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現代怪談短編集 霊話百物語  作者: ナハ子
【3章 職場・学校の怪異】
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第25話 深夜のシュレッダー

深夜、静まり返ったオフィスで、私は1人残業をしていた。

急ぎの書類を片付け、ようやく一息ついた、その時だった。


私以外に誰もいないはずのオフィスの片隅から、突如「ウィーン……」という重い駆動音が響いた。

大型シュレッダーが、勝手に動き出したのだ。


故障だろうか。

そう思い、私はシュレッダーに近づいた。

何分機械が古くなっているので、こういった誤作動もあるだろう。


だが、シュレッダーに近づいたとき、異様なことに気が付いた。

ダストボックスに入りきらなかった紙くずが、大量に溢れ出てきているのだ。


不審に思い、近づいてそれを手に取ってみる。

その瞬間、私は悲鳴を上げてそれを投げ捨てた。


それは紙くずなどではなかった。

べっとりと生暖かく湿っており、鉄のようなすえた臭いが鼻を衝く。


指先を見ると、赤黒い液体が付着していた。

――これは、何かの肉片だ。


気持ち悪い。一体誰の悪戯だろう。

いや、悪戯で済まされることではない。あまりにも質が悪すぎる。立派な犯罪だ。


怒りを覚えた私はシュレッダーのスイッチを切ろうとするが、そこで目に入った光景に息を吞んだ。

細断口から次々と吐き出されていくのは、赤黒い肉片と、それに混ざった人間の皮膚のようなもの、そして、黒々とした長い髪だった。


まさか、これは――人間の肉片なのだろうか。

それに気が付いたとき、私はその場で激しく嘔吐した。


全身の毛穴が開き、心臓が早鐘を打つ。

一刻も早くこの場から逃げ出さなければ。


恐怖で震える足を必死に動かし、私は走り出そうとした。

だが、その瞬間、シュレッダーはことさら大きな駆動音を立て、メキメキ、バキバキと硬い骨を砕くような音を鳴らしながら、激しく震えだした。



不意に、何かに足をがっしりと掴まれた。

シュレッダーの挿入口から伸びてきているそれは、皮膚がなく、筋肉の組織や繊維、脂肪などをぐちゃぐちゃに固めて作ったような、赤黒い2本の「手」だった。

指の関節は、そのようなものが初めからなかったかのように、あり得ない方向へとねじ曲がっている。


腕は万力のような力で私の足を掴み、どうしても振りほどけない。


そのまま、私は細断口の暗闇へと引きずり込まれていった。

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