【もう出ねぇ! 五・七・五の! 在庫がねぇ!】第14話 学祭バトルレボリューション その14
「花屋敷。まずはオマエから血祭にあげてやる。次の競技は、“大変身”だ!」
第7ラウンド “大変身”
「“大変身”?」
「なんでもいいから今の自分以外に変身して一番スゴかったヤツの勝ちだ!」
ザックリしてる。やっぱり星野はアホなのか? それとも悪辣なのか? 現状、良崎チーム、雨宮さんチーム、水原さんチームで競っていて実質内輪ネタばかりなのだが唯一の外様、花屋敷チーム。変態デンテストでキレちゃってからもなんとなく場に馴染めず、テンションやモチベーションがイマイチ上がり切っていない。そこにつけこむ、ヒーローショー研究会の十八番であるはずの大変身。だが! ここまでにもうアブソリュートマンレンマとメガバシャーモに変身をしたので、今まで通りの変身だとマンネリは否めない。得意ジャンルだからこそ潰せる。
「30分後にここに集合な」
30分後。
「どうも。マッスルドラえもんです」
「ヒゲのび太です」
「イケメンのスネ夫です」
「しずかちゃんでございます」
マッスルドラえもん→マスカラスマン
ヒゲのび太→小林氏
イケメンのスネ夫→円谷栄治
しずかちゃん→良崎
マスカラスマンは青い頭巾、良崎はおさげにピンクのワンピース、小林氏、円谷くんはまんま。
「ヒロインといえばしずかちゃんでしょう。ねぇドラちゃん」
「ああ。ラムちゃんとかナミとかといろいろヒロイン談義はあるが、そんなヤツらもしずかちゃん、の一言で黙らせることが出来るからな。みんなしずかちゃんが大好きだ」
「やぁん、もうドラちゃんのエッチィ~。ッこれで勝負させてくださいよ!」
ペシペシと控えめにマッスルドラちゃんをしばくしずかちゃん。しずかちゃんスゲェ。しずかちゃんを名乗る、しずかちゃんの姿をするというこの偽しずかちゃん、それだけで良崎のバカさや暴力がかわいらしく見える。確かにしずかちゃんは理想のヒロインだ。だがちょっと無理と感じている節はありそうだけど。
「あら~。のびちゃん、ドラちゃん~。どら焼き買っておいたわよ~」
「そういえばのび太ママとしずかちゃんの絡みって見たことねぇな。嫁姑戦争が始まるのが早え!」
水原さんの“大変身”はただの私服。だが水原さんは罰ゲームでいつも軍人の服装をさせられていたので水原さんの私服というのは非常に珍しく数えるほどしか見たことがない。星野チームや花屋敷チームは見たことがないはずだ。しかもエプロン! 完全に私服だ。実家の喫茶店のお手伝いの恰好。下町の看板娘だ。それに加えて水原さんが素で持っているしずかちゃん的な優しさとおしとやかさ、母性! しずかちゃんは小学生だが、しずかちゃんが大人になったらこうだろう、という姿がまさに今の水原さん。良崎のしずかちゃん、完全に食われる。というかフリになってしまった。いいなぁハイジさん。
「じゃあ次、花屋敷」
謎の輪っかを持った花屋敷が両肩を閉じて力を溜めてから、輪っかを持った左腕をバーンと突き出し、その輪っかにヒーローがプリントされたカードを通す!
