第63話 スマホのカメラロール
深夜2時、ベッドに入ったもののどうしても寝付けなかった私は、写真の整理でもしようと思い立ち、電灯を落として暗くなった部屋の中、スマホのカメラロールを開いた。
しかし、そこに全く見覚えのない写真が紛れ込んでいることに気が付いた。
最近撮影したスクリーンショットや料理の写真などが並ぶ中、見覚えのない「真っ暗な画像」が、何枚かに1枚という妙な間隔で数枚、不自然に混ざっているのだ。
何か写真を撮るときに、誤って指でレンズを塞いだまま、気が付かずに撮影したものだろうか。
しかし、そんな写真を取ればすぐに気が付くはずで、消さずにそのまま放っておくこともないだろう。
不審に思って撮影日時を確認すると、どうやらそれらはすべて、私がベッドに入って完全に熟睡しているはずの時間帯だった。
「寝ぼけて間違って撮ったのかな……?」
ぽつりと零しながら、何気なくその真っ黒な写真のうちの1枚をタップして開いたとき、私はふとした違和感に気が付いた。
これは、単にレンズを塞いで撮られた真っ黒な写真ではない。
光のない暗闇の中で、ストロボを焚かずに撮影されたからそう見えるだけで、その深い闇の中に、確実に「何かの輪郭」が写り込んでいる。
気味が悪くなった私は写真編集のツールを開き、画像の明るさを最大限まで引き上げてみた。
そこで、私は喉の奥が引き攣って息を呑んだ。
暗闇の奥からくっきりと現れたもの――それは、ベッドの上で無防備に目を閉じて眠っている、私自身の姿だった。
「うそ……」
思わず声が漏れる。
パニックになりながら、私は他の真っ黒な写真も次々と編集し、明るさを最大に調整していった。だが、結果はすべて同じ、真上から、あるいは真横からの至近距離から、眠っている私を写したものばかりだった。
これは単に間違えて撮ったとか、寝ぼけて指が触れたとかいう次元の話ではない。
確実にある明確な意志を持った「誰か」が、毎晩、私が寝静まった後にスマホを使い、そのシャッターを切っていたのだ。
言葉にできないほど悍ましい恐怖が身を包む。すぐに部屋の電気をつけようとスイッチに手を伸ばした――まさに、その瞬間だった。
カシャリ。
静まり返った暗闇の部屋の中に、手の中に握り締めていたスマホから、無機質なシャッター音が鳴り響いた。
心臓が破裂しそうなほどの恐怖のなか、私は震える指先で、今撮られたばかりの写真を恐る恐る開いた。そして、編集ツールを開くと、ゆっくりと明るさを最大まで引き上げた。
そこには、恐怖に引き攣る私の顔と、その肩口から液晶画面を一緒に覗き込むようにして、青白い「男の顔」が、満面の笑みを浮かべてくっきりと写り込んでいた。




