第22話 放課後の4階女子トイレ
夕方、部活が終わり、みんなは散り散りに帰路についていく。そんな中で、私は一人、忘れ物を思い出して校舎に戻っていた。
すっかり薄暗くなった廊下は厭に不気味で、普段は生徒でにぎわっているだけに、そのギャップが恐怖を煽った。
忘れ物を取り、教室から帰る途中、急にトイレに行きたくなった私は4階の女子トイレに入った。
個室を出て、洗面台で手を洗う。そして、視線を上げて大きな鏡に目を遣った、その時だった。
心臓が跳ね上がる。
鏡の中、私の後ろに、誰かが映り込んでいた。
見たことのない、どこか古びたセーラー服を着た女子生徒が、じいっと私を見つめ突っ立っている。
長く黒い髪がまるで幽霊のようで――いや、間違いなく、あれはこの世の存在ではない。
私は慌てて振り向いた。
やはり女子生徒はそこにいた。
だが、鏡越しに見るよりも幾分か怖い雰囲気はなくなっていた。
「夜の学校は危ないよ。案内するから、一緒に帰ろう」
女子生徒はそう言った。
もしかすると、悪い幽霊ではないのだろうか。
敵意や悪意といったものは感じない。どこか柔和な雰囲気さえ伝わってくる。
私は静かにその言葉に頷いた。
私はその子と手をつなぎ、玄関口へと向かった。
やはり、一緒に歩いている間も悪意は感じない。
彼女は明るく、様々なことを聞いてきた。
「部活してるの?」「好きな人はいる?」「親友は誰?」
私もそれに答えていった。
「うん。テニス部なんだ」「いないよ」「親友はA子っていう子」
そうして、話しながら玄関口へと着いた。短い間だったが、良い雰囲気で、楽しい時間だった。
「ねぇ、私、あなたのこと気に入っちゃった。友達になってくれる?」
「うん。またあのトイレに行ったら会える?」
「ううん。これからはずっと一緒だよ」
目の前の彼女が姿を消した。
だが、玄関口の大きな姿見には、私と彼女の姿がはっきりと映っている。
えっ、と思う間もなく、鏡の中の彼女がにっこりと笑った。
そのまま、私は鏡の中に取り込まれた。




