進む少年
「起きろ。起きろ太陽竜史。起きろっ!」
「……なんだ? ナーコ?」
「コラッ! どこを触ってる!」
「あれっ、ナーコとは弾力がかすかに……デ、デスガール!?」
デスガールの声によって目覚めた竜史は、ナーコと勘違いしていた事に気づき慌てる。
ボロボロの服も新しくなり、体力も回復していた。
機動兵器ゴードに乗り夜天城に駆けつけ、クイーンの放つ白玉をくらう寸前の竜史を救ったデスガールは、竜史を介抱していた。身体の傷が癒えた竜史は、
「……デスガール。まさか僕を助けてくれたのか?」
「フン、アンタを助けにきたんじゃないわよ。あくまで、星史朗を邪魔する夜天光を許せないだけよ。この世界は鬼瓦の物で、いわばアタシと星史朗の物なの。あんな逝き遅れの老人の物じゃないのよ」
「ははっ、言うねデスガール。にしても、この夜天城には魔女には辛いアークフィールドがあるはずだけど?」
「そんなものこのゴードに乗ってればへっちゃらよ。横田のバカは星史朗を誘惑するための事しか考えてないからダメなの。あのタレ乳が!」
腕を組みながら言うデスガールはゴードに乗り、
「地球はアタシと他の連中に任せておきなさい。アンタは夜天光をブッ殺して、星史朗を助けなさい。それで助けた礼はチャラにしてやるわ。ついでに横田もブッ殺しておいて」
「後者は約束できないけど……。ありがとうデスガール。ここは僕に任せてくれ、地球は任せた」
「約束は守りなさいよ。じゃあね」
デスガールを乗せたゴードは、バリアを張りながら夜天城から脱出した。
それを見送った竜史は一息つき、オーラを全開にし、
「ああ、約束は守る。オレにもナーコがいるしな。行くぜ、みんな」
自身の中に宿る仲間達に言い、幻無を手に取り飛んだ。
翼をはためかせ迷い無く飛んだ。
※
その通路の視界に、二人の鎧を着た男が映った。
「おおおっ!」
竜史は一字三月をチェスのビショップであるビジーに放つ。
ビジーはそれを回避し、背中の翼で竜史を狙う。
キインッ! とビジーの翼は幻無によって防がれた。
「チッ! 夜天光様の邪魔するんじゃねーよ! チビがぁっ!」
「オレは太陽竜史だ!」
その二人に、長細い筒のような物が向けられていた。
ドゴンッ! という爆音に、竜史とビジーは振り返った。
『――!?』
驚いた二人は、その場からバッ! と退避した。
ズゴオオンッ!
と竜史とビジーの居た場所に、大きな穴が空いた。
「動くなよ、ビジー」
「オメー! 毎度、毎度、俺ごと敵をバズーカで撃つんじゃねー!」
ビジーは戦闘中によくルークのバズーカで吹き飛ばされそうになる事が多いらしく、ルークに文句を言っていた。
「ビジー、戦闘中だ。話は後でな」
「ケッ! 任務が終わったらすぐ消える奴がよく言うぜ」
グイッとビジーは乱れた金髪を立たせた。
その二人の光景を見ていた竜史は、
(……あの二人はああ見えて、中々の連携だな。一気に畳み掛けた方がいいな)
「月の扉!」
シュオオオッ! と竜史は発光し、周囲に月の結晶の盾を張る。
その姿を見たビジーは、
「何だぁ!? このオーラは?」
ブオッ! とサンライトとルナティックのオーラは飛躍的に上がった。
勢いが増すオレンジとイエローのオーラが周囲に風を起こす。
そのオーラの強さに、ビジーとルークは興奮した。
「……さっきとはまるで違う強さだな。一体どんな手品を使ったんだ?」
ルークの言葉に竜史は、
「手品の種は知らない方が楽しめるぜ?」
「つまらん答えだ」
バズーカの照準を竜史に合わせたルークは、引き金を引いた。
ドゴンッ! ドゴンッ! ドゴンッ!
