第67話 スマホの『探す』機能
深夜、暗い部屋のベッドの上でぼんやりとくつろいでいると、スマホが突如、「ピピピピピ! ピピピピピ!」と、耳を突き刺すような大音量のアラームを鳴らし始めた。
私は慌ててベッドから跳ね起きると、枕元からスマホを掴み取った。
この異様なアラーム音には聞き覚えがあった。端末を紛失した際、別の端末から強制的に音を鳴らして位置を特定する、スマホの『端末を探す』機能の警告音だ。
誤作動だろうか。
画面をタップして音を止めようとするが、フリーズしているのか、タッチパネルはどれだけ触っても一切反応しない。画面には『この端末は捜索中です』と表示されたままだった。
その時だった。静まり返った廊下の向こうから、ドタドタと荒々しい複数の「人間の足音」が聞こえてきた。
何事だろう、と思った次の瞬間――ガチャリ、と鍵が解錠され、数人の警察官が部屋へと一斉になだれ込んできた。
「おい、スマホの音がここから聞こえるぞ!」
私は驚いて、「何、勝手に入ってきてるんですか!」と大声で叫んだ。だが、彼らは私の存在など最初から視界に入っていないかのように、冷たく通り過ぎていった。
「――スマホ、発見! それから、被害者の遺体も……発見しました」
警察官が何かを取り囲んでいる。皆、悲痛に顔を歪めたり、口元を抑えたりしている。
床に転がっていたのは、骨をあり得ない方向へ砕かれ、鋭利な刃物でバラバラに切断された死体だった。
死体のすぐ傍らに落ちていたバッグの中で、スマホが鳴り響いている。警察官のひとりがそれを手袋越しに抜き取ると、画面をタップして、ずっと鳴っていたあのうるさいアラームを停止させた。
別の警察官が手元の無線機を操作し、感情の抜け落ちた声で本部へと臨場通知を送る。
『こちら捜査一課。被害者の遺体および遺品、○○の廃ホテルの客室にて、確保完了――』
気が付くと、私の手の中にあったはずのスマホは、いつの間にか消えてなくなっていた。
私は、ゆっくりと自分の手を見つめた。輪郭を失い、消えそうになっている手を。




