元史朗の過去
ブンブンブンッ! とナイツのスピアが踊る。
「でえいっ!」
キンッ! と竜史は幻無でナイツのスピアを防ぐ。
その隙を突き、竜史が左からナイツに特攻する。
「ぬるいわっ!」
ぐおんっ! とスピアに力を込めつき飛ばした。
「ぬぐうっ……!」
竜史は天井にぶつかり、すぐさま次のナイツのスピアが迫る。
「づえいっ!」
と繰り出したナイツのスピアの先端が、何かにぶつかった。
見ると、竜史の前方に月の扉が出来ていた。
「フンッ!」
イエローの結晶になったスピアの先端をオーラで吹き飛ばした。
パラパラッ……と天井からは大きな破片が崩れてくる。
落ちてくる破片をナイツは避けた。
刹那――。
ヒュン! と閃光の一撃がナイツの腹部を捕らえたが――。
「ぐっ……!」
キンッ! とギリギリの所で、ナイツはスピアで防いだ。
そして、上空に飛んだ竜史がサンライトルナスラッシュを放とうとした瞬間――。
「!? 電磁スピアだったか」
ビリビリビリッ! とナイツのスピアから電流が走った。
「そう、私のスピアは電磁スピアだ……何っ!?」
電撃を一切気にせず、
「サンライトアローッ!」
シュパッ! とサンライトの矢を撃った。
その矢はナイツの左腕に刺さり、左腕が太陽の熱で焼かれた。
「私の腕を……なんという貫通力!」
ナイツの左腕は神経が死に、動かなくなった。
スピアで左腕を落とし、バッ! と後退した。
ガスッとスピアを肩に担いだナイツは、
「……太陽竜史。残念だが、次の戦いが真の戦いだ。貴様がそこまで強くなったからには我々盤上騎士団も力をセーブせずに戦えるだろう。夜天光様も貴様の成長を望んでおられたからな。さらば……」
そういうと、フッとナイツは姿を消した。
べっと血のついた唾を吐いて、
「オレの成長が気になるならとっとと戦いに来い。お前の力は他人の力を吸収してるだけのまがい物だ。どんな力を得ようが、オレ達鬼瓦生徒会には勝てないぜ……ン?」
誰かの口論が聞こえた。
「いいかポーン! バーガーのピクルスはどこから食べても、大丈夫なように並べなきゃならねぇんだ!」
「知るか! バーガーにピクルスはいらねぇ!」
「ケッ! この戦いが終われば、最高のピクルス食わせてやる」
「お前、ピクルスって呼ぶぞ? おっ……見つけたぞ竜史!」
その時、ビジーの背中に乗った兵隊の駒、ポーンが剣で奇襲をかけてきた。
舞い上がった竜史は応戦した。
「決着をつけるぜ竜史! 行くぜ!」
「お前はどこぞの男のように逃げるなよ?」
ポーンはビジーの背中から飛び降り、着地した。
「力は上がったかビジーよ? 時間の無駄だ、二人まとめてかかってこい!」
ビシッ! 幻無を二人に向かって突き出した。
「ケッ! いい度胸だぜ!」
言いつつ、ビジーは空に舞い上がる。
そして、ジャキ! と剣を構え、ポーンは突っ込んだ。
上空からはビジーが、
「ケッ! 今のパワーなら負ける気がしねーぜ! バラバラに刻んでやるぜぇ!」
怒りを吐き出すように迫ったが、瞬きをした瞬間、竜史の姿が消えた。
『――!?』
二人が消えた竜史を探そうとした時、
「ぐおおおおおっ!?」
バキバキバキバキッ!
ビジーの鎧がボロボロに刻まれ、血まみれになりながら空を舞っていた。
一瞬でビジーの後ろを取り、サンライトルナスラッシュを叩きこんだ。
ビジーに見向きもしない竜史は上空からポーンを見下ろす。
「……」
ポーンは口をあんぐりと空け、落下するビジーを見つめた。
グシャア! と受身も取れず、ビジーは頭から落下した。
すでに、ビジーに生命の鼓動は感じない。
「ピク……ビジーーッ! ははは、強すぎるぜ。はははっ! 殺すぜっ、竜史っ!」
二人は閃光となり、激突した。
※
「ぐはっ……!」
ズザアッ! とポーンは床に転がる。
すでにポーンは全身の鎧もボロボロで、息をするのもやっとの状態だ。
だが、ポーンは根性で立ち上がり続けた。
「……はあっ、はあっ。まだ、おわらねぇぜ……」
「根性だけでそこまで戦う姿には関心するぜ。だけど、お前にかまってる暇は無い。これで終わるぜ。覇翔月破!」
「ぐおおおおうっ!」
血まみれのポーンは絶叫を上げ、倒れた。
まだ立ち上がろうと動くが、足が折れている為立ち上がれない。
かすむ目で竜史を見るポーンは、
「……待てよ。ここからが本番だ。今に楽しい戦いになる……」
「そうか」
ガスッ! とポーンの頭を踏みつけ、ポーンは死んだ。
竜史は次の相手を目指し進む。その足に、何かがぶつかった。
「何だ? チェスの駒?」
ポーンを倒した後、竜史はコトンッと転がったビショップの駒を拾った。すると、竜史の表情は一変した。
「記憶が――流れてくる――」
呆然とした表情でただ立ち尽くした。
チェスの駒から流れる意識に、竜史の意識は現実から離れた景色を見た。
目の前には草原が広がっている。青空は、ただただ青い。
そこには少年が居た。
その少年には未来が見える能力があった。
少年の村の人々は少年に色々な事を聞き、様々な災害を避ける事が出来た。
幸福な日々を送る少年だったが、ある日村の長老が死ぬ夢を見た。
――死は誰にでも訪れる。
それを変える事が出来ないと少年は悲観した。
長老が死んだ後、心に安定を無くした少年は正確な未来が見えなくなった。
村の人々は少年を迫害し、少年は英雄から転落し孤独となった。
その孤独は、少年の白き心を一瞬にして黒に染めた。
そして、少年は村の人々を全て殺した。
真っ白な髪になり、血の涙を流す少年を、初老の老人が見つめていた――。
そして、その老人は少年に、
「罪を悔いて死ぬのか? 未来など見えなくても、お前を必要とする者はいる。……気配を消して隠れている部下に気がつくか。びびっているくせに周りが見えているな。……生きたいと願ってみせろ!」
ナイフを首元に当て、震える少年は老人に見入った。
「――うっ! ……あの少年は……? まさか?」
竜史は全身から声を発し、
「元史朗の過去の記憶か? 盤上騎士団は元史朗が作ったから奴の記憶があるのか……」
思いつつ、竜史は進む。




