↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
現代怪談短編集 霊話百物語  作者: ナハ子
【5章 新訳・古典都市伝説】
51/79

第47話 新訳・杉沢村伝説

深夜、私と友人は車に乗って山奥の道を走っていた。最新のAIが搭載された車には完全自動運転機能があり、このような不気味な深夜の山道でも、本来なら悠々と進めるはずだった。

だが、突如として、何もない暗闇の中で「まもなく、目的地周辺です」と無機質なアナウンスが響いた。


周囲は街灯一つない、深い霧。

「なんだこれ」


友人が不可解そうな声で、ダッシュボードのモニターを指さした。

車載のナビ画面は、道路のない真っ黒な山林の奥を示し、現在地を『システムエラー:未登録区域』とだけ表示している。友人が目的地を自宅に設定し直そうと焦って操作するが、画面は完全にフリーズしており、一切の入力を受け付けない。


「手動運転に切り替えて、来た道を戻るしかないか?」

私がそう言って、友人もそれに頷いた、その時だった。


カチャリ、とロックが勝手に閉まる音がして、車が再び滑らかに加速し始めた。


「これ、自動運転のAIが勝手にどこかへ向かってないか?」


ナビの画面を見ると、私たちの乗った車は、どんどん真っ暗な未登録区域の奥深くへと突き進んでいっている。

一体どこへ連れていかれるのだろう。私たちは僅かな恐怖と好奇心が入り交じり、何とも言えない居心地の悪さ、窓外を流れる真っ暗な景色を眺めていた。


だが、やがて、自動運転の障害物検知センサーの画面が起動した瞬間、私たちの心臓は凍りついた。

レーダーが捉えた真っ暗な夜道の脇に「大量の人間の影」が綺麗に並び、通り過ぎる私たちの車をじいっと見つめている様子が、青白いグラフィックで映し出されたのだ。


こんな深夜の山道に、そんな数の人間がいるはずがないのに。


車のヘッドライトが、道の脇に立つ古びた看板を一瞬だけ照らし出した。そこには、『ここから先へ立ち入る者、命の保証はない』という物騒な文言が殴り書きされていた。

いよいよ、好奇心より圧倒的な恐怖が勝った。


友人に目配せするが、彼は青ざめて首を横に振る。さっきから何度も強くブレーキを踏み込んでいるが、まったく減速しない。ドアノブを壊れそうなほど引いても、ロックはびくともしなかった。


そして――車は、ついに深い霧の奥で、静かに停車した。

ヘッドライトの強い光に照らされたのは、朽ち果てた鳥居と、不自然に歪んだドクロの形をした巨岩だった。


間違いない。これは、「かつて、突然発狂した一人の村人が、村民全員を惨殺して最後に自分も命を絶った。その後、国によって存在を抹消された」と語られる、古の都市伝説の村――杉沢村だ。


「逃げるぞ! 窓を割れ!」

私はそう叫び、狂ったようにドアを叩いた。

しかし、隣の友人は何も返事をしない。

彼はいつの間にか、生気のない完全に無表情な顔になり、ぼうっと発光するナビの画面を見つめ続けていた。


そのモニターには、真っ赤な文字でAIシステムの冷徹なログが表示されていた。


【WELCOME TO REGION: Sugi-Vil】

未登録区域へのチェックインが完了しました。

乗員2名の生体データを完全に処理しました。


コンコン。


車の窓ガラスを、外側から硬い金属で叩く音が響いた。

暗闇の霧の向こうから、錆びついた鍬や鎌を握り締めた「村人たち」が、あり得ないほどに口を吊り上げた満面の笑みを浮かべて、私たちを歓迎していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。