「ベジータさん!」
「ベジータ!」
スクリーンには、謎の空間に佇む花屋敷の映像。そしてその右隣にベジータが登場。花屋敷がカードを通してカードの名を呼ぶと、黒子がさらにアナウンス。某トラマンオーブの変身バンクだ。あの輪っか、オーブリングか。
「フリーザさん!」
「フリーザ!」
今度は左にフリーザ。並んで映るベジータとフリーザ(第一形態)と花屋敷。
「暴言と敬語、お借りします!」
「フュージョンアップ! 花屋敷ヒナタ! “イミテーションリーベルト”!」
スクリーンのベジータとフリーザの影が花屋敷の影に重なる。そして黒子の口上の後に映像が消え、リアルの方の花屋敷が急にやる気をなくしたようなグダった姿に。面倒くさそうな表情になり、雨宮さんにガンを飛ばす。そして急に高笑い。
「ハァーッハッハッハ! お前程度でわたしに敵うとでも思っていたんですか雨宮! 頭が高いですよ!」
ハイジさんと星野と小林氏が爆笑。
「ゲラゲラうるさいですね! 少し静かにしなさいよ! お前の妹イメチェンさせてやりますよ! 悪い友達いっぱい紹介してやる!」
止まらない爆笑の渦。ベジータの口調+フリーザの口調=良崎の口調。言い得て妙!
「フュージョンアップ!」
「急にどうしましたぁ! このオモチャ壊れちゃったんですか? オモチャが急にしゃべんじゃありませんよ! 勝手にしゃべるオモチャはチャッキーだけで十分です! おい星野、星野! 代わりの持ってきなさい!」
黒子にローキック。
「フュージョンアップ!」
「ぶっ壊れたんですかねぇ! プロレスがー。プロレスラーがー」
あの品行方正で健やかな花屋敷でさえ「ダメ人間」に上書きする良崎の普段の行いよ! その上書き力はしずかちゃんのそれを上回る。それが正の人間と負の人間の違いだろう。正の人間になることがジェンガを積むことだとしたら、負の人間はジェンガを崩すこと。崩すことは積むことよりも断然容易い。ダメな人間になるのなんて簡ッ単だ! だから花屋敷! お前はこっち側に来てはいけない。良崎に変身というのはいいアイディアだし実際完成度も高いが、ちょっと小ばかにし始めたのはよくないぞ。
「ルールがブレちゃってるじゃないですかぁ」
そして本家が愚痴。
「その場で変身するのか変身してからここに来るのかのルールも設定されてない中でこんなことやってんですよ。そりゃあ変身の過程を見せる方がインパクト強いに決まってるじゃあないですか」
「おいしずかちゃんはそんなこと言わないぞ。それにお前のその変身の過程っていうのはただの着替えだろ」
「やぁんもうドラちゃんのエッチィ!」
マッスルドラちゃんにバァキィっとフォークリフトの激突のようなローキック。しかしマッスルドラちゃんもスネでカット。フォークリフトの激突はマジで危ないからな! 「最低でも骨折」というレベルだ。
「よし、じゃあ行くぞ雨宮! では、今から雨宮断髪式を開始する!」
「!?」
ガラガラガラと桜井が謎の金属球がついた装置をアスクルの『現場のチカラ』ブランドの台車に乗せて持ってくる。そしてその後ろからカンフー服に身を包み、七星剣を持った男性が。
「えー、雨宮には、この最大16万ボルトの電圧を作れるバンデグラーフ装置に触れてもらい」
「16万!?」
「静電気で逆立った髪をこの少林散髪拳の達人チュンさんが七星剣で切っていくという訳だ。文字通り身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ! 雨宮、ショートカットに大変身!」
16万ボルトからの七星剣は二度死んでおかしくない。007は二度死ぬが、雨宮さんは一回も死ねないはずだ。感電死と斬殺! 円谷親子の必殺技をこれから同時に食らう雨宮さんの心境やいかに。
「ニーハオ。ローメイシー」
「おい呂明賜って言ってるぞ。本当に大丈夫かぁ?」
