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現代怪談短編集 霊話百物語  作者: ナハ子
【3章 職場・学校の怪異】
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第28話 誰もいないはずの放送室

放課後、夕方の廊下を歩いていると、突然頭上のスピーカーから「ザザザッ」と激しいノイズが響いた。

下校時刻のチャイムにしては早すぎる。


「ウウ、ウウウ……」

スピーカーから聞こえてきたのは、地を這うような女の呻き声だった。


誰かの悪戯だろうか。

大方、どこかの男子が放送室に忍び込み、皆を怖がらせようとでもしているのだろう。


馬鹿らしい。早く先生に見つかって怒られればいい。


そう思い、私は犯人を突き止めようと放送室へと向かった。

スピーカーからの呻き声は、今もはっきりと聞こえてくる。


「生徒の皆さんに、お知らせします」

突如、耳障りな呻き声は途切れ、そんな「普通」の放送が流れた。

声は聞き馴染みのある放送委員の女子生徒のものだが、どこか感情が抜け落ちたように平坦で、生気を感じられない声だった。


「ただいま、校内に『あれ』が侵入しました」


あれ、とは何だろうか。

普通ではない不気味な放送に、私は少し恐怖を覚えた。


「『あれ』は今、2階の廊下を通過しています。まもなく3階に到達します」

心臓が跳ね上がる。

現在、私のいる場所がまさに2階の廊下なのだ。そして、目的地の放送室は3階にある。


私が3階へと上がり、放送室のドアが見えてきた、その時。


「『あれ』は今、放送室の前にいます」


厭な感覚に身を包まれながらも、私は放送室の小さなガラス窓から中を覗き込んだ。

夕闇に包まれた薄暗い室内には、誰もいなかった。


もう逃げたのだろうか。そう思った時、再び放送が流れた。


「――見つけました」



放送室の扉がガラリ、とゆっくり開いた。


呼吸が荒くなる。

放送室の暗闇の中、何かが蠢く気配がする。


目を凝らすと、全身の骨がバラバラに折れ曲がり、巨大な蜘蛛のように床にへばりつく、人間の形をした「何か」が――私を見つめて、耳まで裂けた口でニヤリと笑った。

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