↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
現代怪談短編集 霊話百物語  作者: ナハ子
【4章 意味が分かると怖い話】
40/81

第37話 エレベーターの乗客

私は、ある総合病院で夜勤をしている新人看護師だ。

その日の午前0時、私は入院患者のカルテを抱え、静まり返ったエレベーターに乗り込んだ。


途中、ある階でガタコンと音がしてドアが開くと、そこに見るからに生気のない、顔色の悪い男性患者が立っていた。


男性はふらふらとした足取りで乗り込んできたが、私と目を合わせようとはせず、虚ろな目のまま壁にもたれかかった。その身体からは、奇妙に生臭いような、鉄のような独特の臭いが漂い、ツンと鼻をついた。


彼は行き先ボタンも押さず、ただじいっと佇んでいる。

「何階ですか?」

私が尋ねても、彼は苦しそうに喉を鳴らすばかりで、まったく反応がなかった。


仕方なくそのまま乗り続け、エレベーターが地下に到着すると、その男性も生気のない足取りのまま、静かに開いたドアから降りていった。そして、薄暗い廊下の奥にある「霊安室」の方向へと、ゆっくりと歩いていったのだ。


その様子を背後から見送りながら、私の頭に一つの考えがよぎった。

もしかすると、あの人は幽霊だったのではないだろうか。

あの尋常ではない顔の白さ、漂ってきた生臭い臭い。そして、何故か「霊安室」へ向かったこと。きっと間違いない。


初めて遭遇した本物の心霊現象に、ゾクリと鳥肌が立つ。

やはり、夜中の病院ではこういう不思議なことが起こるものなのだろう。


翌朝、先輩看護師に事情を聞く機会があった。

なんと、あの男性はこの病院の入院患者で、今日の明け方ごろ、亡くなっているのが発見されたらしい。

容態がかなり快復し、そろそろ退院できる、という矢先の悲しい出来事だったようだ。


あの人は幽霊になって、私に何かを伝えたかったのだろうか。

そろそろ退院できるはずだったから、まだ現世に強い未練があったのかもしれない。

そう思うと、胸の奥が少しだけ切なくなった。


その後、病院にたくさんの警察官がやってきて、夜勤帯のスタッフ全員が事情聴取をされることになった。

流石に「深夜に幽霊を見ました」などと言ったら頭がおかしいと思われるので、私はそのことだけは伏せて、黙っておくことにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。