【エヴァに乗れ 乗らねば帰れ レイを呼べ】第1話 大学ゲバゲバ地帯 その1
「パワリオワー! パワリオワー!」
「キャバァーン! キャバァーン!」
陣内さんと良崎が謎の言語で威嚇し合いながら遊んでいる。仲良いな。
「と、言う訳で俺たちは夏に敗れたあのライバルたちにリベンジを誓って新国立競技場にやってきたが、暇すぎて威嚇ごっこになってしまったという訳だ」
「キャバァーン! キャバァーン!」
良崎さん、威嚇ごっこがあまりにも楽しかったのか人語を放棄。
「あいつらももうすぐ来る頃だろう。あの角で俺たちに見つけてもらうのを待っているのかな?」
「キャバババ……」
「そうだな。お前の言う通りだ。曲がってみよう。……いないな」
「キャバァーン!!」
「わかった。もう少し探してみる」
そうやって「あの角にいるんじゃない?」「次のブロックにいるかも」と探してるうちに気が付いたら新国立から歩いて練馬の大学に戻ってしまっていた。
「リーベルト。気づいたんだけど誰も待ってなかったんじゃない?」
「キャバババ……そういえば誰とも待ち合わせした覚えないですね。勝手に再戦があるって思い込んでましたけど今2月ですよ。何のイベントがあるんです?」
「何やってんだろ。俺らバカじゃね? だっせ。何やってんの。途中で気づけよ」
威嚇ごっこ辞めた途端にスゴイ落差で正気に戻ったな。
「ハァー。会室戻ってサイダーでも飲むか」
「あ、サイダー切らしてます」
「また酒屋に注文しとけ。今日の分はとりあえずそこで買うわ」
「承知の助」
コンビニで大きめサイダーを調達して文学部前を通ってサークル棟へ向かう。その予定だった。
「あれ?」
文学部前に人が倒れているのだ! それも一人じゃない。男子も女子もいるしイケイケそうなチャラ男から清楚な文学少女までボロボロだ。何か大規模な襲撃か戦闘があったような……野戦病院が設けられ、小林さんが手当てを受けながら指揮をとっている。
「どうした小林! 何が起きた?」
「陣内さん……待っていました。文学部の敷地から恐ろしいものが……」
「落ち着け。ゆっくりと話そう」
「ええ。文学部の敷地で植樹をしようという動きがあったんです。緑豊かにしようと……そして穴を掘ったら、出たんです! 伝説の大巨人“不沈の魔督大帝アームストロング”が!」
「何ィ!? “不沈の魔督大帝アームストロング”が!? 説明しよう。“不沈の魔督大帝アームストロング”とは文学部の地下に眠っている宇宙から来た大巨人だ。かつて文学部のOBOGに敗れて調伏され、深い眠りにつき、文学部を守る結界システムのコアになっていた。目覚めるはずがない。仮に目覚めても暴れるはずがない」
「だからおかしいんです……アームストロングは口から戦闘員を吐き出して、文学部を襲っている……。マスカラスマンくんが陣頭指揮をとって突撃した。彼ももう限界だ。陣内さん……頼み……ます……」
「小林ぃいいい!」
小林さん、気絶。
「リーベルト! 戦うぞ!」
「バカ言ってんじゃないですよ。無理でしょう」
ゲホゲホと咳き込むような爆音の後、全身白タイツに鳥を模した仮面の150cmほどの戦闘員が一人、野戦病院までやってくる。
「ガボアガボア! 私はアームストロングの免疫細胞! 異物を排除する!」
「オラァッ!」
しかし有無を言わさず陣内さんのワンパンチで終了。アームストロングの免疫細胞、略してアー免の両手を縛り、野戦病院に寝かせて頬を打つ。
「ガバッ!? この気は……陣内一幹か?」
「それは俺の先祖。俺は一葉だ」
「ゴボボ……待っていた。陣内の血筋ならアームストロングを救うことが出来る。アームストロングが病にかかった。体内に病巣があり、それと戦うべく細胞が暴走している。アームストロングを治せるのは文学部の中でも伝説の血筋を持つ者のみ。陣内家はその一つだ。アームストロングの病巣を取り除けば結界システムもアームストロングも正常に戻る。頼む、アームストロングの体内に潜って病巣を……」
「しょうがない、装備を整えて行くか! マスカラスマンへの援軍に向かう。兵隊と装備を集めろ」
陣内さん、出陣! 野戦病院の空気が変わる。士気が上がったのだ! 帽子を脱いでヘルメットをかぶる陣内さん。良崎も決意したのかメットを被る。リーダーだけにはやらせんぞと、まだ戦える分学部生たちも手近のメットを手に取った。
「寒いな」
「ええ、テンションが上がっても気温が上がりません。それにアームストロングの中は寒いかもしれません」
陣内さんと良崎がヘルメットのストラップにマフラー、タオルを通す。これなら首元も寒くないな!
「未知の病巣だという。マスクを忘れるな」
「……」
「よし、なんでもいい。武器をとれ! もう戦えない奴はバリケードを」
……。
ヘルメット、ストラップに通したタオル、マスク、その辺に転がっていた角材を装備した大量の大学生。しかも大きなものと戦いに行くのだ! ヘルメットにマフラーを通した時点でマズイと気づいた良崎の勘は正しかった。
「陣内さん……これはマズイ……。大学でこの恰好はマズイ! 大学にはですねぇ、芸術学部とかもあるからヌードモデルもいるでしょうよ。体育系の人は着替えもするでしょうから、裸はまだしょうがない。だから大学でこの格好は裸以上にヤバイですよ! だってその棒っきれがもう、棒っきれじゃなくて“ゲバ棒”って呼べるものになってますもん! この格好でゲバ棒持って戦いながらバリケードはマズイ!」
陣内さんのご先祖もここで学んだということなのでこの大学の歴史は相当長い。1960年代には学生たちの気力が燃え上がったこともあるだろう。2020年代になっても学生たち、いや、若者たちの行き場のない暴力衝動。それが文学部生に火をつける。
「ウォオオオ!」
陣内さんが角材を持って文学部の庭に突撃。闘士たちも角材で続く。
「アームストロングだ!」
信じられないことに庭から頭部だけ露出した巨人が埋まっていた。頭部だけで30mはあるぞ。これがアームストロング……。アームストロングが咳き込むと戦闘員が排出されるようだ。
「オラァッ!」
角材で咳の飛沫をぶん殴る! 後方から合流した闘士が丸太の破城槌でアームストロングの歯を突破し、陣内さんと良崎が体内へ。
「マスカラスマーン! どこだー!?」
「待ちなさい、待ちなさい! あなたたちは誰ですか!?」
赤い帽子をかぶった140~150cmの若者たちが陣内さんを制止する。アー免よりもひ弱でやわらかい物腰だ。
「マスカラスマンをどこへやった!?」
「マスカラスマン? 僕たちの管轄じゃありません! 僕たちはアームストロングの赤血球です!」
本当の赤が出てきちゃった。