※呂 明賜-読売ジャイアンツ (1988 - 1991)、通称「アジアの大砲」
「大丈夫だ心配するな陣内。ハラハラはするが致命的ななんかは起こらないはずだ。それに雨宮は『ヴァンゲリ』の運転手をやったこともある」
「パイロットな」
「だから死にはしない」
「やめておけ星野。女の子の髪を切って見世物にするとかやってることがジブリの悪役だ」
「だからこそこれがビシィッと決まった暁にはお前らなんかゴミのようだ! 行くぞ雨宮ァァァ!!! 身動きすると死ぬぞォォォォオ!」
雨宮さんがマスカラスマンべリアルを脱いでバンデグラーフ装置にタッチ。即座にブワッと髪の毛が逆立ち、チュンさんが七星剣を構える。
「ヨーダイカンー!」
※陽 岱鋼-北海道日本ハムファイターズ(2006年-2016年)、読売ジャイアンツ(2017年-)
バッサバッサと大振りで七星剣を振るうチュンさん! しかしこけおどしではなく、少しずつだが雨宮さんの髪の毛が舞っている。もう雨宮さんの顔には人の心が残っていない。そもそも年頃の女の子には、静電気で髪が全部逆立つってことだけでも恥じらい対象なぐらい酷なことのはずなのだ。その上、きれいな御髪を~! 星野、本当に女の子の気持ちがわからないやつだ。お前自身もそういう行為の積み重ねで「論外の外」のさらに外にある僻地へ飛ばされるのだ。
「オーサダハルー!」
※王 貞治- 読売ジャイアンツ(1959 – 1980)、通称「世界のホームラン王」「Oh-san」
シャキーンと最後の一振りのあと、雨宮さんが装置から手を放す。そして鏡を覗き込むと!
「わぁ。ちゃんとかわいいショートカットに仕上がってますよ!」
「ああだから言ったろ! 大丈夫だって」
「たまにはショートカットもいいですね。中学の時以来です」
……ちゃんとなってる、ちゃんとショートカットの形としてうまく出来上がってはいるのだ。だがしかし! 未だ雨宮さん自身の口から「ショートカットにしたかった」という髪型変更の希望の旨は一言も聞けていない! ショートカットにしたかった人が、静電気+七星剣でショートカットになったなら、これはイメチェンと演武で一石二鳥だったかもしれないが、雨宮さんの口から髪型を変えたいという言葉は聞けていない! 結果として雨宮さんはショートカットを受け入れているが、それは無理矢理の結果だ! 星野がやってることはやっぱりムスカ! 桜井が目を背けている。やっぱり雨宮さんにとってこれは本意ではなかったのか……。
そしてこれで全員の“大変身”が出そろった。
良崎→“しずかちゃん”
水原さん→“下町の看板娘”
花屋敷→“フュージョンアップ・イミテーションリーベルト”
雨宮さん→“16万ボルト七星剣ショートカット”
「結果発表~」
1位 雨宮チーム
2位 花屋敷チーム
3位 水原チーム
4位 リーベルトチーム
「ぐはぁ。ここに来てついにハマり始めたぞ。星野さんの悪だくみと雨宮さんの不憫な人生の歯車が!」
「ああ。雨宮チーム最強の連携にして基本技、同情票。変身っぷりで言えば花屋敷が一番スゴかった。だが雨宮の不憫を加算すると同情票の分雨宮が得票が多くなる……ッ。ザックリルールもルールが明確じゃないから同情票を集めやすい仕組みだ」
「だが星野さんの悪だくみとわかっていても、雨宮さんが不憫なのは変わりありませんからなぁ。正攻法ではないが、これも立派な手段。不正ではないから、雨宮さんがこのラウンドを取ったということは、まだまだ星野ループが止まらない。3連勝は勢い的にもデカいし、途中観てなかった人も、アレなんで雨宮髪型変わってるの? で雨宮さんに注目してしまう。後手後手だ」
日本原産
星野憂
20歳 ♀
155cm 39kg
「責任とれよぉ陣内さん。勝手にアドバンテージを与えたのはあなただぞぉ」
もう夏休み一緒に海水浴した時の思い出とか遠い記憶になった。星野の悪辣、桜井の朴訥、雨宮の気の毒!





