【その狂気! 貴様は断じて トキではない!】第14話 48時間精神と時の部屋体験 その13
「次」
テロリロリロン!
「愛などいらぬ!」
デコに宝石を埋め込み、やたらデコデコしたタンクトップの世紀末ファッションの男がピン。
「愛など、いらぬ!」
ハイジさんと円谷くんがヤバイ。
「愛などいらぬ!」
押し通す気か!? しかし、「愛などいらぬ」ゴリ押しを見抜かれたのか、ハイジさんと円谷くんも落ち着きを取り戻す。
「イかぬ! 勃たぬ! 相手いぬ! 愛など」
カンカンカーン!
ヤクルートレディ姐さんが強制終了ボタンに拳を叩きつけ強引にカーテンを下ろす。その顔は牛角食べ放題開始15分目ぐらいの炭のような真っ赤っかだ。下ネタに……厳しい訳ではないのではないか?
「え、ヤクルートレディ姐さんまさか」
「ななななななんだってんだい!?」
ヤクルートレディ姐さんが急にラブコメ仕様に!
「下ネタに弱いのかな?」
「だ、だからなんだってんだい!?」
「おやおやおやぁ~?」
「や、やめな! アタシはこれでも悪学部で一番の悪なんだからね!」
ハイジさんのセクハラに特攻コートの袖で真っ赤な顔を隠すヤクルートレディ姐さん。照れるヤクルートレディ姐さんが妙にかわいく見えちゃったのか、良崎と星野が笑いをこらえるためか顔面に力を入れすぎてグレートムタのように表情が歪んでしまっている。
「大丈夫だよヤクルートレディ姐さんちゃん」
「あ? テメーに話は振ってねぇんだよ。近づくんじゃねぇ。軽薄が移るんだよハリボテ風船クズ野郎」
円谷くんには辛辣! というかきっとそういうところですよヤクルートレディ姐さん! 自分の手に届きそうにない異性となるともう異性と認識せず、「お堅い」と「お高い」を間違えてしまうその構え! ヤクルートレディ姐さんは化粧は濃いがどちらかと言うとキレイめな顔立ち、スタイルもよく生真面目で性格もいい。きっとモテるはずなのだが、無関係な下ネタにも過剰に反応してしまう恥ずかしがりや! 彼女の場合は異性ラインが低い方が弱く、弱い下ネタにも過度に反応してしまい、程度の低い男は対象外となる。しかし円谷くんクラスの男になると、男女関係への不慣れや苦手意識が無意識のうちに昇華された拒絶反応を起こす。よってヤクルートレディ姐さんのストライクゾーンは非常に狭い、ということになる。この手の人は割かし異性の友人は多いのだが、根底には恋愛への臆病さがあるため、基本的にはモテない同士との傷のなめ合いである。もちろん、相手も似た系統の相手のため恋愛には発展しない。
「アタシは悪なんだー!」
自らに言い聞かせるように。そう……自身が悪だから、モテるはずなどないのだと。
「大丈夫。大丈夫だよヤクルートレディ姐さんちゃん。みちるちゃんだっ……」
「テメーに話は聞いてねぇっつってんだろ。そもそも外様の社会人が何を大学のお遊びにキャッキャしてるんだ。自重しろ。恥を知れ」
辛辣! そしてヤクルートレディ姐さんも落ち着きを取り戻す。タカギくんが丸メガネを外して丁寧にレンズを拭く。
「えー3点」
「んッ」
出だしのバイオリンがいい音出したんですの、と染み入る名指揮者のような感じで雨宮さんが身をよじらせエロい吐息。
雨宮―退学
「次行くぞ」
「次も下ネタ来ちゃったらどうする~?」
「アタシが強制終了するまでだ」
ヤクルートレディ姐さん、乗り越える!
「次」
テロリロリロン!
「どぉうもーっ!」
さっきまでの雑魚芸人とは声量、声質ともに異次元の高さの芸人が登場。二人とも青のスーツでキッカリ固めた本格派の正統派漫才師に見える。見覚えがあるぞこの二人!
