第28話 誰もいないはずの放送室
放課後、夕方の廊下を歩いていると、突然頭上のスピーカーから「ザザザッ」と激しいノイズが響いた。
下校時刻のチャイムにしては早すぎる。
「ウウ、ウウウ……」
スピーカーから聞こえてきたのは、地を這うような女の呻き声だった。
誰かの悪戯だろうか。
大方、どこかの男子が放送室に忍び込み、皆を怖がらせようとでもしているのだろう。
馬鹿らしい。早く先生に見つかって怒られればいい。
そう思い、私は犯人を突き止めようと放送室へと向かった。
スピーカーからの呻き声は、今もはっきりと聞こえてくる。
「生徒の皆さんに、お知らせします」
突如、耳障りな呻き声は途切れ、そんな「普通」の放送が流れた。
声は聞き馴染みのある放送委員の女子生徒のものだが、どこか感情が抜け落ちたように平坦で、生気を感じられない声だった。
「ただいま、校内に『あれ』が侵入しました」
あれ、とは何だろうか。
普通ではない不気味な放送に、私は少し恐怖を覚えた。
「『あれ』は今、2階の廊下を通過しています。まもなく3階に到達します」
心臓が跳ね上がる。
現在、私のいる場所がまさに2階の廊下なのだ。そして、目的地の放送室は3階にある。
私が3階へと上がり、放送室のドアが見えてきた、その時。
「『あれ』は今、放送室の前にいます」
厭な感覚に身を包まれながらも、私は放送室の小さなガラス窓から中を覗き込んだ。
夕闇に包まれた薄暗い室内には、誰もいなかった。
もう逃げたのだろうか。そう思った時、再び放送が流れた。
「――見つけました」
放送室の扉がガラリ、とゆっくり開いた。
呼吸が荒くなる。
放送室の暗闇の中、何かが蠢く気配がする。
目を凝らすと、全身の骨がバラバラに折れ曲がり、巨大な蜘蛛のように床にへばりつく、人間の形をした「何か」が――私を見つめて、耳まで裂けた口でニヤリと笑った。




