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現代怪談短編集 霊話百物語  作者: ナハ子
【4章 意味が分かると怖い話】
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第31話 親切な隣人

一人暮らしを始めて数ヶ月。古いアパートだが、周りに住む人はみんな優しく、住み心地の良さを感じている。

特に、右隣の部屋に住む中年男性は、本当に親切な人だった。


「これ、実家から送られてきたから」と、人懐っこい笑顔で、野菜や手料理などをお裾分けしてくれる。


その日、私はいつも通りの残業でくたくたになって家に帰ってきた。

疲れ果てて、自分で料理をする気力すら残っていない。

そう思いながら部屋に入ると、居間のテーブルの上に筑前煮が入った器が置かれているのが目に入った。


そういえば、昨日隣人に「作りすぎたから」といってお裾分けしてもらい、冷蔵庫に入れておいたのだ。

ちょうどよかった。今日はこれを温めて食べよう。

私は心の中で隣人に深く感謝し、次に顔を合わせたときにしっかりお礼を言おう、と思った。


そして、そのまま私はテレビをつけた。

ローカルニュースが流れており、どうやらこの近所で事件があったようだった。


『本日午前、○○町のアパートにて、住人の女性宅に繰り返し侵入していたとして男が逮捕されました。住居侵入罪の疑いで逮捕されたのは住所不定・無職の男で、男は数ヶ月前から女性の留守中にベランダの窓から侵入して生活しており、本日、女性が仕掛けた隠しカメラの映像により――』


画面に映し出されたのは、見覚えのある我がアパート。

そして、警察に両脇を抱えられて連行されていく、あの「親切な隣人」の姿だった。


私は恐怖で全身が震えた。

隣の住人だと思っていたのは、ただの不法侵入者で、実際は女性が住んでいる部屋だったのだ。

私は今まで、不審者を親切な隣人だと思い、笑顔で接してきた。


彼から貰った料理も、まったく疑いもせず口にしてきたが、実際は何が入っていたのか分かったものではない。


途端に激しい吐き気が込み上げてきた。

今まさに食べようとしていた、まだほんのり温かい筑前煮も、申し訳ないがすべてゴミ箱へ投げ捨てた。


そこで、私はもっと恐ろしい事実に気が付いた。


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