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現代怪談短編集 霊話百物語  作者: ナハ子
【7章 スマートフォンの怪異】
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第69話 スマホの予測変換

最近、スマホの文字入力がおかしい。


メールやSNSで文章を打とうとすると、頼んでもいないのに奇妙な予測変換が最優先で候補に表示されるのだ。


「け」と打てば『血痕』、『消した』

「は」と打てば『バラバラに』


最初はキーボードアプリの不具合か、学習機能のバグだろうと気にも留めていなかった。

だが、その変換候補は日を追うごとに不穏な単語が増えていき、具体的になっていく。


「し」――『死体は埋めた』

「か」――『解体して』

「つ」――『次の標的』


そして、「き」と打つと、『凶器はタンスに』


指がピタリと止まる。呼吸すら忘れる緊張の中、スマホを持つ手が微かに震えた。

なんだ、この変換は。

これではまるで、かつて私が殺人事件とその遺体の処理方法をスマホに書き留めたかのようではないか。


その瞬間、頭の中に激しいフラッシュバックが駆け巡った。

暗い路地裏、血の匂い、そして、手に握られている大きな肉切り包丁――。


私は頭を振って否定する。

――違う。こんな記憶は知らない。私の記憶ではない。


しかし、そこで、ふと部屋のタンスが視界に入る。


『凶器はタンスに』


息を呑み、タンスを上から1段ずつ、ゆっくりと開けてみる。

そして、最下段を引き出したとき。衣類の奥から現れたのは、新聞紙とビニール袋で厳重に包まれた「何か」だった。


震える手で包みを剥がすと、そこには赤黒く変色した錆だらけの大きな肉切り包丁が収まっていた。


そのとき、突如として玄関のチャイムが激しく鳴り響いた。

カーテンの隙間から下を見下ろすと、アパートの前に何台ものパトカーが赤色灯を回転させていた。

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