第68話 スマホの容量不足
『ストレージの空き容量がありません』
スマホの画面に、見慣れたシステム警告が表示された。
写真も動画も大して保存していないし、アプリだって不要なものはこまめに消しているはずなのに、なぜかここ最近、容量が限界まで圧迫され続けているのだ。
不審に思った私は設定画面を開き、何がこれほどストレージを食い潰しているのかを詳しく調べてみた。
原因は、『その他』の一覧に格納されていた、数ギガバイトにも及ぶ大量の「一時保存ファイル(キャッシュデータ)」だった。
削除しようとファイル一覧を開いた瞬間、私は思わず息を呑んだ。
『斧による頭部割裂.tmp』
『のこぎりによる四肢切断.tmp』
『結束バンドによる絞殺.tmp』
不気味で物々しいファイル名が、画面を埋め尽くすようにズラリと並んでいた。
悪質なウイルスか、誰かの悪趣味な悪戯だろうか。
だが、どうしても好奇心に勝てなかった私は、その中から適当に選んだ『万力による圧殺.tmp』というファイルを、震える指でタップして開いてしまった。
スマホの画面がフリーズし、発光する液晶の真ん中に、真っ黒なシステムテキストがぽつんと表示される。
『実行中:万力による圧殺』
「は?」
私は喉の奥から、乾いた空気が漏れるような掠れた声を出した。
直後、どこからともなく、キィ、キィという、錆びた金属のこすれるような音が聞こえてきた。
そう、まさに、万力を回すような――。
パニックになった私は、すぐに先ほど起動したファイルを消そうと、慌ててスマホに目を遣ると、画面には新たなファイルが書き出されていた。
『身体の内部撒き散らし.mov』
「ヒッ……!」
悲鳴を上げた瞬間、背後から現れた巨漢の影が、凄まじい力で私の両腕をつかんだ。
鼻を突く錆の匂いと、キイ、キイと脳天まで響くような金属音の中――私は、抵抗もできず、万力に挟まれていった。




