第3話 出前アプリの配達員
日付が変わるまで残業をしていた私は、疲れ果てて帰宅した。
お腹が鳴っているが夕食を作る気力もなく、スマホの出前アプリでカレーを注文することにした。
人と接することさえ億劫だったので、オプションに「玄関ドアの前に置く」を選択し、私はベッドにスマホを放り投げると同時に自分自身も倒れ込んだ。
しばらくすると、スマホから通知音が聞こえてきた。配達が完了したようだ。
のそのそと起き上がり、玄関へ向かおうとしたとき――
ピンポーン。
静寂の中に、インターホンの音が響く。
画面を確認すると、そこには配達員の男がじいっと玄関ドアを見つめ突っ立っていた。
確かに置き配を指定したはずなのだが。不審に思い、インターホン越しに声をかける。
「そこに置いておいてください」
男は少しも動かず、くぐもった声でぼそぼそと言った。
「こちら手渡しのみになります」
「いや、置き配を頼んだので」
「手渡し限定です。開けてください」
男の口調が強くなった。
よく見ると、男の目が異常に血走っている気がする。
気味が悪くなってきた私は、音を立てないように気を付けながらドアスコープを覗き込んだ。
じいっと見つめたまま動かない男。左手にカレーの袋を持っているが、カメラの死角になっていた右手には、包丁が握られていた。
「開けてください。開けてください。開けてください」
男が狂ったようにインターホンを連打しはじめる。
私は恐怖に震える指で、なんとか警察に電話をした。
ガチャガチャと回されるドアノブの音と、何かでドアを引っかくような不快な金属音が鳴り響く中、私は耳を押さえながら必死で耐えていた。
やがて、音が収まったかと思うと、スマホから通知の音が聞こえてきた。
『配達員への評価をお願いします』




