↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
現代怪談短編集 霊話百物語  作者: ナハ子
【4章 意味が分かると怖い話】
35/80

第32話 ストーカー撃退アプリ

ここ数週間、私は執拗なストーカー行為に悩まされていた。

郵便ポストが勝手に開けられていたり、無言電話がかかってきたり。

警察に相談しても、「実害がないと動けない」と相手にしてもらえなかった。


ノイローゼ気味になっていた私は、友人に勧められてストーカーの位置を特定するというアプリをスマホにインストールした。

友人曰く、相手の素性がわからなくても、自分に対して強い執着を持つ端末――つまり、私のSNSアカウントへのアクセス回数が多いものや、電話をかける回数が極端に多いものを自動で感知し、その位置をマップ上に示してくれるというものらしい。


少なくとも、これがあれば、ストーカーが近づいてくる前に逃げることができる。

気休め程度かもしれないが、それでも、ないよりは物理的にずっと安心できた。


ある日のこと。最寄り駅から自宅への暗い道を歩いていると、スマホが細かく震えた。

あのアプリからの通知だった。どうやら、ストーカーが半径50メートル以内に接近してきたらしい。


私は怖くなって、足早に歩を進めた。しかし、マップ上に示された赤いピンは、執拗にこちらへと近づいてくる。


パニックになった私は、途中にあった公園の公衆トイレの個室へと駆け込み、そこに身を潜めた。

だが、なぜか赤いピンは、私が逃げ込んだ場所へ向かって迷わず近づいてきていた。


恐ろしくなった私は、藁にもすがる思いで友人に電話をかけた。

「助けて! ストーカーがすぐ近くまで来てるの!」


恐怖のあまり、私は繋がるなり叫ぶようにまくし立てた。

「待って。今すぐ行くから、そこから出ないで。大丈夫」

友人はそんな私を、いつも通り優しい声で諭してくれた。


それを聞いて、少しだけ気持ちが落ち着いた。

私は「うん」とだけ答えて電話を切り、息を潜めて友人を待った。


だが、手元の画面を見ると、犯人を示すピンはもう目の前まで来ている。

直後、公衆トイレの床をピチャピチャと踏み鳴らす、不快な足音が響いた。

マップ上のピンが、私の現在地と完全に重なる。


ドンドン、ドンドン!


何度も、激しく個室のドアが叩かれた。

不審者がすぐ外にいる。――怖い。もうだめだ。殺される。


私は必死に耳を塞いで恐怖に耐えた。

最悪な想像が頭をぐるぐると巡っていた、その時だった。

「私だよ。犯人は逃げていったから、出てきていいよ」


個室の外から、聞き慣れた友人の声がした。

慌ててアプリを見ると、確かに犯人を示すピンは、逃げるように私から遠ざかっていっていた。


恐る恐る個室から出ると、友人が優しい笑顔でそこに立っていた。

私は安堵のあまり涙を流し、抱きつくように彼女の胸に飛び込んだ。


「安心して。これからはずっと、私が傍にいるから」


友人は優しく私を抱きしめて、そう言ってくれた。

その温かな体温を感じながら、私には、目の前の彼女が暗闇から救い出してくれた本物のヒーローのように感じられた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。