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現代怪談短編集 霊話百物語  作者: ナハ子
【4章 意味が分かると怖い話】
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第35話 掘り出し物の事故物件

大学進学を機に、私は格安の「事故物件」に住み始めた。

不動産屋からは「昨年、この部屋で住人が首吊り自殺をした」と聞いていたが、室内は綺麗にリフォームされているし、私自身は霊感の類も一切ないので、特に気にしていなかった。


それに何よりも、このアパートの住人たちが皆、本当に優しいのだ。

最初は隣人トラブルなどがないか警戒していたが、そのような心配は皆無だった。


どの住人も愛想よく接してくれて、廊下で顔を合わせると楽しそうに世間話もするようになっていた。

皆、このアパートにはかなり長く住んでいるらしい。

私が生活で困っていると、我が事のようにみんなが助けてくれて、本当によくお世話になっている。


同じアパートに住む大家さんも、この街には10年以上いるらしく、このあたりの隠れた名店などをたくさん紹介してもらえて、非常にありがたかった。


ある日、大学の食堂で友人たちと会話をしているときだった。

「お前、あんなことがあった部屋によく住めるな。マジでヤバイだろ」

私が事故物件に住んでいることをどこかで聞きつけたか、友人が呆れた様子で言った。

「ああ、まぁ、最初は気味が悪かったけど、今のところは幽霊も出ないし何ともないよ」


そんな私に、なおも友人たちは怪訝そうな視線を向けてくる。

「いや、それもそうだけどさ。隣人トラブルで狂った奴に、住人全員が惨殺されたアパートなんて、もはや事故物件ってレベルじゃないだろ」

それに同調するように頷いた別の友人が言った。

「しかもそれ、まだ去年の話なんでしょ? 犯人は全員を殺した後、自室で首を吊って自殺したって……」


それは、完全に初耳だった。

なんと、私はそんな恐ろしい大事件の現場に住んでいたのか。

友人の話が本当なら、私の住んでいる部屋こそが、その殺人鬼の部屋だったことになる。


さすがにそれを聞くと、少し引っ越したくなった。


だが、いま私を囲んでくれている、あの温かい住人たちと離れてしまうのは、いささかもったいない気もしてくる。

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