第23話 オンライン会議の背景
自宅で会社の先輩とオンライン会議中。
会議といっても、実際は仲のいい先輩と雑談をしているようなものだが、思いのほか話が盛り上がり、時間は深夜に差し掛かっていた。
画面には先輩と私、それぞれカメラで映された顔と、背後に部屋の様子が映っていた。
話し合いの中、ふと、私は先輩の後ろのほうで、クローゼットのドアが動いたように感じた。
「先輩、もしかして、クローゼットにずっと誰か入ってました?」
「お前、まじでやめろよ。そういうのガチで眠れなくなるから」
先輩が笑って言った。
私が怖がらせるために冗談を言っているのだと思ったのだろう。
「いや、うーん。俺の見間違いですかね?」
だが、やはり納得がいかず、パソコンの画面を凝視する。そのとき、先輩が映る背景の隅で、何かが動いた。
「いや、やっぱり何かいますよ! もう少しカメラを上にあげられますか?」
先輩は怪訝そうにしながらも、天井が映るくらいまでカメラの角度を上げた。
「ひっ!」
その悲鳴は、先輩と私、どちらから出たのかわからない。同時だったのかもしれない。
とにかく、2人とも見てしまったのだ。
パソコンのカメラが捉えたもの。先輩の部屋の天井。
そこには、蜘蛛のように張り付き、首を180度回転させて先輩を見下ろしている老婆の姿が映っていた。
「なんだよ、これ。どうしたらいいんだよ!」
先輩が震える声で叫んだ。
次の瞬間、老婆が天井から落ちてくる。その手には、大きな包丁が握られていた。
「と、とにかく逃げてください! 今警察に通報しますから!」
先輩は一目散に部屋のドアへ向かった。姿がフレームアウトし、こちらからはもう見えない。
直後、老婆はその老体からは想像できないほどの素早い動きで、飛びかかるように先輩の後を追った。
スピーカーから、短い悲鳴が聞こえた。
そして、ぐちゃりと、刃物が肉を裂くような重い音も聞こえてきた。
画面の外で、今、何が行われているのか。
私は恐怖で混乱する頭で、必死に警察に通報した。
すぐさま警察が先輩の家に向かうも、すでに手遅れだった。
後日の事情聴取で、私は見たことをそのまま話した。
警察は最初、私の話を信じていないようだった。だが、自動で録画されていたオンライン会議の映像を見せると、誰もが言葉を失い、信じざるを得なくなった。
だが、その捜査もむなしく、あの老婆の正体は未だに不明のままだ。




