【その狂気! 貴様は断じて トキではない!】第13話 48時間精神と時の部屋体験 その12
~笑ったら即退学・お笑いのシカク ルール~
・お笑いサークルを名乗る資格もない最弱の刺客がネタを披露。笑ってしまったら即退学となる。すでに卒業した人、他大学の学生などは現住所か職場のある都道府県追放。
・ヤクルートレディ姐さんが「これ以上のネタ披露は無理」「下ネタ」と判断するとネタが強制終了される。
・各芸人のネタの後は学内お笑いグランプリ優勝のコント職人・ミツビシのリーダー高城くんから講評をいただく。ここは厳密には刺客のネタではないので笑ってもよい。
「次どうぞ」
テロリロリロン! Tシャツを来た肉付きの良い男二人組が。
「え~、プロレス技をGoogle検索するとよく出てくる、テンションに温度差のあるプロレス技講座の動画やります」
ここでプロレスサークルの主将・マスカラスマンと筋金入りのプ女子良崎、新入りプ女子の星野が反応。プヲタは新入りに寛容だ。なにせ新日のオーナーが買収時に「古参のマニアがジャンルを潰す」とまで言ったからな。
「まずは蒼魔刀」
ロン毛の赤シャツが説明を開始すると短髪の青シャツがしょんぼりし、うつむく。
「え~、蒼魔刀は、DDTプロレスリングのHARASHIMAが使用する技でぇ……」
YouTubeにありがちなモゴモゴ口調。
「では、実践します」
赤シャツが手をチョチョイと下げ、青にかがめと合図すると、死を決意したように青が膝をつく。そして、赤が助走をつけ、ジャンプ! そのまま膝版ドロップキックを食らわせる!
「ショウラッ!」
何故か掛け声はウルトラマンギンガ。
「ショウラッ」
ドグチャア!
(1カメ)
「ガボッ!」
(2カメ)
「ガボッ!」
(3カメ)
「ガボッ!」
(スーパースロー)
「グェブホォオォォ」
青が仰向けにぶっ倒れのたうち回る! 技のカタもマスカラスマンと比べても汚く、受け身もマスカラスマン以下! なんたる危険なプロレス芸であろうか! そして元ネタの動画を知っているのだろうか、マスカラスマンと良崎が退学の危機に陥るかなり危険な状態に。
「続きまして、キンシャサ・ニー・ストライク」
「……ッ」
赤はヤル気だが、青はまだ回復が済んでいない。しかしネタは続行! 赤の口上と同時にヘロヘロの青が立ち上がり、俯いて口上を聞く。
「え~、WWE所属中邑真輔選手の必殺技であるキンシャサ・ニー・ストライクは、上体を反らした状態で放つ膝蹴りであり、新日時代はボマイェという名前でしたが、WWE進出後はキンシャサ・ニー・ストライクに改名しました。非常に応用の利く技で、正調、スワンダイブ式、ダイビング式、串刺し式と多くのバリエーションがあります。見た目は非常にシンプルな技ですが、側頭部など当たり所が悪いと地味に死ぬ技としても有名です。WWEではこの技が決まるとキンシャサァ~! と実況が叫びます。オリジナルムーブであるクネクネやイヤァオポーズと組み合わせます。それじゃあ」
赤がエアロープを掴み、ガクガクブルブルと震え始め、キンシャサの前奏曲が開始。テンションを上げる赤の一方で、ヘタクソのキンシャサを食らう予定の青はスーツのように顔が真っ青になっている。
「ショウラッ!」
ドグチャア!
(1カメ)
「ギャフッ!」
(2カメ)
「ギャフッ!」
(3カメ)
「ギャフッ!」
(スーパースロー)
「グェアフゥ~」
「KINSHASA~~~! イヤァオ!」
またもや仰向けに倒れる青! しかし蹴りを振りぬいた赤は恍惚の表情でイヤァオ! やべぇ……これ“入った”んじゃないか。青が胸を抑えて悶え苦しんでいる。本来キンシャサは顔面や頭部に当てる技! 胸に当たる想定をしていなかったのか、赤のキンシャサの完成度の低さに不意を突かれた形でクリーンヒットォ!