と白い弾が射出され、竜史に三発共直撃した。
上空に舞いあがったビジーは、
「やったか?」
「いや、まだだ! 月の扉が破壊されただけのはず!」
ルークは竜史の感じが消えていないと感じた。
ブワッ! とバズーカの土煙が羽ばたく翼で晴れ、竜史はルークに直進する。
「おおおおっ!」
「させねぇよ! ガキがぁっ!」
シュウゥゥゥ! とビジーは急降下し、竜史の首筋を狙う。
刹那――。
「――幻!?」
ビジーの背中に飛び乗った竜史は、
「サンライト・ルナ・スラッシュ!」
太陽と月のオーラをありったけ注ぎこんだ幻無を、ビジーの背中に叩き込んだ。
「ぬぐおおおっ!?」
ズザアッ! とビジーは受け身も取れず地面に転がった。
そしてルークに竜史が迫る。
「そういえば、お前は高杉幻覚の幻武幻影流も使えたんだったな。剣を交える相手にいつの間にか幻影を見せる流儀……」
「幻武幻影流じゃない。ただの残像だ」
「いいだろう、来い!」
ルークは腰から白いナイフを取り出し、構えた。
すると、竜史はルークの想像を超える動きをした。
「――!」
パパッ! 前方に張ったルナティックの結晶、月の扉を足場にし、ぐるっとルークの上を跳躍して背後を取った。
「何とっ!?」
「サンライトブレイク!」
サンライトを圧縮したオーラをルークに叩き込んだ。
ルークの背中がシュプアアアッ! とオレンジ色に輝き、勢いよく吹っ飛んだ。
「んおおっ!」
ズゴンッ! とルークの巨体は壁に激突し、大砲が折れた。
背中に放たれたサンライトがルークの背中を焼いた。
そして竜史は、自信に満ちた表情で立ち上がるルークを見つめた。
ビジーも立ち上がり、ルークも立ち上がる。
二人共、感情を失くしたかのような眼をして、周囲に凍りつくような殺気を発した。
そのあまりにも冷たい殺気に、竜史は違和感を覚えた。
(こいつら、夜天城のエネルギーを吸収してるのか? 厄介なやつらだ。だが、面白い……)
「ケッ、やるじゃねーかガキっ! 楽しくなってきたぜぇ!」
バサバサッと翼を羽ばたかせながら、ビジーは空に上昇していく。
「……君を甘く見ていたようだ。太陽と月が融合した力がそこまで成長したなら、我々も時間を引き延ばす必要がある。夜天光様は自分に集中し、この戦いを御覧になっていないからな。今は撤退する。が、我々にもプライドはある」
ガシャとルークは折れたバズーカを投げた。
そのバズーカを見た竜史は、
「逃げるなよ。本当は夜天光の事じゃなく、戦いの中で成長するオレが怖いんだろう? お前等は夜天城のエネルギーが頼りだからな。逃げても無駄だ」
「ライトニングウイング!」
バババババッ! と竜史の言葉を遮るようにビジーは鋼鉄の白い羽を羽ばたかせ、マシンガンのように羽を飛ばしてきた。その羽は折れたバズーカに直撃する。
ドゴオンッ! と爆発し、その破片が竜史の視界を塞いだ。
パラパラパラッ……。
破壊された地面が白い煙を上げた。
「では、また会おう」
「ケッ! 次は殺すぜぇ!」
二人はその隙をつき、撤退した。
その光景に竜史は笑い、
「ここまでするという事はオレの力に盤上騎士団は勝てない事を証明している。せいぜい時間を稼げ。オレはどこまででもお前達を追い詰めて倒す……次はナイトの駒か?」
ブンッ! とスピアを構えたナイツは、
「一騎打ちだ。騎士である私は貴様には負けん」
そう言い、躍動した。




