【その狂気! 貴様は断じて トキではない!】第5話 48時間精神と時の部屋体験 その4
暖簾をくぐって刺客が登場。金糸のシャツにサングラスと男と蛇皮のイカツジャケットを着たヤクザ風興行師の二人。金糸がアニキ分、ジャケットが弟分と思われ、弟分がクーラーボックスを持っている。
「アニキ! ヤツらですぜ」
「よっしゃ。ブチかましたるけぇの!」
こっちは将来大学ヤクザという組織が結成された時にはおそらく幹部入りが確実なハイジさん、星野、桜井が腕組みし、マスカラスマンと良崎が腕組みで金剛力士像のようになっている。
「『牛乳ポーカー』で勝負じゃ!」
~牛乳ポーカー~
「牛乳何杯飲めるか勝負じゃけぇ!」
「それじゃあメシのバケモンと変わりゃせん! まずは自己申告じゃ。相手より多い量申告して飲んだら勝ちじゃ。吐いたツバは飲ませんが、ギブせん限り吐いた分も飲んだうちじゃ。ギブしたら、申告量が少なくても飲んだヤツの勝ちじゃ。実食までは相手の顔色伺いながらドンドン、上乗せしとくっちゅうゲームじゃ。相手がドロップしたら試合終了、ドロップさせた方の勝ちじゃ。ハッタリ利かせてドロップ狙いもアリじゃがフカシすぎは自滅じゃあ。自分が何杯飲めるか賭けるんじゃ! ワシらは博徒じゃけぇのぉ!」
吐いた分も飲んだとカウント、これが我らの鉄則である。
「ワシらに勝ったらまずはメシ、トランプ、4時間短縮じゃ! 2本勝負じゃけぇ!」
「じゃけぇって言っとけばいいとでも思ってんですかね。この中に広島出身がいなかったからよかったようなものの! しかし、マスカラスマンの出番ですね」
説明しよう! 良崎は体力と気力に余裕がある時、刺客に対して優しく立てる状態「接待モード」に入るのだ。
「一番スゲェのは、プロレスなんだよぉ!」
「最後まで聞かんかいダボが! 二人ずつで勝負じゃ! 二人の合計で勝負じゃ! じゃから二人で申告した量一人で飲んでもええ。メガネ姉ちゃん出てこんかい! そのデケェ乳を牛乳まみれにしちゃるけぇのぉ! 白い服じゃのぅ、スッケスケじゃ! こぅ、乳と乳で皮膚と服を挟んじゃるけぇ!」
また雨宮さんか……これがモテモテ力最上級女子……ッ! 強くない性格とありまくりな隙は、意図せずモッテモテのベロンベロンにさせてしまうのか……。不憫だ。
「おい次雨宮にセクハラしたらわたしがお前殺しますからね」
そうは良崎が許さない! タオルにジェンガを包み、ぶん回して即席鈍器にして威嚇。
「そうじゃな。このコップ一杯が大体200mlじゃ。まずはワシが300いったるけぇ! もういっぺん言ったる。二番勝負じゃ! この後もまだもう一勝負あるってわかってやるんじゃ! のうアニキ!」
「……ワシは400じゃ」
アニキは寡黙な御様子。だが! 弟分は300ml、アニキは400。二番勝負で倍にしても二人とも二番目で1リットルを超える。駆け引き勝負か。だが、コンディションに差は生じる。
じぇけぇズ:700ml
「まずぶっ潰す。二番目が出来ないほど叩きのめしてやれば話が早い」
「しかしマスカラスマンさん……。わたしたちは勝ってもまだ44時間残しているんですよ……」
「44時間も休めるって考えろ」
真っ白な部屋の真っ白な牛乳での勝負の牛乳空間でブラック勤務の考え方。
「俺は5杯だ」
「!?」
「1リットルだ」
マスカラスマンはいきなり突き放しにかかったァー!!! その差、アニキと600ml! そして誰より割を食うのは雨宮さん! 「先輩に続け」とは女の子には言えない量だ。
「わたしは……すみません、500で勘弁してください」
マスカラスマン&雨宮さん:1500ml
「レイズじゃ。ワシも1.1リッター行く」
「レイズじゃ! アニキに続いてワシは600じゃ!」
じゃけぇズ:1700ml
「雨宮、お前は次に温存だ。俺はここでつぶれてもいいと思ってる。1.3だ」
その考え方が一番雨宮さんを圧迫してるんだよぉ。先輩に扱われたことがないから後輩の扱いにも難が生じてしまうんだ。
マスカラスマン&雨宮さん:1800ml
「マスカラスマンはもう忘れたんですかね。あの人、今年の初めに大嘔吐かましてるんですけど」
「あんときは3リットルぐらい行ったからな」
ハイジさんと良崎の立ち話にじゃけぇズが反応。
「さささ、3リッターじゃってぇ!?」
もうこれ広島弁じゃなくてお年寄りだろ。
「んあぁ? 知らなかったか? まぁお前ら、俺やこばやっちゃんや桜井避けてわざと女子の雨宮選んだようなザコだからな。ビビるのもしょうがねぇよ。雨宮もスピード勝負で1リットルぐらいなら行けるぞ」
「3リットル飲んだと言っても、複数回吐きましたからね。マスカラスマンに遠く及ばずとも、水原さんもリバースしましたし、あなたたちは牛乳の適量を理解っていない」
額に汗を浮かばせ、劇画調になるじゃけぇズ。
「アニキ、これはマスカラスマンハッタリとちゃいますのん?」
「ああ、無理じゃな。マスカラスマンのことじゃ。吐くけぇ」
ここでイキイキするのが、追い打ちを得意とするイヤな大人、ハイジ&リーベルトである。
「退くのは勝手だ。だが一つ気になったんだが、お前らは何を賭けてるんだ?」
「あぁ?」
「俺らは負けたらトランプも食材も時間短縮もない。だがお前らは負けて何を失う? トランプも食材も時間も、お前らが出すわけじゃない。お前らは何も賭けずにレイズしてるから何も痛くないだろ。そりゃ牛乳を飲みすぎたら具合は悪くなるだろう。だがそれはこっちも同じだろう? フェアじゃねぇ」
「何を賭けろっちゅうんじゃ」
良崎が顎に手を当てる。
「肩パンかケツキックを選びましょう」
「肩パンかケツキックでええんか」
余裕なカンジのアニキに良崎がイラァッ。
「わかってないですね。この人数から一発ずつですよ? それぞれ得意な方で行ってもらうんで、陣内さん、わたし、曽根崎、マスカラスマン、小林さん、星野、桜井、雨宮で計8発ですよ? 女に蹴られると興奮する趣味とかあるならなんとかして電流を流す術とか探しますけど。あ、盛り上がってるところスミマセン。『ドラゴンボールZ』が終わりました。雨宮、ホワイトボード」
「はい」
牛乳の真剣勝負にわざと水を差す。だがそれだけとも言えないのだ。『ドラゴンボールZ』で時間を記録できないことは割と死活問題である。雨宮さんがホワイトボードに線を引き、1時間経過。
「スミマセン、次の『ドラゴンボールZ』も同じ回かが大事なんです。次も同じだったらもう注視しません」
そうこうして焦らしプレイが始まった。そして残念なことに次の回の『ドラゴンボールZ』も同じ悟空の気溜めが始まる。
「もう次のディスクに賭けるしかありませんね。さぁ再開しましょう」





