第5話 フリマアプリの格安のぬいぐるみ
最近のささやかな楽しみといえば、フリマアプリを見ることだった。
ある夜、その日もベッドで横になりながら適当に商品をスクロールしていると、ひとつ目を引くものがあり、すぐにスクロールを止めた。
それはずっと探していた限定品のぬいぐるみだった。
しかも、相場の10分の1という破格の値段で。
傷も汚れもない美品。説明文には『価値がわからないので値段は適当です』とだけ書かれていた。
私はすこし罪悪感を覚えつつも、思わぬ幸運に感謝し、すぐに購入ボタンを押した。
数日後、届いた段ボールを開けると、写真の通りの可愛いぬいぐるみが入っていた。
ただ、少しカビ臭いような、すえた匂いが鼻をついた。
価値がわからないと書いてあったので、保管方法が悪かったのだろうと思い、気にせず消臭剤を振りかけて、ベッドの棚に他のぬいぐるみと一緒に並べた。
しかし、しばらくすると、やはりぬいぐるみからはすえた匂いが漂ってくる。
耐えきれなくなった私は、ぬいぐるみを手に取って調べてみた。あの時は気が付かなかったが、他のぬいぐるみよりも重く、中もごつごつと硬い質感であることに気が付いた。
さらにじっくり調べてみると、一カ所だけ、他とは違い、素人が縫ったような粗い縫い目の箇所があった。
嫌な予感が身を巡る。
意を決して、その縫い目にハサミを入れて開いた。
白い綿が溢れる。それを掻き出すと、さらに奥のほうから綿に紛れて、黄ばんだ固い小さな破片のようなものがぱらぱらと落ちてきた。
一瞬、何かの虫かとも思ったが――よく見るとそれ以上に気持ちの悪い、「短く切られた人間の爪」だった。
悲鳴を上げそうになる。さらに中から、おびただしい数の爪。吐き気がこみ上げてくる。
爪に紛れ、黒いプラスチック製の機械が転がり出た。
漫画やドラマで見た記憶がある。
盗聴器だ。
その瞬間、スマホに通知が届いた。フリマアプリで新着メッセージが届いたようだ。
『あーあ、バレちゃった』
直後、来客を知らせるインターホンがけたたましく鳴り響いた。




