第40話 最後の日記
半年前、私の最愛の妹が、事故で亡くなった。
それ以来、私の周囲では不気味な心霊現象が多発している。
誰もいない部屋から足音が聞こえたり、夜中に突然テレビが付いたりするのだ。
母は、「死んだあの子の祟りだ」などと言って怯えているが、妹と私は生前、非常に仲が良かった。そんな優しい妹が私を呪ったりするはずがない。私は、怪奇現象の原因は別にあると思っていた。
ある日、私は遺品整理のために妹の部屋に入った。
亡くなって半年が経つが、部屋は未だに生前と変わらず綺麗に残されている。
ふと、机の上に置かれた一冊の日記帳が目に入った。
何気なく手に取ってめくってみると、短い日記が几帳面な文字で毎日書き残されていた。
『お姉ちゃんと水族館に遊びに行った。たくさんの魚がいた。お姉ちゃんがお寿司を食べたいと言った。楽しかった』
『お姉ちゃんがお菓子を作ってくれた。お姉ちゃんらしい、優しい味がした。美味しかった』
そんな、私との愛おしい思い出が毎日のように綴られていた。
妹との楽しかった日々が鮮やかによみがえり、胸の奥に温かい気持ちが湧いてきた。
『お姉ちゃんと旅行に行った。二人で温泉に入った。温泉は気持ちいいし、旅館の料理は最高。また行きたい』
これは、妹が亡くなる少し前の思い出だ。
この旅行の直後、妹はあの事故で……。
悲しみを堪えながらページをめくっていくうちに、ある日を境に、日記の様子が急激におかしくなっていった。
『もう限界、お姉ちゃんが毎日、私を無視する。声をかけても冷たい目で通り過ぎるだけ。私の存在なんてなかったみたいに……』
『今日もお姉ちゃんは私を見ようともしなかった。私、何か怒らせるようなことをしちゃったのかな。悲しくて涙が止まらない』
『お姉ちゃんに嫌われたまま生きていくなんて耐えられない。もう消えてしまいたい』
読みながら、私はこみ上げてくる涙をこらえることができなかった。
私にはそんなつもりはまったくなかった。けれど、知らぬ間に妹の心を深く傷つけてしまっていたようだ。
そして、一番新しく書かれた、最後のページを開いた。
『いい方法を教えてもらった。お姉ちゃんと二人だけで、ずっと一緒に暮らせる方法があるみたい。さっそく、今日の夜に実行する予定だ』
二人暮らしをする計画でも立てていたのだろうか。
だが、それは実行されることなく、妹は事故であっけなくこの世を去ってしまった。
私は日記帳を強く抱きしめ、妹の無念を思って、一人で声を上げて泣き続けた。




