」と応援が減る可能性がある。
「村人Aは、まぁ“答え”が強固なものになったけどかわいそうなのは花屋敷。お前の票、一票なくなっちゃったな! 余興のつもりが思わぬ収穫だぁハッハッハッハ! ハーッハッハッハッハッハ!!」
星野が志々雄真実のような高笑い。雨宮さんと桜井を使わずに独力でもこの悪行。ゲームを使わず花屋敷から一票奪い取った。血祭りとまではいかなかったが、着実に花屋敷にダメージは与え続けている。
「まぁ、まだそれでも参加賞が欲しいんならその時はダリのアメあげるよ。アーハー。さて、余興はこんぐらいにして、花屋敷! 引き続きお前を血祭りにあげてやる!」
まだ終わらないのか……。





