第25話 深夜のシュレッダー
深夜、静まり返ったオフィスで、私は1人残業をしていた。
急ぎの書類を片付け、ようやく一息ついた、その時だった。
私以外に誰もいないはずのオフィスの片隅から、突如「ウィーン……」という重い駆動音が響いた。
大型シュレッダーが、勝手に動き出したのだ。
故障だろうか。
そう思い、私はシュレッダーに近づいた。
何分機械が古くなっているので、こういった誤作動もあるだろう。
だが、シュレッダーに近づいたとき、異様なことに気が付いた。
ダストボックスに入りきらなかった紙くずが、大量に溢れ出てきているのだ。
不審に思い、近づいてそれを手に取ってみる。
その瞬間、私は悲鳴を上げてそれを投げ捨てた。
それは紙くずなどではなかった。
べっとりと生暖かく湿っており、鉄のようなすえた臭いが鼻を衝く。
指先を見ると、赤黒い液体が付着していた。
――これは、何かの肉片だ。
気持ち悪い。一体誰の悪戯だろう。
いや、悪戯で済まされることではない。あまりにも質が悪すぎる。立派な犯罪だ。
怒りを覚えた私はシュレッダーのスイッチを切ろうとするが、そこで目に入った光景に息を吞んだ。
細断口から次々と吐き出されていくのは、赤黒い肉片と、それに混ざった人間の皮膚のようなもの、そして、黒々とした長い髪だった。
まさか、これは――人間の肉片なのだろうか。
それに気が付いたとき、私はその場で激しく嘔吐した。
全身の毛穴が開き、心臓が早鐘を打つ。
一刻も早くこの場から逃げ出さなければ。
恐怖で震える足を必死に動かし、私は走り出そうとした。
だが、その瞬間、シュレッダーはことさら大きな駆動音を立て、メキメキ、バキバキと硬い骨を砕くような音を鳴らしながら、激しく震えだした。
不意に、何かに足をがっしりと掴まれた。
シュレッダーの挿入口から伸びてきているそれは、皮膚がなく、筋肉の組織や繊維、脂肪などをぐちゃぐちゃに固めて作ったような、赤黒い2本の「手」だった。
指の関節は、そのようなものが初めからなかったかのように、あり得ない方向へとねじ曲がっている。
腕は万力のような力で私の足を掴み、どうしても振りほどけない。
そのまま、私は細断口の暗闇へと引きずり込まれていった。




