【その狂気! 貴様は断じて トキではない!】第4話 48時間精神と時の部屋体験 その3
「白い……」
途方もなく白い、精神と時の部屋。見渡す限りの白。そのうち目も慣れるだろうが、今はどこまで部屋なのかわからない白さだ。
「あるものは、ジェンガ、ドミノ、DVDあたりか。意外とキツイかもな」
娯楽関連の情報はハイジさんもご存じなかった御様子。テレビと他にあるものの確認が始まる。
「DVDはかなりあるな。ひぃふぅみぃ……20枚だと!? 一枚2時間として、睡眠も含めれば逆に見切れないな」
それぞれラベルに「2時間」と書いてある。
「時計がありませんよ」
「まぁそりゃ精神と時の部屋だからな。……」
「……」
「とりあえず、DVD観るか」
ハイジさんがディスクをIN。
「『ドラゴンボールZ』だ」
「ちょっと待ってくださいよ陣内さん! それ時計代わりに使えないですか? DVD一枚2時間で、24回繰り返し観れば48時間ですよ!」
「あぁはぁん? 『ドラゴンボールZ』だけで48時間はきついぞ。俺たちは原作のテンポの良さを知ってるからな。ほら観てみろ。悟空の元気集めから始まってるぞ。これは元気集めでこの回終わる」
そうなのだ。『ドラゴンボールZ』のアニメは、原作の進みが早かったため、原作に追いつかないように前回までのあらすじが長い、気を溜めるなどの時間が長いなど、こしゃくな時間稼ぎを多く使う。とにかくテンポが悪い遅延行為に満ちており、原作を知っているとかなりキツイアニメなのだ。
ハイジさん、良崎、星野、小林氏はそのまま『ドラゴンボールZ』を鑑賞。正気に戻ったマスカラスマン、桜井、雨宮さんはその様を見つつ、今後の案を立ったまま練っている。
「CMか」
「待てリーベルト!」
リモコンに手を伸ばした良崎をマスカラスマンが一喝! あまりの声量に良崎がすくみ上る。
「なんですかぁこの!」
「CMを飛ばすな! CMも含めて30分のはずだ。飛ばすと時間にズレが生じてしまう。そのCMは飛ばせない!」
マスカラスマン、完全に正気に戻る!
「なぁるほどぉ。このDVD、全部『ドラゴンボールZ』だとしても、テレビの録画だとCMの量はかなりのものですね。でもありがたいことにこれ、端っこに録画した時刻が入ってますよ」
10:17
「この時間帯だと深夜再放送だな。アニメの神様枠の」
「知ってるんですか陣内さん」
「仕事終わってよぉ」
「わざとらしく仕事とか言わなくていいんですよ」
「ふとテレビつけて番組表開くとたまに『アニメの神様 ドラゴンボールZ』があるんだよ。すると見ちまうんだよな。でも気溜めで30分終わる。でも仕事終わりのいい~疲れだとあぁ、やってんな、ってカンジで趣があるんだよ。風情だな。ほら、俺、家の仕事は今はもうそこそこ主力だから」
ドヤァ。しかしみんなの視線は『ドラゴンボールZ』!
「おいおいマジか。陣内の言う通り、マジで気溜めだけで一回終わったぞ!」
「悪名は伊達じゃあないね。それでもレジェンドアニメなんだから『ドラゴンボール』はすごいよ」
一回目終了。
「じゃあ雨宮。あそこのホワイトボードになんか一回って書いてきてくんない?」
「了解です!」
雨宮さんはまだ元気。壁に下がったホワイトボードに小さな線を引く。
「全部『ドラゴンボールZ』だったとしたら1話ごとに線を引くってなカンジで行こう」
「そうだな。じゃあまだ余白があるうちに現状を確認するぞ陣内!」
サブリーダーマスカラスマン、発つ!
「テレビは30分ごとの砂時計と化した。もう『ドラゴンボールZ』以外観ることは出来ない」
そう言っているうちにもテレレレテレレスパァン! 次の話のオープニングが始まる。
「フライアウェーイ」
「おいリーベルト! 真面目に聞け!」
「ウェーイ!」
「ウェーイ!」
バカな後輩星野と一緒に賢い先輩マスカラスマンを煽る。
「クソッ、こんなヤツらはもう無視だ! 桜井! 雨宮! お前たちは聞いておけ!」
「はい」
くっきり分かれるバカ(良崎、星野)、優等生(桜井、雨宮さん、マスカラスマン)。そしてそのどちらでもなく、年長者というカテゴリにハイジさんと小林氏。この二人は疲れたくないのだ。だから序盤は消耗を最小限に抑える腹積もりなのだろう。
【帰ってきたうぉくのふぉそみつ】
【帰ってきたうぉくのふぉそみつ】
「アレ? ちょっとこれデジャヴだな。このシーン観た気がする」
『ドラゴンボールZ』を寝転がって静観していたハイジさんが何かに気付く。
「『ドラゴンボールZ』の気溜めなんて何週も同じ映像使いまわしでしょう」
あんまり言いすぎるなよ、『ドラゴンボールZ』の気溜め回について!
「いやこれさっき見た回ですよ! 2時間ずっと同じ回のループだコレ! ただでさえ『Z』の再放送なんてキツイのに4連ループ? キッツ!」
「まぁ、もうマスカラスマンの言う通りに砂時計と割り切るしかないよね。音の出る砂時計。ほら、精神と時の部屋もデカい砂時計あるじゃん。あれみたいなもんだよ。とりあえず、マスカラスマンの言う通り設備を確かめよう」
星野が換気扇の下の冷蔵庫とコンロを確かめる。
「うわ、牛乳と白パンとうどんとマズそうな粉しかないよ!」
「そこも忠実にマズそうな粉入れるんですね」
デン♪ デン♪ テーレレレンテレレーレーレー
「刺客の時間です。『演劇サークル』の皆さまは、用意をしてください」
『ドラゴンボールZ』の前回までのあらすじBGMに乗せて鬼畜お姉さんがアナウンス。
「刺客に勝つと拘束時間短縮の上、食料も支給されます」
「マジ? 不味そうな粉とうどんだけじゃ無理だもんな。めんつゆもなかったし。……なぁ? 桜井……。めんつゆなんてないよなぁ?」
星野が桜井に何か圧をかけている。桜井の分のめんつゆをさしおさえて横取りする気か?
「じゃあ刺客と勝負だ!」