「え~続きまして」
「!?」
ヤクルートレディ姐さん止めないんですか!? と青シャツが懇願の入り混じった表情をヤクルートレディ姐さんに向けるが、ヤクルートレディ姐さんは断固続行!
「武藤敬司選手のシャイニングウィザード」
「!!!」
「え~、シャイニングウィザードは、片膝をついた相手の膝を踏み台に駆けあがり、顔面を蹴り上げる大技です。別名は閃光魔術。しかし技の威力が高すぎるため、技の使用者に負担が大きくかかり、現在は形が変わっていますが、今回はあえての高威力な初期型で行きたいと思います」
良崎から歯が覗く。シャイニングウィザード初期型! 非常に危険な技である。どれほどかと言えば、マスカラスマンのシャイニングウィザード初期型でさえ円谷英雄を一撃で蹴り倒す威力であり、マスカラスマンが膝を負傷するほどである。
「ショウラッ!」
ドグチャア!
(1カメ)
「ーン!」
(2カメ)
「ーン!」
(3カメ)
「ーン!」
(スーパースロー)
「ーンー」
「ウィ~! 絶対に真似しないように!」
赤シャツが武藤敬司のプロレスLOVEポーズ。しかし断末魔からも察することが出来るように、青シャツ、ついに失神! 一方的にプロレス技の的にする凄惨ないじめの構図に桜井、雨宮さん、円谷くん、ヤクルートレディ姐さんが顔をしかめる。本人たちの技量が低すぎるゆえにこれはいじめなのだ! 蒼魔刀、キンシャサ、シャイニングウィザードと膝蹴りばかりであり、打撃技故に受け身や手加減の高い技術も求められるが、この二人はそれができないどころか、難易度の高い技ばかり! しかも赤シャツは青シャツが死なないとでも思っているのか外すことなくしっかり当てている。そして青シャツが意識を取り戻したところで!
「えー続きまして男色ディーノ選手の……」
カンカンカーン! ヤクルートレディ姐さんの強制終了! そうだな。男色ナイトメアでも出された日にゃあ、まだウブなぼくらの憂ちゃんや栞菜ちゃんが性に対しトラウマを抱えてしまうからな。
「20点ですね。芸風を根底から否定することになりますが、これをよしとしちゃあいかんでしょう」
「くぅ」
「なんすか?」
「なんでもねぇよ。続けてくれ」
採点システムなどなかったのに勝手に導入したタカギくんにハイジさんギリギリの状態。
「プロレスに関しては門外漢ですが、アレが危険っていうのはわかります。お笑いに関しては専門家ですが」
「こぉお」
「なんすか!?」
「なんでもねぇよ。続けてくれ」
「お笑いとしては本当に危険すぎて、笑えないんですよ。彼らお笑いサークルですか? パシフィックの」
学内にはセントラルお笑いサークルとパシフィックお笑いサークル、二つの最大手が存在する。セ・パは学祭などで選抜による学祭シリーズを行うが、あまり交流はないようだ。タカギくんがリーダーを務めるミツビシはセ所属である。そしてどうもパの方はイロモノが多いようだ。
「あれを笑いにしてはいけない。小さい子供が真似したらどうするんですか。そういうところも考えてネタは作るもんですよ。そういう理由で20点です。体張った頑張りは認めますが、お笑いの基礎は何一つ踏まえていない。プロレス好きの人にも今のはよくないって映ったでしょう? 冒涜ですよ冒涜! プロレスが危険ないじめだと思われていいんですか!? 影響力を考えてやらないと」
「カッカッカッカッ」
陣内―退学
「ぱふっ」
良崎―退学
「なんなんすか!?」
「いや、雨宮笑ってたろ?」
雨宮さんが笑いをごまかすかのように首をブンブン横に振る。
「いえビンビン余裕ですよ! わたしは真剣にやっている人を笑うなんて言うヒドイことはしません!」
だから雨宮さん、そのフリ卑怯だから本当にやめろって……
「彼らも真剣だったじゃないか! お笑いとしてはダメだったが、真剣だったんだ! 少しくらい笑ってやってもいいだろ!」
タカギくん、義憤!
「ぱ」
星野―退学
「ツー」
マスカラスマン―退学
「なんなんだよ!」
ハイジさんの言う通り、ここまで空気読めてないヤツが普段あんなレベルの高いコントのネタ書いてると思えない。