「ぶはぁ」
タカギくんが噴き出した。
「高城と高城だ」
高城、高城とは、高城くんがリーダーを務めるお笑いトリオ、ミツビシのメンバーである。しかし、タカジョウとタカシロは二人で漫才ネタを披露する時、別名義のメルセデスとなるのだ! しかし、ネタを書いているのは実際には演技しないタカギくんである。
「俺の書いたネタで俺を笑わせようってか。やってみろ」
お笑いへの熱・ハードルが高すぎるために学内で笑ったことのない男、タカギくん。今、自分のネタで初笑いとなるか!?
「こう芸人やってると面白い話の一つでも欲しいもんですよ」
「ああ僕いい話持ってます」
「いいじゃない。じゃ聞かせてみて」
「そう。ワイフがこう言ったんだよ! 見てアナタ、このコ、ポップコーン食べてるわ! って! ハハハハッ!」
トン。ツッコミのタカジョウくんがタカシロくんのおでこに少女漫画のイケメンがやるような人差し指でコツンのアレ! あれは暴力的に見せないことに定評があり女性相手にも使えるメルセデスオリジナルのツッコミ、通称“ロマンチックツッコミ”!
「過程を話してくださいよ! いきなりオチじゃ笑えないから過程を!」
「まぁ今はワイフとジョンの慎ましい二人暮らしですけど」
トン。ロマンチック!
「家庭じゃなくって過程! なにゆえそうなったのか! 過ぎ去った程の過程!」
「昔はロマンチックな二人だったんですけど。まぁあっちの方はグロテスクなんですが」
「そのジョンとワイフの過程じゃなくて、話の過程だって!」
「話が家庭を持つはずないじゃないですかぁ。人間じゃあるまいし。戦艦とか日本刀とか擬人化するうちに日本人は笑い話まで擬人化するようになっちまったのかい? そのうち話がポップコーン食べ始めるんじゃないですか? それでそれを見て見てアナタ、このコ」
「ポップコーン食べてるわ! じゃねぇ! ロマンチ~ック! ガッディム! なんでお前がジョンの方によってくんだよ! 無駄なのこの時間! バルタン星人とドラえもんのじゃんけんぐらい無駄!」
優しみ溢れるほほえましい表情のタカギくんが急にブチ切れて顔を真っ赤にする。どうやら無断でネタの改変があったようだ。
「ふしゅる」
「んあんっ」
怒りを蒸気にして噴き出すが、ネタは遮らない。しかし、タカギくんがツボってしまってどうしようもない雨宮さんを仕留めるには十分!
雨宮―退学
「エロいなぁ栞菜ちゃん。……クソッ」
「っ」
円谷栄治―東京都追放
桜井―退学
円谷くん、自滅!
「もういいよ」
「ありがとうございました!」
なんだかんだでネタ完走。『お笑いのシカク』シリーズでは初めてのネタ完走となる。
「えぇ、大変お見苦しいものを。タカジョオ! タカシロォ! 俺の台本汚しやがって! いやぁ本当に申し訳ない。なんでアレンジしたんだ? 一言相談があってもよかっただろう。まぁよしとしよう。アレンジ後のネタは、70点。俺は、一発ギャグもやりたいというお前たちに寄り添ってロマンチックツッコミを考案した。コントの方ではお前たちが俺に対していつも譲歩してくれているのは知っている。だが! 雨宮一人笑わしたぐらいでいい気になるなよ! お前たちは普通にやればこんな程度じゃない。そうだよな!? 雨宮!」
「カカカカカッ」
陣内―退学
「クンッ」
小林―退学
「ふぉお」
良崎―退学
「ツッ?」
マスカラスマン―退学
「ぴぃ」
星野―退学
「っ」
桜井―退学
「んはぁっ」
雨宮―退学
「むぅ」
円谷栄治―東京都追放
「んんっ」
ヤクルートレディ姐さん―千葉県追放
絶滅!





